もう20年ほど前の話です。

 

北海道の実家の母から、祖父が亡くなったという知らせを受けました。

 

祖父は老後、農家をしている我が家(実家)の仕事を毎日手伝いに来てくれていたのですが、ある日の朝の出勤後に、作業に使う小屋の中で倒れているのを家族が見つけ、その時にはもう亡くなっていたのでした。

 

諸事情が重なり、本州に住んでいた私ひとりが祖父の葬儀に出席することができず、葬儀の日の夜に布団に入って泣いていた時のことです。

 

寝室の二間先にある台所の水盤から、急に水道の流れる音が聞こえてきました(小さなアパートで、二部屋先でも生活音は筒抜けの作りです)。

 

家族はその時全員寝室で寝ていて、台所には絶対に誰も居ないはずです。

 

「祖父が会いに来てくれた」とすぐに思いました。

 

私はそれまで霊を見たり感じたりするタイプではなく、自分には霊感も無いと思って暮らしていたので、もっと驚いたり怖がるような状況だったのかもしれませんが、「祖父が来てくれたのだ」と感じ、怖さは全くありませんでした。

 

水音はしばらく続きました。時間にして1分くらいだったかと思います。

 

『おじいちゃん、来てくれてありがとう。会いに行けなくてごめんなさい。……』

 

心の中で祖父に話しかけた少し後、音は止まりました。

 

この時は祖父が家まで会いに来てくれたのだと思っています。