『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』

 


>物語(オープニングストーリーより)

 それは、ある日母からわたされた、一冊
の手帳からはじまった……。物置をかた
づけていて、ぐうぜん見つけたのだという。
 ボロボロで、あちこちカビのはえたその
手帳は、数年前に死んだ祖父の日記だっ
た。そこには、いつもひなたでまどろんで
いた祖父の、遠い日の想い出がつづられ
ていた……。

「 …………
 おまえは まだ
 おぼえているだろうか……?
 わたしたちの出会いを
 そして、あの数々の冒険を……
 すべてが夢のようだった。遠い夏の日々
 わたしたちは風のようにかけぬけ……
 おまえは、空から落ちた
 ひとつぶの 星のかけらだった……

 ああ……、いつでも 私は帰って行く
 2度とはもどらぬ、あの遠い日々へ……
 こうして目をとじ、
 そっとおまえの名を 夜にささやけば……

 

 キッド……
    キッド……

           ……キッド……
          ……おい、キッド。

「用意はいいかい、キッド?
 気がせくのはわかるけど、
 油断するなよ」
「はん、おまえこそドジんなよ。
 なんかあったら、捨ててくからな」

 「さあ、行こうぜ、ギル。
  ヤマネコの野郎に、これまでの借りを
 百倍にして、かえしてやる。
  泣いて謝るなら今のうちだぞ、野郎め。
 許してやらないけど、な。
  ククク……。
  アーッハッハッハ!!」

>概要
サウンドノベルタイプのアドベンチャーゲーム。サテラビューの番組内では「テキストRPG」と紹介された。
主人公は楽師の少年セルジュ(名前変更可能)で、仲間は盗賊の少女キッドと魔法使いの男である影のギル。
3人は財宝である凍てついた炎を盗み出すため、辺境の街レジオーラの領主ヤマネコ大君の館を冒険する。

基本的に選択肢を選んで文章を読み進めていくシステム。
画像の上に文章が重ねられていく。
一部の画像は動いてアニメーションとなっている場合もある。

行く手を阻む敵との戦闘では行動選択に時間制限がある。
戦闘でダメージを受けすぎるとゲームオーバーにもなる。
また、行動によってキッドの好感度も変動していく。
好感度の高さによって一部演出が変わる。

シナリオは全7種。
シナリオによって全く違った設定、展開をみせる。
1周目はメインシナリオをプレイすることになるが、2周目に進むと残り6種のシナリオへ分岐することができる。

メインシナリオ「Kid 盗めない宝石編」は、『クロノ・トリガー』でストーリープランを担当した加藤正人氏が執筆。
後に発売される『クロノ・クロス』の原点となるシナリオとなっている。

作曲は、こちらも『クロノ・トリガー』でデビューし、好評を博した光田康典氏。
加藤&光田のコンビは、その後スクウェア社の『ゼノギアス』『クロノ・クロス』に携わり、
光田氏の音楽レーベルであるスレイ・ベルズからは短編小説と音楽CDをセットにした『kiRite キリテ』を発行、
さらには、スマートフォン用シングルプレイ専用RPG『アナザーエデン 時空を超える猫』の制作など、
長年に渡り注目されるコンビネーションをみせており、2人が組んだ作品では、
一部の楽曲に「遠い約束」や「盗めない宝石」など共通した名前が付けられている

本作は、メインストーリーを加藤氏が執筆。
2周目から分岐可能なサブストーリーについてはコンセプトのみを加藤氏が考案、
実際のシナリオはそれぞれの担当に任せたとのこと。
ただし、「キッドとひまわり編」に限っては別で、
最初から島本誠氏に任せており、コンセプトも作っていない様子。
https://web.archive.org/web/20190807150334/https://www.procyon-studio.com/special/mf_kato.html

>ゲーム虎の大穴
1996年2月3日放送分では、加藤正人氏がゲスト出演して本作について語った。
ルート分岐に関する説明やシナリオの一部紹介も行った。
他のスタッフに任せたシナリオについてもプロットは加藤氏が作っているものもあり、
例えば、種子島貴氏が執筆したSF編「激闘撲滅宇宙刑事編」のボスキャラを指定したのも加藤氏とのこと。
また、制作期間や容量制限もあり、カットされたシナリオも2本ほどあったため、
反響次第では2を作るかもしれない、といった話もあった。

この後の反響がどれほどあったかは分からないが、サテラビューにラジカル2は制作されなかった。
しかし、ラジカルを別の制作に活かしたいという思いを募らせていた加藤氏は、
ラジカルを原点として、プレイステーション用ソフト『クロノ・クロス』の制作を監督する。

>シナリオ

加藤正人
[担当シナリオ]『Kid 盗めない宝石編』
『クロノトリガー』、『クロノ・クロス』、『バテン・カイトス  終わらない翼と失われた海』、『アナザーエデン』等を制作。

