自分が好きな乱歩作品
自分が好きな乱歩作品を、発表年代順に列記します。
・心理試験
・鏡地獄
・陰獣
・孤島の鬼
・何者
・目羅博士
・悪霊
・地獄の道化師
・暗黒星
・大金塊
・ペテン師と空気男
すぐに思いつくのは上の11作品だが、「あ、あれを忘れていた!」というのもあるかもしれない。
思い出したら追加してゆくつもりだ。
気が向いた時に、一作品ずつ感想や批評を書いてゆこうと思う。
- 日本探偵小説全集 (2) (創元推理文庫 (400‐2))/江戸川 乱歩
- ¥1,260
- Amazon.co.jp
めもあある美術館
小学校の五年生ごろだったと思う。
国語の教科書に、「めもあある美術館」という童話が載っていた。
物語は、ある少年が近所を歩いているうちに、見知らぬ路地に入ってしまうところから始まる。
その路地を行くと、「めもあある美術館」という小さな美術館に行き当たり、
興味を感じた少年は館内へと入るが、そこで彼は驚くべきものに遭遇する。
そこに展示されていたのは、彼の赤ん坊の頃から現在までの出来事を、
一つ一つ絵画にしたものだった・・・
教科書に載っているような物語は、大抵つまらない。
当時、ゴジラやウルトラマンに魂を奪われ、マンガしか読まなかったような自分には尚更そう思えた。
ところがこの物語は、ファンタジックというかシュールというか、子供の心をワクワクさせるような内容で、いつまでも心に残った。
その後、中学に進むと江戸川乱歩の作品に出会い、それ以来マンガから推理小説に興味が移って行った。
高校の頃は、横溝正史らの昔の推理小説=探偵小説がブームになったこともあり、興味のおもむくままに読み耽った。
そして20代のある日、家の隅に積まれた古物の山の中にあの教科書を見つけた。
「めもあある」とも10年以上経っての再会で、懐かしさで一杯になりながらページをめくっていった。
そして最期のページの 「作者 大井三重子」 とあるのを見てハッとした。
大井三重子とは、推理作家・仁木悦子が童話を書くときの筆名だったからである。
推理小説を読むようになってから、仁木悦子の名前は至る所で目にしたし、代表作の「猫は知っていた」も読んだ。大井三重子という筆名で童話を書いていた事も、その過程で知った。
しかし、子供心に強い印象を残したあの物語を、その仁木悦子が書いていたとは・・・
巧まざる一人二役のトリックに、意表を突かれた形だった。
以来、仁木悦子の名前を聞くと、必ずこの出来事を思い出す。
いつかまた、読んでみたいと思う。
(追記:09.4.29)
この童話を含む「水曜日のクルト」が、復刊されるようです。
http://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=68311930&tr=m


