そうちゃんの気管にできてしまった肉芽のステロイド治療を始めて約1週間後、経過を診るためにセンター長が再度ファイバースコープでそうちゃんの肉芽をチェックしてくださいました。
すると肉芽はとても小さくなっていて、治療を始めて以来落ち着いていたサチュレーション低下の問題も、これで解決したのかもしれないと誰もが信じ、安心していました。
ところがそれから数日後、すっかり油断していたところに突然、いつもの急激なサチュレーション低下が起こってしまいました。
これがきっかけで、サチュレーション低下の原因は肉芽ではなかったことが分かり、なかなか落ち着かないそうちゃんの現状と今後の方針を話し合うために、久しぶりに主治医のお2人と面談をすることになりました。
面談で話されたのは、主にそうちゃんの呼吸状態と、ミルクの逆流の問題について。
サチュレーション低下の原因は結局また分からなくなってしまいましたが、先生方は可能性として『迷走神経反射』というものを考えていると新たに教えてくださいました。
迷走神経反射とは、過度なストレスなどが原因で自律神経に影響が出て、心拍や血圧が低下し、気を失ったような症状が出たりすることなのだそうです。
過度なストレス…。
いつもサチュレーションが下がる時は、何かストレスなどのきっかけがあるというよりは身体の向きによるものが多いように感じていた私は、その説明にしっくりきたようなこないような…という感じではありましたが、色々な角度から可能性を考えてくださっていたことには有難く感じていました。
また、もうひとつの可能性として、喘息のような現象が一時的に起こっているかもしれないので、一度喘息の薬も試してみたいと言われました。
産まれてからずっと、そうちゃんの呼吸状態は良いのか悪いのか何が原因なのか、すべてがよく分からないまま間もなく生後半年を迎えようとしていました。
そして、もうひとつ大事な課題であったミルクの逆流について。
頻度も量も徐々に増えてきてしまい、体重にも影響が出始めてしまっていたので、これには早急な解決策が必要でした。
原因はやはり食道裂孔ヘルニアだろうとのことで、本人も辛いだろうし、このままだと成長に影響も出てきてしまうので、胃瘻(いろう)か腸瘻(ちょうろう)の手術をした方が良いとセンター長から提案をいただきました。
胃瘻・腸瘻とは、口から栄養が摂れない場合に、外から胃や腸に直接管を通す手術をして、その管から栄養を摂るものだと教えていただきました。
そうちゃんはずっと人工呼吸器をつけていたので、口から栄養を摂ることはできず、鼻から胃に繋がる管を通してミルクを届けている状態でした。
胃瘻か腸瘻の手術をすればミルクの逆流もほとんど心配なくなり、確実に栄養も摂れるので、本人の負担と成長とどちらの問題も解消できると、とても前向きな話ではあったのですが、私も主人もその手術にはすぐには前向きな気持ちになれませんでした。
確かに、そうちゃんをラクにはしてあげたいし成長も心配なくさせてあげたい。
でも、もう口から栄養を摂ることは絶対にできないの?
もう諦めた方がいいの?
とても切ない気持ちに襲われていました。
最近は母乳をたっぷりつけた綿棒も自らよく吸ってくれるようになり、誤嚥をしてしまったというトラブルも一切なく、人工呼吸器をつけているので、それ以上の確認をすることはできていませんでしたが、私にはちゃんと飲み込めているように感じて仕方がなかったのです。
センター長からは、ずいぶん前に、そうちゃんはミルクを口から飲めるような嚥下反応はなく、見込みもないので、食道裂孔ヘルニアの手術はする必要はないとはっきりと断言されていました。
でもそれから数ヶ月経った今、やはりどうしても諦めきれなかった私は、無理と言われる覚悟で、食道裂孔ヘルニアを治すという選択肢はないのかを再度尋ねました。
嚥下についても、反応があるように感じると感じていたままを伝えました。
すると予想外に、センター長が答えるより先に、隣にいた女性の主治医の先生が、
「私もそうちゃんがごっくんしてるの見たことありますよ」
と笑顔で言ってくれました。
この瞬間、改めてこの先生が主治医になってくれて、本当に良かったと心から思いました。
毎日そうちゃんのことをちゃんと見てくれていたその先生だからこそ気づいてもらえたことでした。
これにはセンター長も、
「じゃあ一度、小児外科の先生に診てもらいましょうか…ただ、食道裂孔ヘルニア自体もかなり手術の難しい変わった形状をしているので良い返事がもらえるとは限りませんけど…」
少し渋々な感じではありましたが、それでもちゃんと伝えることによって前向きな話をすることができたことを嬉しく思っていました。
そうちゃんのいた病院には小児外科はなく、センター長の言っていた小児外科の先生とは、週に一度来てくださる近くの大学病院の先生のことで、もし手術をすることになればその大学病院に転院することになるとのことでした。
そしてその大学病院は、日本でトップクラスに小児外科が有名な病院とのことで、難しい症例を沢山扱ってきた先生に診てもらうことができると聞き、何かが大きく動くような気がしました。
きっと嚥下もできると信じてはいましたが、そのような先生にハッキリと難しいと言われれば、ちゃんと諦めもつけられるような気がしました。
そうしたら、ちゃんと受け入れて、前を向いて次のステップを考えていこう。
私も主人も新たな覚悟を決め始めていました。
写真はこの頃にやった聴力検査の様子です。


