佐高信さんと渡邊美樹ワタミ会長 | 一撃筆殺仕事人:佐高信先生追っかけブログ

佐高信さんと渡邊美樹ワタミ会長

このことは、我がameba盟友の小野哲さんが先に話題にされ 、とても悔しいのですが、、、。少し以前のサンデー毎日「政経外科559回」の記事を、転載させていただきます。


政経外科/反対派を排除する<役害>の実例 (サンデー毎日9月19日号 2010年09月07日発売 政経外科559回)


役人や役所の害を私は"役害"と呼んでいるが、役人ならぬ厄人の思い上がりがこれほどまでにひどいのかという実例が、高杉良の新作「新・青年社長」上・下(角川書店)に出てくる。
この作品は居酒屋チェーンの和民の創業者、渡邊美樹を主人公とした実名小説だが、自民党政権時代の話でも、残念ながら、政治主導が見せかけだけになっている現在の菅内閣においても変わっていないだろう。
 2004年秋、内閣府に設けられた、規制改革・民間開放推進会議の教育・研究ワーキンググループ(作業部会)に渡邊は出席を求められた。郁分館学園理事長として、その委員に内定していたからである。
 作業部会は財界人や大学教授など7人で構成されていたが、その初会合で渡邊は次のように発言した。
「株式会社の学校経営には反対です。株式会社の社長は株主の満足を最優先せざるを得ません。改革会議が株式会社とともに挙げているNPOは利益を配分する必要がないので、NPOによる学校経営には賛成です。学校は利益が出た場合にはすべて生徒に還元すべきです。」
 渡邊以外の委員は全て賛成で、その一人の政策研究大学院大学教授の福井秀夫は、
 「株式会社ワタミが学校を経営して問題がありますか」
と繰り返し質問したという。
 それに対して渡邊は、
「郁分館の運営は個人的にしています。」
と答えた。そんな渡邊に手を焼いたか、推進会議議長の河野栄が訪ねてきて、
「反対の考えを改めてもらえませんか」
と迫った。渡邊は
「改められません。株式会社の学校経営は不適当です」
と答える。
「あなたの意見、見解は委員の仲でも問題視され、事務局も当惑しています。繰り返しますが、考えを改めるつもりはありませんか」
と再び尋ねられても、渡邊は
「そんなつもりは毛頭ありません」
と返した。


審議会は役人の傀儡ばかりに


 10日ほど後にまたきた河野は
「考えを変えるか、就任を辞退するかいずれかを選んでください」
 と言う。あまりに無茶な話である。
 渡邊は委員就任を辞退した。
 同年11月16日での「読売新聞」夕刊に、渡邊の怒りの談話が掲載されている。
「就任を頼んでおいて、意見を変えろと迫るのはあまりにも失礼な話で驚きました。推進会議の議論の進め方は乱暴すぎます」
 役人ならぬ厄人の面目躍如。そこで河野はこんな弁明をしている。
「結果的に失礼なこととなったが、年内に答申をまとめるには、基本的な意見の違う方はふさわしくなかった。規制改革は元々省庁の反対が強いので、あえて委員に反対派を入れる必要はないと考えている」
 私は役人にふさわしくないのは河野のほうだと思う。しかし、彼らは露ほどにもそうは考えないのだろう。
 千葉大教授の新藤宗幸がこうコメントしている。
「審議会は決定機関ではなく、多様な意見を勘案して基本的方向を出すことが役割。事前に特定の意見が排除されるのはおかしい。官僚は、審議会の結論を社会的合意のように見せたいので、常に委員を仕切ろうとするが、このようにはっきりと舞台裏が見えるのは珍しい」
 福井秀夫をはじめとした賛成派の委員を役人の傀儡というのだろう。


これはもちろん2004年の小泉内閣時代の6年前のとても古い話題です。現在の菅政権が消費税10%を是認したことなどで、官僚主導政権と言われるようになっていますが、しかしこのような古い話題を問題にするのは唐突であり、かつ違和感を読者の皆さんは抱かれるのではないでしょうか。


