前回まで


『ショージ様、あ、ショージ。
クモから落ちてきたのはまあ仕方ないとして、
どうしてこんな黒い壁を作ったのさ。
おかげでこの壁壊すのにすごい時間がかかってタイムロスしちゃったよ。』


ピコリンが見るからに太ったショージに聞くと、
ショージはお腹にたぷついたお肉をつまみながら言いました。


『ああ、これね。
これ全部僕の鼻クソ。
地上に落ちてからというもの、もう暇で暇でしょうがなくてさあ。
何してるかっていったら自分の鼻クソで壁を作ることぐらいだったんだよ。
こうなったら自分の鼻クソの限界に挑戦してみようと思ってさ。』


するとにわかにエイミーちゃんの目が輝き出しました。


『うそ。ほんと。
これ全部クモリン族の鼻クソなの。
信じらんない。こんなにたくさん。
アタシ全部持って帰りたいわ。』
『え、なんで僕の鼻クソなんかどうするの。』


このヒト頭おかしいの、とショージはピコリンに聞きました。
世の中の女性は総じて光るモノに心を奪われます。
それがクモリン族からしてみたら、ただの鼻クソだったとしてもです。
Syojinohanakuso

『ショージ。
地上ではクモリン族の鼻クソはとても重宝されているんだ。
君たちにとっては信じられないかもしれないけど、宝石なんだよ。
地上のヒトは時折クモから落ちてくるクモリン族の鼻クソを血眼になって探しているよ。
この硬い壁が全部クモリン族の鼻クソだと地上のヒトが知ったら大騒ぎになるよ。』


でもそうかこれで納得がいったぞ、とピコリンは右手をポンッとして続けます。


『なんか不思議に思ってたんだ。
壁は時折かすかに光るし、壁をカンカン削るたびに七色の閃光がほとばしっていたからね。
壁は硬くて全然前に進めなかった。
だけどあの光がかすかでもあったから、絶望せずにやり続けられたんだよ。』
『ピコリン、頂上行って、帰るときにこのクモリン族の鼻クソをたくさん持って帰りましょ。
ちょっといつも見るクモリン族の鼻クソとは光が少ないっちゃ少ないけど。』
『ボンクもコンヌちゃんへのプレゼントとしてん、たくさん持っていきたいわん。』


がぜんエイミーちゃんは元気になった様子で、
ヒョーゲルくんは七色に光らせるかのように目を輝かせて言いました。
するとクモリン族のショージがむずがゆい様子で口を開きます。


『みんなごめん。
今の僕の鼻クソには何の価値もないと思うよ。
クモの上にいたころは食べるモノも一つだけだったんだけど、
地上に落ちてからというもの食べるモノがたくさんありすぎた。
僕はただでさえ大食いだから色んなものたくさん食べちゃってさ。
地上に落ちる前は鼻クソ自体は少ししか取れなかったし、
たまに取れてもさっきみんなが言ったように、すごいキラキラしてたよ。
今の僕の鼻クソを見てごらん。見てごらんよ。
ほとんど黒いし、光も少ないでしょ。
多分僕は不純物の多いモノをたくさん食べちゃったから、
鼻クソもほとんど不純物になっちゃったんだよ。
量はものすごく多くなったしね。
おかげでものすごく苦労したでしょ。
この壁を壊すのに。』


三人は一斉に大きくうなづきました。
ショージはあまり反省した様子もなくエヘヘと笑いながら、
ごめんと一言だけ言いました。