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Krushルールでの自分自身へのリベンジを果たし、
とうとう次は今年最大の大一番となりそうです。
対戦相手はあのブアカーオ選手(以下ブアカーオ)です。
偽物じゃありません、本物のブアカーオです。

彼とはこれまでに3回戦ってきました。
1回目は2006年6月。
鼻骨を陥没骨折させられ2TKO負け。
そのまま入院生活を余儀なくされました。
2回目は2008年2月。
当初対戦が予定されていた小比類巻貴之氏の怪我により、よりによって天敵のブアカーオが代替選手となりました。代打でより強いヤツが出てくるなんて……そりゃないよ谷川さん、と思いました。
しかし、意外にも勝負は延長までもつれ込みました。
終了間際に私の良いパンチも当たったのですが、それまでのブアカーオの攻勢もあり、判定は2-1で割れ、惜しくも涙を飲むことに……。
ただし、ここで互角に戦えたことが失われた自信を取り戻すキッカケとなりました。

そして3回目。同年7月。
「俺は運が良い、運が良い」と自己洗脳して臨んだ戦い。
同じ相手に3連敗というのは選手としての存在価値に関わる事態です。
私は試合前にビッグマウスも交えてこう断言しました。
「100%勝てる」
あまり物事を100とか0とか極端に決めつけるのは好きではないのですが、このときはそれが功を奏したのでしょうか。
ブアカーオ自身が今まで経験したことのない劇的なKOでの勝利でした。

私は勝利したあとトップロープに上り、雄叫びをあげようとしました。
しかし、あっけにとられて雄叫びをすることすら忘れていました。
トップロープから見渡した会場では、観客が総立ちして拍手喝采。
私のファイトスタイルは万人が受けるようなモノではないと自覚していました。
それが、はい。
それが……日本武道館全体を震えさせるような歓声が、私の身体にビリビリと打ち寄せたのです。
セコンドについた後輩の島岡は号泣していました。
私は後輩の狼狽ぶりに、またぞろあっけにとられました。

そのあっけにとられた表情を見てなのか、当時のブログには「佐藤は喜んだ顔をしていないから、あの試合は最初から仕組まれたイカサマだ」というコメントが多数書き込まれました。
私の試合をつまらないとか言うのは個人の受け取り方だから、それは好きにすればいい。
だが、互いに本気で殴り合った試合をイカサマと吐き捨てるのは、私にもブアカーオにも大いに失礼な話だなと憤りました。
ブアカーオも完全に本気でパンチを振り回していました。
イカサマでそんなことするはずがないじゃないか。
まったく失礼な話なのである。

それでは一旦CMです。

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(CM終わり)

あと、「あっけに取られていた」というのもあるのだけれど、試合の途中から強烈なパンチを食ったせいで記憶が飛び飛びで、2008年はベスト4からワンデートーナメントに変わったというルールを忘れていたのです。
だからブアカーオをKOした瞬間も、「まだ今日は次がある。気を抜いてはダメだ」という気持ちを保っていました。
心底喜べなかったためのあの表情、でもあったのです。
人間があっけに取られ、気を抜かずに平静を保つとあのような表情になるんですね。

今回のブアカーオとの対戦はこれで4回目です。
しかもトーナメントとかではなく、この試合限りの1発勝負。
今度こそ私は、勝利したあとに頭の中が真っ白になるくらい心底喜んでやるんだ、と決めています。
また、これまでのブアカーオとの3度に渡る戦いは、そのまま映画にでもできるんじゃないかというような展開でした。
だから、この物語はここで完結していた方が、自分の中では思い出に浸れて良かったんです。
しかし、キレイな物語なのは私のサイドから見た場合で、タイ側からしてみたら、あの屈辱ともいえる負けを払拭させるために、「この物語を完結させてはならない」という想いがあると思います。
「よし、それならやってやろうじゃないか」とバカな私は腕まくりをして乗るわけです。

だからこそ、自分サイドの最高の締めくくり方として、10月6日で劇的な勝利を収め、ここで2勝2敗の5分の星に戻し、そしてブアカーオと5度目の完全決着戦(来年やってやるて!)でも勝利し、私とブアカーオの物語をここで完結させる、と。

ブアカーオにKO勝利した、という山で満足するのか、ブアカーオに3勝2敗で勝ち越した、という山を新たに目指すのか、という話です。
私は後者を選びました。
これもまた人生なんです。

このビッグマッチは世間的に知られるのだろうか。
それとも格闘技ファンの間だけでひっそりと行われるだけなのだろうか。
どうせやるなら多くの人に伝わるところで試合がしたい。
選手なら当たり前の気持ち。
これを見て、何かを感じた人は協力してもらえたら幸甚に存じます。

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佐藤嘉洋