開店時間に入店する一番客 | 近藤サト オフィシャルブログ「ベルベットフィール」Powered by Ameba

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フリーランスの仕事は、時間の自由がきくというのは良い点のひとつ。

仕事と仕事の間に昼食のお店を探すのが最近の楽しみ。

ナレーションの主な仕事場となるポストプロダクションは都内に散らばっているから、場所場所で新しいお店に入ってみる。

まずはネットで下調べ。

いつもふらりと一人で行く。

初めての店を訪れるときに心がけているのは
開店時間に一番で入ること。

開店1人目の客は、店側も緊張感を持って迎えるし、客もその緊張感に応えようと背筋を伸ばす。

加えて、一見の客が一番注目してもらえるタイミングでもある。何度も通いつめなくも、開店同時入店を2.3回続けたら、覚えてもらえるのではないだろうか。

先日、渋谷の路地の雑居ビルにあるお寿司屋さんに入ってみた。
開店時間の11時30分。
暖簾は出ているし、
引き戸も開いていたので店に入ったが、客どころか誰も、いない・・。

無人の店のカウンターに座って待つのも失礼かと、もう一度外に出て待つこと3分。
エレベーターが空いて店主らしき男性が
『えっ!あ、すみません!』
と大慌てで店内に案内してくれた。

作戦は順調過ぎる滑り出し。

店主は慌てながら、看板を下まで運んでまして、、と白衣を着ながらお茶を入れてくれた。
一番客の密かな楽しみのひとつは、準備作業も見られること。エプロンや白衣をつけるところや仕込みの一場面が見られたりすると、ドキュメンタリーみたいで面白い。

1600円のランチを頼むと、
店主はまじまじと私を見て
『お客さん、初めて、ですよね・・。
こんな小さなビルの六階まで、よくいらしてくださいました。
でも、どうやってお知りになったんです?』

店主も興味津々である。

ネットで見てきた事を告げると、それはそれはと話が始まる。

昨今の寿司店事情や、店主の経歴、客筋など。
さらにネットの無責任な書き込みにはいつも困っている、とこぼされた。
お互い初対面で、店主と客という関係ながら、探り合い緊張感あふれる楽しい会話が続いた。

店主も私も同意見だったのは
お客さん相手の商売は、やはり人と人とのコミュニケーションが大切だということ。
料理は美味しくても
人に魅力を感じられないとつまらなく感じてしまう。

1600円で、もう勘弁してというほどお寿司が次々に出た。お椀も美味しかった。
また来たいな、と思うお店だった。

結局、私が食べ終わるまで他に客は来なかった。

店主が最後に笑って言った。
『今度は、自分がいなくても店に入って座っててくださいね。』

まさかの『常連さん待遇』を初回にして得る事ができた。

ちなみに店主は私のことは知らなかったから、テレビ関係の仕事をしてます、と話した。
店主は『そうなんですか。』と軽く流してくれた。こういうのもフェアでいい。