種子島貴
[担当シナリオ]『激闘撲滅流星刑事編、帰郷・灯のシェア編』
ゼノシリーズの核となるゾハルの設定を作り、ゲームだけでなく、小説や漫画原作も手掛けた。

島本誠
[担当シナリオ]『ひまわりとキッド編』
老若男女に長らく親しまれた『デュープリズム』のストーリー原案を担当し、『クロノ・トリガー』やゼノシリーズではバトルプランナーとして活躍。

生田美和
[担当シナリオ]『ギル 愛と勇気の駈け落ち編』『影の王国・死の女神編』
『サガ フロンティア』、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』
『ファイナルファンタジーXII』 等のシナリオを制作。小説や漫画原案も手掛けた。

個人ブログでは、本作がデビュー作であり多くを学んだこと、作中のとあるキャラクターを生み出したこと、

その後活かされる適性を見いだされたこと、ファンへのメッセージなどが記されている。

ラジカル・ドリーマーズ~盗めない宝石~回顧録

 

福川 大輔

[担当シナリオ]『謎の巨神兵器・パラダイスX編』
『FFタクティクス』『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』『ガンダムブレイカー』を制作。

>放送スケジュール
1996年2月3日~2月9日(各日1回)
1996年2月24日~年3月1日(各日1~2回)
https://ameblo.jp/satebo/entry-12666552655.html


>『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズエディション』
プレイステーション用RPG『クロノ・クロス』のリマスター版。公式の略名はクロノクロスRD。
Switch、PS4、Xbox One、PC(Steam)でのマルチプラットフォームで発売予定。
ゲーム機用は2022年4月7日発売。PC用は2022年4月8日発売。
https://www.jp.square-enix.com/cc_rd/

この中には本作『ラジカル・ドリーマーズ  -盗めない宝石-』もリマスターされて同梱される。
また、Steam版に限り、画面比率もノーマルとフルの両方を備える。
https://www.jp.square-enix.com/cc_rd/dreamers/


>クロノクロスRDへのラジカル移植に関する変遷
1999年11月2日、PlayStation用に『クロノ・トリガー』移植版がリリース。
この時すでにスクウェアにはラジカルを付属させたいという意志があったものの、
トリガーのストーリープランナーでクロスの監督でもある加藤正人氏が断ったため、その機会は一度失われた。
この頃の加藤氏にとって、ラジカルの出来は移植を断るほどに恥ずかしいものであったらしい。
https://web.archive.org/web/20190807150334/https://www.procyon-studio.com/special/mf_kato.html

 

1999年11月18日、ラジカルを原点とした新作RPG『クロノ・クロス』がリリース。
2か月後の2000年1月27日には攻略本『クロノ・クロス アルティマニア』がデジキューブから発売。
478ページ以降の加藤監督のインタビューでは、前述したラジカルの移植を断った話も記載されている。
その理由も語られており、ひとつは前述の通り、自分で読むと恥ずかしいものであること。
もうひとつは、ラジカルを発展させて作ったものが『クロノ・クロス』であるから、
ラジカルそのものを遊ばなくてもいいだろうという判断である。

ちなみに、ラジカルがプレミア価格で秋葉原で売られていたとも加藤氏は発言している。
このアルティマニアは、2004年7月30日、スクウェア・エニックスより再販されている。
https://magazine.jp.square-enix.com/gamebooks/books/10332

また、電子書籍版がリマスター発売と同日の2022年4月7日に各電子書店から発売。

https://twitter.com/CHRONO_CROSS_RD/status/1510089642024001536


2019年11月3日、「クロノ・クロス 20th Anniversary Live Tour 2019」(クロノクロスライブ)が開幕。翌年2020年1月25日まで追加公演を重ねた。
合わせて制作されたオフィシャルパンフレットでは、作曲の光田康典氏がラジカルを遊べるようにしてもらいたいと回答した。
https://www.procyon-studio.co.jp/special/cclivebd/

2022年3月、クロノクロスRD公式Twitterアカウント上での質問企画で、、
ラジカルの移植について「前向きに受け入れて頂いたのでしょうか?」とのファンの質問に加藤氏が回答している。
それによると(以前に移植を断ってから)20年以上の年月が経過しており、
放送以来ラジカルがずっと高額取引され続けていることも把握している中、
移植の話がもう一度あったことで「もういいや」と承諾したとのこと。
ファンがクロスだけに限らずラジカルも気にし続ける実態に根負けしたという回答であり、
自ら進んで移植を望んだワケでは全くなく、「前向きに受け入れた」かどうかは肯定していない。
https://twitter.com/CHRONO_CROSS_RD/status/1502841881864015872

>商標登録
1995年11月21日に出願されており、放送から1年半後の1997年7月4日に登録されている。
2022年3月現在は、スクウェア・エニックスが2017年5月1日に更新しており、存続期限は2027年7月4日まで。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-1995-121039/145200051B0173BDAEC3E9E9216C7BF06ECA38D5F25286251CBF7CD120368F0A/40/ja
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筆者:halki
監修:ハリー堀田

記事制作にあたり、かべ新聞、虎の大穴マガジン等の記事等

一部引用、参考にしています。
今回協力して頂いたスクウェアが大好きな
halki氏、市長queen氏、スベアキ氏に感謝します。
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