>この作品は居酒屋チェーンの和民の創業者、渡邊美樹を主人公とした実名小説だが、自民党政権時代の話でも、残念ながら、政治主導が見せかけだけになっている現在の菅内閣においても変わっていないだろう


この文章だけを見るならば何が「変わっていない」のか不明です。「役人の害」なのか「役人の思い上がり」なのかはわかりませんがきちんと主語を書いて欲しいものです。そして渡邊氏に「解任」を言い渡したという河野栄氏、彼は「役人」というだけで、総務相の高官で元消防庁長官だということをきちんと書いてありません。ここのところは不親切でしょう。


実は今回の連載の大部分はほとんど今回発売された高杉良さんの「新・青年社長(下巻)」196p~197pのまるうつし全引用なのです。


以前の規制改革・民間開放推進会議はその後に規制改革会議を経て現在は行政刷新会議、規制・制度改革に関する分科会ですがその審議の模様はインターネット上で発表されています。(2004年10月の渡邊氏らの発表)


http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/old/minutes/wg/2004/1001_3/interview.pdf


さて、規制改革・民間開放推進会議の教育・研究ワーキンググループにおける実際の会話のなかから福井委員と渡邊さんの会話を中心に見てみましょう。


福井専門委員:給与体系は変えたのか?
渡邉社長:3 年間の猶予を設けて年功序列はやめることにしている。解雇ルールは法律に則っており、変えていない。
福井専門委員:成果主義的な教員の労務管理という意味では、予備校と同じか?


渡邉社長:学校の場合は、教員という人格全体の評価としての給与であると考えている。予備校とは違う。給料体系は高くは設定しない。高い給料でいい人材が来るとは思っていない。高い志にいい人材が来る。高い志を持った者が結果を出し、そして高い給料を出してはじめて人材が定着すると考えている。


草刈委員:日本の教育は文部科学省を筆頭とした管理システムであり、バウチャーという畑はまだ全く耕されていないが、これをどうやって日本に取り入れていけばいいとお考えであるのか伺いたい。


渡邉社長:日本においてバウチャー制度に移行するまでには、長い道のりが必要だと思っている。日本の教育には「経営」がない。補助金によって「経営」がなくても運営できる体制になっている。したがって、まず経営の観点を教育に持ち込むことが必要。ソフトランディングは困難。現状から見ると、バウチャー導入により、まず相当に学校が潰れることを想定しなければならないと思う。そして失業した人に対応していく、という相当な覚悟がないと出来ないと思っている。


福井専門委員:郁文館学園の改革に対する保護者、生徒の反応は?


渡邉社長:おかげさまで賛同は得られている。保護者、生徒の賛同が一番大事であると思う。情報公開も徹底している。


福井専門委員:入試の難易度は上がっているのか?


渡邉社長:上がってきていると思う。人気度が上がってきているということだと思う。


草刈委員:偏差値だけの教育は問題では? 都立校改革で当該合格者を競うような目標を掲げているが、非常に腹が立った。東大合格実績がよいことと、よい学校であることとは関係がない。


渡邉社長:偏差値教育には違和感はあるが、現状考えると、父兄の方々に学校がどう変わっていくかを示すためには、偏差値は学校を変える一つの指標として考えられるものである。


福井専門委員:株式会社ワタミが学校経営しては問題か? 学校経営に株式会社が参入することについてどう思うか?


渡邉社長:例えば、努力してもダメな先生は企業経営者である自分は切るが、学校経営者である自分としては、切りたくはない。そういう違いが学校と企業とではある。


福井専門委員:株式会社は金融の手段であるので、借入のある学校法人は金融的機能で考えれば、株式会社と変わるものではない。株式会社と学校法人で質的な差があるのか?


