2020.10.2,3,4
福岡県糸島市にある、ヤマトタケルをお祭りする雉琴神社へ三日に渡り伺いました。
9月の某日、偶然見かけたニュースで雉琴神社の事を知りました。
台風10号の猛威により、境内にあった樹齢約400年の欅の木が倒木し、本殿を直撃したという記事でした。
このニュースを見て、真っ先に浮かんだのが数年前に自然倒木した、頼朝杉の事でした。
頼朝杉とは、静岡県島田市・智満寺に800年もの間お寺と地域を見守ってきたご神木です。
お寺より頼朝杉を託された方との偶然の出会いから、頼朝杉で制作した初代「和胡」が誕生しました。
この頼朝杉は、のちに仏像となり智満寺へ奉納され、奉納の儀の際には頼朝杉に捧げて創った楽曲を和胡で演奏させて頂きました。
そして研究を重ねた今、和胡は欅で制作しているのです。
頼朝杉が、姿を変えてまた本来の場所に還る様を、近くで見届けさせて頂いた体験から、
今回の雉琴神社の欅の行く末がどうしてもどうしても気にかかり、
宮司さんになんとか連絡をとり伺わせて頂くこととなりました。
実際に見に行くと、壮絶な光景でした。
木の根元は根が引き千切られ、土ごと倒れている様子から、
よほど風の影響が強かったのだと分かります。
このように、倒れた先に本殿があり直撃してしまったようです。
宮司さんに話を伺うと、今回は北九州の業者の方が倒れた欅の搬出や管理を無償で行うとの事。
そして、その林業会社の社長さんともお話ができ、そういう事なら楽器が作れる分をぜひ使ってください、と少し木材を分けて頂ける事になりました。
クレーン車や、人力を駆使しながら少しずつ丁寧に欅を運び出す行程をずっと眺めていました。
根元の部分は切り株として残し、元々立っていた場所へ戻されました。
凛と立ち、数百年の歳月をこの場所で過ごしてきた時が感じられるようなエネルギーを感じます。
お預かりした欅はこの部分の一部で、現在は頼朝杉の和胡の際にも協力をして頂いた方の元で無事に保管・乾燥をして頂いています。
乾燥には4〜5年が必要となるので和胡として生まれ変わる時はそのさらに先になるかと思いますが、もしも無事に楽器として完成した暁には、奉納という形で里帰りが出来るように、そしてこの場所にこの欅が立っていたという事実を残せるようなお手伝いができれば、神社のためになる事ができればと切に願っています。
少しとはいえ、預からせて頂いているのはご神木です。
大切に、丁寧に、これからも。