春は花ばかりでなく、水が美しい季節 | 近藤サト オフィシャルブログ「ベルベットフィール」Powered by Ameba

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尋胡隱君(胡隱君を尋ぬ)

渡水復渡水
看花還看花
春風江上路
不覺到君家

川を渡り、また川を渡り
花を看、また花を看つつ
春風の吹く川沿いの路を
いつの間にやらあなたの家に来てしまった

明の時代に活躍した高啓の詩です。
春らしくて好きです。
タイトルの隱君とは、隠者のことですから
実際はもっと浮世離れした風情だったのでしょうか。

この『水を渡る』という表現は何とも玲瓏たる流れを彷彿とさせて私は気に入っているのですが、実は高啓は蘇州の生まれです。蘇州といえば水の都。
蘇州は一度訪れたことがありますが、高啓が生きた時代から600年以上経た今も静かな川の流れと古都の面影を残します。

『水を渡る』でもう一つ思い出すのは、種田山頭火の『水を渡って女買いに行く』という句。
1932年に島原で詠んだと言われています。

山頭火が実際に『女買いに』行ったのかは分かりませんが、島原もまた水の都です。美しい疎水が有名です。

偶然の一致かもしれませんが、山頭火が高啓を思い出していたなら少し嬉しい気がします。
ただ、山頭火が詠んだのは冬場なのですが。