大学病院から週に一度来ているという小児外科の先生は、その週の金曜日には早速そうちゃんのところへ来てくださいました。

とても有名な小児外科と聞いていたので、勝手に中年くらいの男性の先生が来るものだと思い込んでいましたが、来てくださったのは40代前半くらいのとても小柄で可愛らしい雰囲気の女性の先生でした。

そしてその先生は、私に軽い会釈と笑顔を向けたあと、そうちゃん専用のパソコンでレントゲンを食い入るように確認してくださっていました。

終始特に顔色を変えることもなく、パソコンを閉じると次にそうちゃんの身体を「ちょっとごめんね~」と言いながら触り始めました。

「ずっと頑張ってるんだよね。えらいね。」

そうちゃんにそう話しかけてくれた先生の優しさに安心して、私は初めて会ったその先生に、「そうちゃんにしてあげられることはできる限り前向きにしていきたいんです」と切実な思いを伝えました。

するとその先生は続けて、

「手術はできそうだけど、あとはそうちゃんの負担とか総合的に考えていかないとね」

と話してくださいました。
先生の言葉は不思議なくらいにスッと心の中に入っていきました。

でも、あれほどセンター長から難しいと言われ続けていた手術があっさりと『できる』と言われたことに、少し拍子抜けもしていました。

その先生は、とても自然体で話しやすく、穏やかな空気感が心地良い方で、毎日沢山の手術をしている外科の先生に勝手に抱いていた強くてとっつきにくいイメージはすぐになくなっていました。


そして、小児外科の先生が来てから15分くらいが経った頃、主治医の2人が慌てたように小走りでGCUに入って来ました。

小児外科の先生は入れ替わるように主治医の2人に「また他の先生と相談して連絡します」と言って帰ろうとすると、「え!もう何か話しました?!」とやけに慌てているセンター長。

「レントゲン見ましたけど、手術はたぶんできますよ。気管切開もできると思います。ただ、本人の月齢と負担も考えてどうするのがベストか他の先生と相談します。」

センター長相手に堂々と回答する姿を見て、その小柄な先生がなんだか急にとても強くたくましく見えました。

「え、でも食道裂孔ヘルニアは…」

いつもと違って歯切れの悪いセンター長は、

「普通のよく見る食道裂孔ヘルニアですよ。」

小児外科の先生にそう言われると、私の視線に気づいたのか、その先生を奥の関係者の部屋へ誘導し、その場からいなくなってしまいました。


あんなに慌てたセンター長を見たのは初めてでしたが、後からこっそり看護師さんに聞いた話だと、主治医とすり合わせをする前に小児外科の先生が私と話してしまったことがあまり良くなかったのだそうです。

それは分からなくもありませんでしたが、私にとってはありのままの小児外科の先生の見解を聞くことができてとても満足していました。


私には変わった形状で手術は難しいって言ってたのに、普通の食道裂孔ヘルニアだって言われてたな…

手術もあっさりとできるって言われてたな…

案外センター長って適当なのかな…

こういうことを患者家族に思わせてしまうから、きっとセンター長は自分のいないところで小児外科の先生と話してほしくなかったのだろうと思いましたが、この時の私は、あんなに慌てるセンター長に人間味のあるところを見れた気がして、意外と可愛いところもあるんだなとそれほど嫌な感情は出てきませんでした。

でもそう思えたのはきっと、小児外科の先生や新しい女性の主治医の先生など、真摯に向き合ってくれて強い味方になってくれる方々が増えてきてくれてることを実感できていたおかげだったのだろうと思います。

やっぱりいざとなると女性はとっても強くて、センター長も裏では意外と色々肩身の狭い思いをしてたりもするのかなと思うと少し優しく見られそうな気がしました。


結局、忙しい小児外科の先生方の見解を聞くことができたのはそれから1ヶ月近くが経ってからでした。

その間もそうちゃんは相変わらず呼吸の問題とミルクの逆流の問題に悩まされ続け、CRPも上がったり下がったりを繰り返し、決して良い状態とは言えませんでしたが、保育士さんに遊んでもらうと大興奮し、整形の先生にリハビリをしてもらうとリラックスし、毎日沢山のスタッフの皆さんに話しかけてもらい可愛がってもらいながら、なんとか楽しく過ごさせてもらっていました。


写真はこの頃先生や看護師さんたちの間で話題になっていたそうちゃんのびっくり顔です
ニコニコ
突然登場したり急に足の裏を触ったりするとこの顔をするようになりました。

日に日にリアクションが大袈裟になっていくのを皆で楽しんでいました。笑


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