札幌の皮膚科専門医/美容皮膚科 女医 日景聡子です。
 
 
エステでハイフ(HIFU=高密度焦点式超音波)を受けた方が視力低下したというニュースが流れてきました。
 
 
上まぶたのたるみがあるとエステを訪れた方に対して、上まぶたにハイフを当てたところ、もともと1.0あった視力が0.1未満になり、眼科で手術が必要になったとのことです。
 
 
眼球の保護なしに上まぶたに機器を照射するというのは、知識を持った医療関係者からするとあり得ないことで、無知とは恐ろしいものだと考えさせられた出来事です。
 
 
そして、そういうスペックの機器がエステで使われていたとは驚きです。
 
 
少し前にもニュースになっていましたよね。
 
目から離れている顎などにハイフを打つ際は目を覆わなくても照射できますが、骨で覆われていない部分のまぶた(眼球直上)に打つとなったら話は別です。
 
 
そもそも、眼球直上に直接ハイフを打ったからといって、まぶたのたるみが改善するほど簡単な話ではないんですが… 
 
 
ハイフは、設定次第ではレーザーよりも深く熱が入ります。
 
 
だからこそ、たるみの治療機器として皮下組織や筋膜にアプローチできるのです。
 
 
詳しいことは当事者でないので分かりませんが、まぶたの薄い皮膚を通り抜けて眼球に熱が入ったのだと推測されます。
 
 
 
 
医療で使う超音波機器にはいろいろあって、たとえば消化器内科でも肝臓などを映し出すのに超音波を使って検査しますし、産婦人科でも赤ちゃんを映しますよね(エコー検査)。
 
 
そういった機器と何が違うかというと、美容目的の超音波機器はハイフの名の通り「高密度焦点式超音波(HIFU=High Intensity Focused Ultrasound)」であり、虫眼鏡で光を集めて一点を高温にする技術を用いているのです。
 
 
 
 
腹部のエコー検査では体にダメージは加わりませんが(赤ちゃんに危害はないですよね)、ハイフの場合は皮下にたくさんの熱の点を作って焦がすことで、傷が治る力を利用して新しいコラーゲンを作りだすのです。
 
 
 
 
(余談ですが、だからこそ10~20代の若いうちからハイフを繰り返すことを推奨しない医師が多いのです。自前で十分なコラーゲンがあるのに、それを傷つけることになるからです。)
 

 

当院では、眉毛の下の部分の脱毛(まぶたにかかる脱毛)、アイラインのアートメイク除去、瞼のシミ治療、目のキワにあるホクロやイボ(普通のゴーグルでは隠れてしまう部分)など、目のすぐ近くの各種レーザー治療ではコンタクトシェルを用います。

 

 

目薬で目の表面の麻酔をして、眼球を守るための特殊なコンタクトシェルを目の中に装着します(私が扱います)。

 

 

 

 

ハイフのアイリフトなど、目周りでリスクのある施術は私が担当します。

 

 

(もともと当院の全顔&顎下ハイフはお顔立ちを見てオーダーメイドで打つのでドクター照射ですが、看護師では判断が難しい部位に「攻め」の設定で照射しています。)

 

 

当院にも様々な美容施術がある中、リスクが低く比較的安全に行えるものを看護師施術にしています。

 

 

それでも、看護師がレーザーを扱うにあたって医療事故を防ぐため、スタッフ教育は惜しまず行っています。

 

 

その話は、以前にもしましたよね。

 

 

 

看護師が間違えそうな部分を拾い上げてマニュアルを随時アップデートしたり、たくさんあるゴーグルを間違えてかけないようシールを貼って分別したりしています。

 

 

それぞれのゴーグルでブロックできるレーザーの波長が違うので、間違えてゴーグルをかけると目の保護に全くならないのです。

 

 

 

 

患者様はもちろん、看護師の体も傷つかないように常に気を配りながら管理しています。

 

 

施術室を全室個室にして鍵付きにしたり、鏡のある部屋にはレーザーを置かないなど、内装上の配慮もしております。

 

 

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(鏡の部屋は、注入やピーリングなどで使っています。)

 

 

こういったことは、患者様の側からはなかなか見えないことなんですが、安心・安全に治療を受けていただくためにとても大切なことで、美容皮膚科・レーザー指導専門医を取る時にも、こうした安全管理というのは厳しく問われました。

 

 

私でさえこのように気を引き締めながら機器を扱っているのに、無資格者が安易にリスクの高い機器をエステで提供しているというのは、とても危険だと言わざるを得ませんよね。(販売する方も悪いのですが…)

 

 

美容皮膚科とエステを切り離して考えられればいいのですが、エステで起きてしまったこうした合併症を何とかしてほしいと、私のような皮膚科や今回の眼科へいらっしゃる方が残念ながら出てくるわけで、今回の事例も見過ごすわけにはいかないと思いました。

 

 

SNSで流れてくる広告・投稿には、正直グレーゾーンなものがたくさんあります。

 

 

広告規制の問題だけでなく、法的に限りなくブラックに近いグレーも…

 

 

敢えてここでは書きませんが、宣伝上手と安全性は別物だということは覚えていた方が安心ですね。

 

 

今日は少し、辛口記事でした。

 

 

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