俺には長谷川寛という中学校の同級生がいる。
小学校も一緒だ。互いの実家同士も徒歩5分くらいの距離だろうか。
俺たちは小学校高学年から中学時代にかけて、冒険小説にハマっていた（特にジュール・ベルヌ）。
そして二人とも、
「将来は小説家になろう」
と約束し合っていた。
俺たちは、ジュール・ベルヌを模倣した冒険小説を書き始めていた。
でも、同じような冒険小説でも作風は当然のことながら全然違った。
寛は完全なフィクションとして小説を書いていたが、俺はクラスメイトや先生を多数登場させて、クラス中に笑ってもらおうと思って書いた。
そして、そう、下ネタもたくさん盛り込んでね（中学校時代から俺の頭はまったく成長していない）。
俺の狂った頭とは違って寛の頭はとても良かった。
だから、元K-1の谷川貞治EPの通っていた名古屋で1番の高校、旭ヶ丘と双璧をなす「明和」という高校に進学した。
しかも、彼の凄いところは、塾の類いには一切通わずに、進研ゼミと本屋で買った参考書だけで内申点40以上を常にキープし続け、さらに東海地区で1、2を争う高校に進学してしまったところだ。
俺はどれだけ頑張っても内申点39までしか上げられなかった。
やはり日頃の勉強の積み重ねが、いかに重要なことかを思い知らされた。
寛の性格はいたって穏やかだったが、ちょっと堅物なところもあった。
俺たちが昨日のオカズ（晩飯じゃない方のだよ）に何を使ったか、という話を毎日のように振っても、寛は絶対に答えなかった。
だいたい僕はそんなことしたことがないし、とかなんとか言って誤魔化しやがるんだ。
そんな下ネタには秘密主義の寛、学級委員長は当然のことながら、たしか生徒会長も務めていたと思う。
俺とは違ってスカートめくりもしなかったので、女子たちからの信頼も厚い。
ちなみに、俺はいつも寛の補佐役として副学級委員に進んで立候補していた（このポストは責任もなく、意見だけは言えるからね。まったく気楽なものである）。
偶然か必然か、ちょうど俺たちの学年は、学年全体がヤンキーもガリ勉も皆一様に仲が良かった。
もちろん、多少なりともイジメはあったが、皆一様に仲が良かった。
そして特に、俺のクラスの「一致団結感」といったら、ちょっと凄かった。
合唱コンクールで、寛は間違いなく学年で一番の指揮をした。
だから最優秀指揮者賞は当然、寛が獲るものだとみんな信じていた。
しかし、最優秀指揮者賞は優勝したクラスに与えられる、という暗黙の了解があったらしく、2位だったウチのクラスは寛に賞を獲らせてやることができなかった。
俺はあんまりにもムカついたもんだから、生徒指導の先公に抗議しに行った。
「俺たちが2位なのは構わないけど、指揮が一番上手かったのはどう考えても寛だ。
あんたたちの目は節穴か！？」
うちのクラスが1位になれなかったのは、不登校がちだったヤンキーの女が当日いきなり舞台に立たされて歌わされたからだ。
練習もしていないのに歌えるわけがない。
ただ突っ立っているだけの彼女の態度が、評価を落とすことになったのは明白だった。
そのヤンキーの女も、学校には来ていなかったが寛の一生懸命な指揮ぶりには感銘を受けていた。
だから、ひょっとしたら自分のせいで寛が最高指揮者賞を取れなかったのだろうか、と落ち込んだ様子だった（厳しい現実を味わうという意味では良い経験だったかもしれない）。
納得いかないものには、どうしても納得できない俺は、危うく先公にブン殴られそうになりながらも自分の思いをキレながら伝えた。
あのときのクラスメートの気持ちは間違いなく代弁したはずだ。
でも寛が、
「サッシン（当時の俺の
あだ名）、もういいって。もう別にいいって。でも、ホントにありがとう」
と言って、事態は収拾した。
俺も大人になってから、逆の立場になったことがあるんだけど、
友達が自分のために本気になってくれた姿を見ると、悔しくても本当に感謝しか沸いてこないんだよ。
それは、生きていく上での大きな支えにさえなる。
きっと寛には、あのとき仲間たちの
「寛が一番になって欲しい」
という気持ちが伝わったと思うんだ。
だから、悔しかったと思うけど、笑ってお礼が言えたと思うんだよね。
こんにちは、また……②
こんにちは、また……③
明るく生こまい
佐藤嘉洋
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Krush45 in Nagoya
佐藤嘉洋vs山崎陽一 放送日程
放送局『GAORA Sports』
ラスト1回！！
10月16日(木) 23:00 ～ 26:00
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