大学病院へ転院してから約2週間。
そうちゃんは気管切開と腸瘻の手術を無事に乗り越え、心配されていた肺炎もなんとか回復へと向かうことができ、おかげで予定通りの日程で元の病院へ戻る手配を進めていただくことができました。
そしてその日の朝、私は転院する前のことを思い出していました。
ちょうど七夕が近づいていた転院前日、私たちは病院に飾られていた笹に、願いを込めて短冊を飾っていました。
『そうちゃんと元気いっぱいに帰って来られますように』
その頃は、そうちゃんを信じる強い気持ちの陰に、常に小さな不安を抱えていました。
手術という選択が本当に正しかったのか。
ちゃんと乗り越えて戻って来られるのだろうか。
当時の迷いや不安な気持ちを思い出すと、こうして無事に手術を終えて帰られることがどれほど有難いことか、多くの方々の支えによって生かしてもらってきた大切なそうちゃんの命を、これからは私たちがしっかりと守っていかなければという気持ちを改めて強く持つことができました。
また、手術のための転院ではありましたが、このように違う病院を経験できたことは、私たちにとってとても良い機会となっていました。
いつもとは違う視点からそうちゃんの病気を見ていただけたこと、その中で古い骨折を見つけていただけたこと、遺伝子検査を提案していただけたことなど、大学病院の先生方のおかげで新たな情報に触れることができ、狭くなりつつあった視野も新しい環境で少し広げられたような気がしていました。
また、違う病院に来てからより一層、元の病院の良さにも改めて気づくことができ、そこがやはり私たちにとってはとても居心地の良い大好きな場所であることも再確認することができました。
そして待ちに待った元の病院へ戻る時間。
主治医の女性の先生とよく知る看護師さんが救急車でお迎えに来てくださり、私たちを見つけると、「そうちゃん!」と真っ先に笑顔でそうちゃんのところへ駆け寄ってきてくださいました。
「そうちゃんすごいね。本当によく頑張ったね。」
愛しそうにそうちゃんを覗き込みながら再会してくれている姿を見て、嬉しくて涙が出そうになりました。
たった2週間ではありましたが、様々な疾患を抱えるそうちゃんを思うととても不安だった大きな手術、そして術後は眠り続ける毎日、何とも言えない緊迫感を感じるNICUの雰囲気、そうちゃんの肺炎による状態の悪化など、様々な状況から張り詰めていた心が、久しぶりにお会いしたその先生と看護師さんの温かい雰囲気によって癒されていくのを感じました。
そうちゃん、大好きな場所に帰れるよ。
慌ただしく準備され始めた周囲を不思議そうにキョロキョロと見渡すそうちゃんにそっと伝えました。
久しぶりに帰った元の病院はやはりとても居心地が良くて、手術を無事に終えたそうちゃんを沢山の人が待っていてくださいました。
「そうちゃんおかえりー!」
「お口スッキリしたねー!」
そうちゃんは沢山の懐かしい声かけに反応しているかのように口をパクパクと動かして、とても嬉しそうに見えました。
そして、そんなそうちゃんの反応を皆も嬉しそうに眺めてくれていました。
帰って来た場所は、本当の家のように温かく、そうちゃんにとっても私たちにとっても、そんな場所があることをとても幸せに感じていました。
それからは毎日のように話しかけに来てくださる先生方や看護師さんたちに、そうちゃんは自由になったお口を一生懸命に動かして反応し、手術をして良かったな…と改めて思えるような微笑ましい姿を沢山見ることがきました。
しかしその一方で、治りきっていなかった肺炎の影響で、少し油断すると熱が上がってしまい、また、やっと右肺の肺炎が治ってきたかと思うと今度は左肺に肺炎の兆候が見えてくるなど、少し不安定な状態もしばらく続いていました。
それでも好きな場所で過ごせる日々は、私たちに不思議な力を与えてくれて、前向きに見守ることができていました。
そしてそうちゃんの状態がやっと安心できるところまで回復できたのは、戻ってきてから4日後のことでした。
写真は元の病院に戻ってから、よほど安心したのか、気持ち良さそうに眠っていた時のそうちゃんです。