渡邉社長:まず、設立において寄附行為であるかどうかの違いが大きいと思う。寄附することによって回収することができなくなる財産となるので、そこに対して国から補助金をもらうのは正当だと思う。株式会社の場合は、出資財産の価値を経営によって高める構造となっているので、株式会社が補助金をもらうと、補助金によって自分達の資産の価値を高める結果となる。そこに違和感がある。株式会社は投下資本を回収しなければならない。一方、学校法人は寄附だから投下資本を回収するために利益を上げる必要がない。学校法人であれば、利益は子供達に分配することができるが、株式会社の場合は利益は株主に分配しなければならない。


福井専門委員:借入と株式発行は同じではないか? 間接金融と直接金融の違いだけであると思う。


渡邉社長:資金調達は同じでも、利益の分配が違う。株式会社は株主への分配を常に考えざるを得ない。一方、学校法人は利益を出さないという判断ができる。生徒と教師に全てを還元してしまうという判断をすることができる。


福井専門委員:生徒に利益を還元しないで、自分たちにだけに還元するという学校法人の理事長がいたらもっと危ないのではないか?


草刈委員:株式会社なら情報公開があってより透明性があるのではないか?


渡邉社長:だからバウチャーがよい。


白石主査:株主がいても株主優先で教育をないがしろにしては、社会的に許されない、と特区で認められた株式会社学校の経営者は言っている。


渡邉社長:補助金をもらわずに、かつ利益を分配しないことが株式会社の学校参入の条件。そうであれば、株式会社の学校経営はどんどんやるべきだと思っている。株式会社の学校については、あり得るとすれば、補助金をもらわず、授業料等は相当高くなるのではないかいか。なお、株式会社の学校にはバウチャーを使うべきではない。バウチャーは補助金である。


福井専門委員:バウチャーが使えないのはおかしい。バウチャーの基本的な考え方はイコールフッティングのための道具ということ。経営主体の違いでバウチャーが使える・使えないというのは、本来のバウチャーの構想とは違うのではないか?バウチャーというのは最低限の補助。それを超える分については、自分の責任で選択肢を多様化し、より豊かな選択を追求したいという人に対して「足し前分」でいい、というのがバウチャーの基本的な性格。株式会社を選択する人に対して、「足し前分」ではなく、全てを出させるのは不平等ではないか?


渡邉社長:バウチャーは補助金である。株式会社がバウチャーを受ける場合、補助金で利益分配することになる。利益がすべて教育外に使われるとは言わないが、補助金が株主に対する分配の原資になることは確かだ。


福井専門委員:顧客満足度の問題で、学校も外食産業も同じではないか?外食産業が株主に利益を還元しているから、消費者の満足度を低めていることにはならない。株式も融資も金融の手段でしかなく、問題ではない。また、学校法人は情報開示がない。その点で株式会社の方がより情報公開があって透明性がある。


渡邉社長:だからこそバウチャー制度で競争原理を働かせるべきだと思っている。


草刈委員:バウチャー制度が確立したとすると、競争に勝った学校は、教師の給与を上げてもいいし、逆に言うと、株式会社の学校であれば株主にも還元してあげてもいいと思う。思想としては大きな違いはない。


渡邉社長:利益が出たら、それは国からの補助金がベースであり、更なる利益は国の教育のために使うべきだと思う。学校法人の不透明な部分についても情報公開を進め、バウチャーで競争させていくことが大事。


福井専門委員:学校法人という特殊な形態を残し、それをバウチャーで補正して株式会社を排除するというのは、非常に分かりにくいのではないか?


