この参議院選挙で全国をまわりながら、国民のみなさんと自衛隊のつながりについて感じたことを綴りたいと想います。

●自衛隊の本来任務
 皆さんご承知のとおり、佐藤まさひさは、東日本大震災の被災地、原発事故の被害地、福島の出身です。
 被災地では、大震災から2年たった今でも「政党はどこでもいいから真面目に政治をやってほしい」という声が圧倒的に多いです。当時政権与党だった民主党の支持率は5.6%でした。それに比べて、新聞等の世論調査では自衛隊に対する支持率は90%を超えていました。これが多くの国民の意識なのです。今こそ、国民と自衛隊とのかけ橋になる役回りが本当に大事になってくると考えます。「義務と責任」について国民の意識をもっと喚起しないといけない。国民の防衛意識が本当の意味で向上しないと、自衛隊の現場がもっと大変になってしまうからです。

 自衛隊は年々仕事が増えて忙しくなっています。例えば、平成16年に京都府で鳥インフルエンザが発症した時には、福知山の第7普通科連隊が出動し対処しました。なぜ自衛隊が出動しなければならなかったのか。それは、防衛省・自衛隊は平時の監督官庁ではなく危機管理官庁だからです。
 平時であれば、家畜を所管するのは農林水産省。スーパーで売られている鶏肉であれば、厚生労働省。鳥インフルエンザで死んだ鶏は、平時の発想で考えれば農林水産省なのでしょうが、有事の対応ができないので手が出せない。警察も消防も「うちの所管ではない」と押し付けあって、お鉢がまわってきたのが自衛隊。
 鳥インフルエンザ、自衛隊。大雪、自衛隊。洪水、自衛隊。土砂崩れ、自衛隊。北海道では鹿の駆除も自衛隊ですから、仕事の幅がどんどん広がっています。その上、大震災を受けて自衛隊イコール災害派遣部隊のイメージが広がりました。
 自衛隊には土木事業を担う施設科があり、被災地では期待に応えて活動する能力がありますが、災害派遣部隊ではありません。自衛隊の本来任務は国の守り、国防にあるのです。

●命をかける現場
「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」
 自衛隊員には自らの命をかける覚悟が問われています。2年前の大震災では、文字通り命をかけた現場がたくさんありました。
 宮城県の多賀城市は波を被り、多くの犠牲者が出ました。そこに陸上自衛隊の多賀城駐屯地があります。非番で休んでいた隊員は、大地震を受けて間違いなく呼集がかかると考え、駐屯地に行く途中で津波に遭って命を落としました。
 第22普通科連隊900名の隊員が救った命は4,775人。陸・海・空3自衛隊が救った命は約19,000人。しかし、自衛隊員らが自分の家に戻って奥さん、子供、家族が大丈夫かどうか確認できたのは、震災が起きてから実に5日目以降でした。人命救助で本当に大事なのは72時間、すなわち3日間。連隊長の命令で家族よりも被災者優先、携帯電話をかけても家族の安否確認がとれない不安の中で“結果”を出しました。
 5日目以降に交代で家に帰ると、家がなかった隊員もいます。身内が亡くなった隊員もいました。まさに、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務めたのです。
 しかし、自衛隊は災害派遣部隊ではありません。災害派遣のために訓練を積んでいるのではありません。いざという時に国を守るために、厳しい訓練を積んでいるのです。厳しい訓練を積んでいるからこそ、災害派遣の場面で応用できるのです。
 これが災害派遣の為に訓練を積んでいる部隊だったらどうだったでしょうか。想定外で対応できないこともあったかもしれません。災害派遣のための部隊だったら、逆に国防は務まらないかもしれません。

 東日本大震災の被災地では、多くの自衛隊員を激励すると共に、いろいろな現場を視察しました。自衛隊はなぜこんなにも頑張ることができたか。多くの隊員が言っていたことは、訓練の賜物があり、それ以上に目の前に日本人がいたからだと。
 私は自衛隊に入ってから先輩からこう言われました。
「佐藤、いいか、必死とか命がけとか使命感とか簡単に口にする人間を信用するな」
必ず死ぬ、命をかける、命を使う、そういう場面はいつかどこかであるでしょう。しかし、それは軽々しく言うものではなくて、心に秘めて、備えるだけなのです。

●自衛隊を名誉ある地位に
「父や母に孝養を尽くし、兄弟は皆仲よくし、夫婦はお互いに助け合い、友達同士は互いに信頼し合い、人に接するときは礼儀をわきまえて接し、自分自身を慎ましく行動せよ。また、多くの人には博愛の心を持って善行を行い、勉学に励み、仕事には精を尽くし、そして自分の知識の向上に努め、道徳を守っていく心を養い、みずから進んで社会公共の利益のために力を尽くし、公の仕事をするための努力をせよ。そして国の法律を守り、さまざまな規則に従い、万一非常事態が発生したときには国家社会のためにみずからを犠牲にして事に当たれ」
 これは、教育勅語の現代語訳の一部分です。このような教えが家庭や社会に浸透していれば、国の独立と繁栄は安泰でしょう。自衛隊はまさに教育勅語の精神を受け継いで、ふだんから教育訓練をやっていると私は感じております。
 要は、責任というものをどれだけ真剣に考えているか。国民ひとりひとりも考えなければいけない。お互いに、みんなで国防にあたらなければいけないということを、どれだけ説明し切ることができるかが大事です。
 この精神を伝えるためには、戦後教育を正さないといけない、さらに言えば、憲法を変えないといけないと思います。

 自民党の憲法草案では、しっかりと自分の国、地域、家族は自分たちで守ろう、と書いています。自衛権と国民の協力義務を明記し、国防軍を位置づけました。
 自衛隊を明確に軍隊として位置づけないと、実は平時の国際貢献活動でも問題が発生しているのです。戦時であれば自衛隊はその指揮命令系統から国家の正規軍として位置づけられるはずですが、わが国の憲法は自衛隊を軍隊として位置づけていないため、国連決議に基づくイラク派遣でさえ、軍隊の地位を定めたジュネーブ条約が適用されず、一般旅行者と同じ地位に位置づけられてしまうのです。
 政府の命令で派遣され、日本では恋人、奥さん、子供、家族が待っている自衛隊員の命を守り切らなければいけない。そのために、自衛隊は軍隊ではないけれども軍隊として多国籍軍の一員となり、多国籍軍の一員であっても軍隊ではないから多国籍軍の指揮は受けないという特殊な立ち位置を考えだしました。しかし、これは当時も今も説明不能の事態なのです。このようなことでは国も国民も、隊員も守り切ることはできません。
名は体を表すというように、自衛隊を軍隊として名実共に名誉ある地位に位置づけることが必要なのです。
 現場の自衛隊員は、死に物狂いで自分たちの義務と責任を果たそうとしています。
 私も国民の意識を高めていくために、現場を経験している先輩方からご指導を仰ぎながら、自衛隊出身の国会議員として、また防衛大臣政務官として、しっかり汗をかいて働きます。

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