ノロウイルスの院内感染を告げられてからしばらく、陽性反応の出た子供の両親は、これ以上の感染を防ぐために厳重な装備をしての面会が続いていました。

私たちはいつもと変わらない様子のそうちゃんに、潜伏期間を心配していましたが、その後のそうちゃんは水様便が一度出た程度で、熱や嘔吐などの大きな体調の変化はありませんでした。

それでも、もしかしたら明日症状が出るのかも…と毎日ドキドキしながら数日が経ち、そうちゃんはとうとうそのまま特に何もないまま、再検査で陰性になったと報告を受けることとなりました。

何かと心配事の多かったそうちゃんのこの展開には、安心したような拍子抜けしたような気持ちでしたが、とにかく大ごとにならずに済んだことに私たちは心からホッとしていました。

主治医からは、体調に大きな変化の出なかったそうちゃんに、「もしかしたら偽陽性が出ただけだったのかもしれない」と説明を受け、今となっても謎のままですが、院内でもこのようなことが起こり得るのだと、改めて衛生管理を考え直す良い機会となりました。

この数日間、私たちは毎日大きなマスクをして、そうちゃんに表情を見せてあげることができず、なんとなく不思議そうな顔をしていたように見えたそうちゃんと、やっといつも通りに顔を合わせられるようになったことがとても嬉しく、この日はいつも以上にそうちゃんとのコミュニケーションの時間を存分に楽しみました。

また、この感染騒動の真っ只中にそうちゃんは7ヶ月を迎え、私たちは点滴やノロウイルス感染で頑張り続けてくれていたそうちゃんに大好きな絵本をプレゼントしました。

これには、そうちゃんは私たちに想像以上の反応を見せてくれて、本当に絵本が好きなんだなぁと改めてとても嬉しくなりました。

何度も読んでいるうちに、野菜のナスちゃんが、間違えて大根ちゃんの頭をかぶって出かけてしまうという、なかなかシュールなページでそうちゃんが大興奮してくれることが分かり、そんなそうちゃんの反応を見るのが面白くて、その本を読む時間が私たちにとっても大好きな時間になりました。

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そして、院内感染の話題もすっかり落ち着き、いつも通りのNICUとGCUの雰囲気に戻った頃、以前そうちゃんを見ていただき、大学病院で手術の検討をしてくださっていた小児外科の先生から今後のことについてお話を聞く面談が予定されました。

あれから約1ヶ月、色々なことがあったのであっという間でしたが、そうちゃんのこれからを大きく左右する手術の話に、どんな結論が出たのだろうかと私たちはドキドキしていました。

そしていよいよ面談の日、久しぶりにお会いした小児外科の先生はやはりどこかホッと安心できる雰囲気の方で、顔を見てすぐに「こんにちは」と笑顔で声をかけてくださり、私たちの緊張もすぐにほぐれていくのが分かりました。

「そうちゃんの手術について、院内で話し合いましたが、今はそうちゃんの月齢などの負担を考えて気管切開と腸瘻の手術をして様子を見るのが良いのではという話になりました。」

私たちが期待していた食道裂孔ヘルニアの手術の話は出てきませんでしたが、信頼を寄せていたその先生からの言葉は、きっと最善の案なのだろうと私たちも抵抗なく聞くことができていました。

その後も丁寧な説明を続けてくださり、今は食道裂孔ヘルニアの影響でミルクの逆流が起こり、体重が思うように増えていないので、まずは腸に管を通し(腸瘻)、直接栄養を送ることで体重を増やし、十分に体力をつけたところでヘルニアの手術を検討するのが良いのではと提案をしてくださいました。

また、気管切開手術をすることで、口元が自由になると、嚥下訓練もできるようになるので、いずれは食道裂孔ヘルニアを治して腸瘻を閉じられればと考えてると、とても前向きな話を聞くことができました。

これまで、何かと「できない」と結論を出されることが多かったそうちゃんでしたが、ここまでそうちゃんが沢山頑張ってくれたおかげで、こうして先生から希望のある話を聞くことができるようになっていた喜びで、私たちは胸がいっぱいになっていました。

もちろん、手術をするにあたっては、そうちゃんには沢山のリスクがあり、中には命に関わるような不安になるものもあり、簡単に決断できることではありませんでした。

でも、手術をしないことには人工呼吸器から離脱することはできず、リスクを恐れて手術を見送り、自由に動けないままの状態で病院で生活し続けることが、そうちゃんにとって良い選択だとも思えませんでした。

私たちは家族で何度も話し合い、リスクの不安を消すことはできませんでしたが、これまで沢山のことを乗り越えてきてくれたそうちゃんを信じて、いつか一緒に暮らすための大切な一歩を踏み出すことを決心しました。

私たち家族が出した答えを聞いて、

「手術をして色々自由になったら、発達にもとっても良いし、そうちゃんにとってもきっと嬉しい決断になったと思いますよ。」

そう嬉しそうに話してくださった小児外科の先生のおかげで、『この先生ならきっと大丈夫。もうお任せしよう。』と少しスッキリとした気持ちになることができました。