東京から全国を周っていた有名な先生に奇跡的に診察をしてもらえることになったそうちゃん。
主治医を含めた複数の医師がとても興味深そうにその診察の様子を見つめている中、私もその隙間からファイバーを覗く先生の次の言葉をドキドキしながら待っていました。
そしてその間、センター長はそうちゃんの最近の気になる症状について、その先生に事細かに伝えていてくれました。
呼吸器を長時間外せるほどの自発呼吸がありながら、度々発作のようにサチュレーションを下げ、その際にはバギングでしっかりと圧をかけないと回復できず、その原因が未だに分からないこと。
そして右向きで寝ている時に起こることが多いこと。
ここ数ヶ月で頻繁に起こるようになり、それまで苦しそうなそうちゃんを何度も見てきた私たちにとっては、何よりも早く改善してあげたいとても心配な症状でした。
すると、黙ってファイバーを覗き続けていた先生が突然、
「あーなるほどね。そりゃそうなるわなぁ。」
と言いながら「お母さんこっちおいで」と優しく奥にいた私を呼んでくれました。
その先生は、周りにいた主治医でも他の医師でもなく、私の目を見てひとつひとつを「分かるかな?」と確認をしながらゆっくりと説明を始めてくれました。
これまでファイバースコープはセンター長に何度かやっていただいてましたが、こんな風にしっかりと画面を見せてもらうのは初めてのことでした。
実際にカメラに映った映像で、気管内の構造を分かりやすく説明しながら話を進めてくださいました。
「これが挿管チューブの中で…ここから気管が二股に分かれて行くんだけど、この手前の右側がドクドクしてるの分かるかな?」
「これは血管でね、この子は気管支のこの部分が血管に押されて生まれつき少し蛇行してるんだね。これならレントゲンで見ても分かるはずだけどな?」
それを聞いてセンター長は慌ててそうちゃんのレントゲン画像を探し始めました。
映し出されたレントゲンに、「ほら、ここ。」と言って指された場所は、確かに私から見てもよく分かるくらいに曲がっていました。
「蛇行してるのは意外とよくあってね、基本的には呼吸状態に関わることはないから通常はそのままで問題ないんだけど、でも挿管チューブを使うときは注意しないとね。蛇行してるとチューブが真っ直ぐ入らないから、体の向きによってはチューブの先端が動いて極端に空気の通り道が狭くなっちゃうからね。それでサチュレーションが下がるんじゃないかな?」
「こういう子には、気道の構造に合わせて変形する柔らかい挿管チューブを使わないとね。そしたら呼吸もずいぶんラクになるんじゃないかな。」
とても分かりやすい説明に、私も後ろに立っていた主治医の2人もとても納得ができ、感動していました。
ずっと分からなかったことが、やっと、やっと解決した瞬間でした。
やっぱり原因は挿管チューブとの相性だったんだ…。
想像以上にシンプルで分かりやすく、解決策のある結果が出たことに私は心から安心していました。
原因はレントゲンで見ても分かるようなものではありましたが、きっとこれまで沢山の症例を見てきたこの先生だったから気づいてもらえたのかなと思います。
そして、忙しいにも関わらず、こんな私にもひとつひとつを分かりやすく理解するまでゆっくりと説明してくださったその先生にはお礼を伝えましたが、言葉では上手く表現しきれないないくらいに感謝の気持ちでいっぱいでした。
先生は最後には、呼吸器をずっと外していたにも関わらず、先生を見つめながら自発呼吸で頑張ってくれたそうちゃんの頭を「お疲れ様」と優しく撫でて帰っていきました。
そうちゃんが引き寄せてくれる出会いからは、いつも沢山の温かみと勇気をもらうことが多く、親としても人としても考えさせられることばかりでした。
先生から教えていただいた柔らかい挿管チューブは、取り寄せるのには少し時間がかかるようでしたが、センター長は手術までにはなんとか用意ができるようにと早速手配をし、またすぐに診断結果を小児外科の先生へと報告してくださいました。
すると、ほぼ同時のタイミングで、なかなか決まらなかった手術日が約3週間後に決定し、話は突然具体的に進んでいきました。
それからは、今後の話をする際には、これまでほとんど出てくることのなかった『退院』というワードが何度も出てくるようになり、まだすぐの話ではないことは分かっていましたが、それでもこれまでは全く先の見えなかったそうちゃんと暮らせる日が着々と近づいていることが実感できていることに私たちは大きな喜びを感じていました。
写真はファイバーのあと、頑張ったことを皆に褒めてもらってなんだか嬉しそうなそうちゃんです