ここで考えていただきたいのは、確かに渡邊美樹ワタミ会長は同会議の委員として、株式会社の学校経営については反対(条件付賛成?)の立場でありましたが、新自由主義的な制度といわれる、教育バウチャー制度には大賛成、「もうバウチャーしかない」という意見の方だということです。


議論も「株式会社の学校経営是非」というよりもバウチャー制度を推し進めることが主な議題の方向となっています。
そして、佐高氏の「政経外科」にあったように「株式会社ワタミが学校を経営して問題がありますか」とは一度、福井委員は問います、確かにその後、株式会社の学校経営が可ではないかと執拗に質問していますがワタミの名は一度しか出していませんね。これ以外にも会合はあったかもしれませんのでなんとも言えはしませんが。


教育バウチャーというのはシカゴ学派経済学者のミルトン・フリードマンが発案した、子供を持つ家庭に教育費に関するクーポン券を配付して、保護者や子供が自由に学校を選択しそのクーポンを自分の選択した学校に渡し、学校は集まったクーポン券に応じて予算の配分を受け取ることができるといった一種の格差是正政策です。

日経ビジネスの連載でも渡邊さんは教育バウチャーについて熱く語っています。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20070703/128975/


時をおかずして、あの高速道路無料論で有名な山崎養世さんが反対論の論陣を同じ日経ビジネスサイトで張っておられます。


山崎養世さんの教育バウチャー批判論
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071119/141038/?P=2


いろいろな意見はあったでしょうがこの時は安倍内閣の退陣などの事実もあってこのバウチャー制度が実際に取り入れられることはありませんでした。

ここで前にも言及したのですが、この教育バウチャー制度は極めて新自由主義的な制度で佐高さんがもう一人の兄とも慕う内橋克人さんも声を荒げて反対しておられました。


内橋氏の言


「教育バウチャー制」とは、すでに触れましたようにもともとフリードマンが『選択の自由』などで提言した公教育の場に市場原理を導入するためのシステムです。フリードマンは、これまで学校ごとに与えられていた助成金を直接家庭にクーポンとして導入し、子どもの側が学校を自由に選ぶようにすれば、学校間競争が始まり、学校は効率化され、子どもたちも「選択の自由が得られる」というたいました。しかし、実際にこのバウチャー制を導入したアメリカの自治体や、イギリスなどでは、結局、貧困地区の子どもたちはその選択権を行使することさえできないという結果になっています。そもそも、裕福な地区への移動自体が貧困層にとって難しいことがネックになったのです。結果として起こったことは、これまでもあった学校格差がもっと激しいかたちであらわれ、階層化はよりいっそうすす進みました。



 いずれにせよ、「教育」の分野に市場主義を導入し、「国家」としてのしめつけをつよくする。安倍政権はブッシュ政権と同様にネオリベラリズム正統の政権なのです。
 イラクでの米兵の死者は2500人を超えました。イラクで死んでいった若者の多くは、製造業が死に絶え、荒廃し、仕事もない地方の学歴の低い若者たちです。海兵隊は、そうした仕事のない街に狙いをさだめてリクルーターを派遣します。
 仕事のない若者にとって、給料も支払われ、奨学金を得るチャンスもあり、大学に進学できる機会もある軍隊は、階層社会をはいのぼる唯一の梯子です。
 そのチャンスに賭けて、多くの若者が戦場にでかけ死んでいっているのです。


http://web.mac.com/hirosis/iWeb/Site/Watching/ABEC2642-5D89-429E-A773-D7D086D2AABC.html


佐高さんはもう一人の兄貴分高杉良さんが新著を出したということでおっとり刀でそのパブリシティを行なわれたのでしょう。それ自体はすばらしい義兄弟愛です。

先にも書いたのですが、「佐高さんは情のある人です、鈴木邦男さん」 渡邊さんの会社ワタミは最近いろいろ言われることが多いです。「新・青年社長」のなかでも小林節氏をつかって郁分館夢学園の労働組合を潰すという話が出てきます。このワタミの創業者としての渡邊さんの伝説的な功績には多くの人が肯んずところは否定は出来ません。しかし創業の後の守成においての問題を全く無視し、かつそのきわめて新自由主義的なところにも目をつぶる。これは経済評論家としてはいかがなものでしょうか。


ワタミのもう一つの姿に関してはこのブログが詳しいようです。

http://blogs.yahoo.co.jp/susume_hirasawa