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新橋からゆりかもめに乗る。
ディファ有明に行くときには、なるべく新交通ゆりかもめに乗りたいと思っている。
私は、この電車から覗く景色が好きなのだ。

初めてゆりかもめに乗ったとき、夜の景色から見るお台場が四番バッターばかり揃えていた一時期の巨人に見えた。
そういえば10年以上前に東京で一瞬だけ恋愛関係に落ちた子に「次のデートではお台場に行こう」と言われたことをいつも思い出す。
結局それから一度も会っていないのだが。

もう一つの思い出は今年のことである。
ヘンリー・オプスタルに勝利し、悪夢の3連敗を脱出した翌日。
応援に来ていた家族とともにお台場にあるレゴランドに行ったときの思い出だ。
勝利の瞬間、目の前の景色の透明度が上がった。
あの感覚は一生忘れることができない。
私たちの宿泊先はそれぞれ違ったので、新橋で待ち合わせ一路ゆりかもめに乗り込んだ。
外の景色を楽しむ子供の顔を見ながら、しがみつきにしがみついた前日の勝利に感謝した。
お台場の空は信じられないほど青かった。
でもそれは、私の網膜を覆っていた曇りレンズが外れたことが一番の要因だろう。

プロの姿勢がどうのこうの、とか、お客さんのためにどうのこうの、とかは一切考えなかった。
K-1で育った自分でも不思議なくらいだった。
たぶんそれくらい必死だった。
死に物狂いだった。

そこから試合をハイペースで重ね、怒涛の4連勝。
いいかい、あの景色が変わった瞬間の感覚を大事にするんだ。
そうすれば勝ち続けられる。
今までは勝っても負けても心をなるべくフラットにして、勝ったときは負けたときのことを、負けたときは勝ったときのことを思い浮かべるようにしていた。
二月の連敗脱出から考えを改めることにした。
勝ったときは大いに喜んで勢いに乗ってしまおう、ということなんだ。
負けたときのことは考えない。
もう負けない。

そして私は2013年の三大カードの一つ、梅野源治vsゲーオを観に行く。
他の二つは久保優太vs野杁正明、手前味噌だが佐藤嘉洋vsブアカーオ・パンチャメークと認識している。
久保vs野杁は試合直後にさっさと着替えて、しかと見届けた。
佐藤vsブアカーオは己が体現する。
それなら梅野vsゲーオも観ておかないといけないでしょう。
ということなんです。
ディファ有明の皆さん、この一戦を楽しみましょう。

後記(敬称略)
梅野はゲーオに2ラウンド1分16秒でKO負けした。
ウティデートにKO勝利し、梅野は日本ムエタイ界を背負う人材となった。
今回は本当にトップ中のトップとの対戦が実現した。
結果は完敗だった。
しかし、トップ中のトップ相手にして、ムエタイの距離で戦えていたことに、私は彼の可能性を感じる。
私はますます梅野源治のことを応援したくなった。
強者に対し、まったく怯むことなく挑戦していく姿に心が震わされた。

素晴らしい試合をありがとうございました。
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明るく生こまい
佐藤嘉洋