英語の迷い道(その150)-翻訳のジレンマ-『不実な美女か貞淑な醜女か』 | 流離の翻訳者 果てしなき旅路

流離の翻訳者 果てしなき旅路

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴16年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

ここ二日雨となった。先日「衣替え」をしたばかりだが気候は少し肌寒くなった。まだまだ半袖というわけにはいかない。

 

 

翻訳会社に勤務した頃、ベテランの和訳専門の女性翻訳者がいた。若かりし頃は東京・丸の内でBG(ビジネス・ガール=OL)をしていたという。

 

彼女は、和訳であれば契約書などの法務文書から技術的な文書まで何でもこなした。パソコンは使えなかったがワープロを巧みに使って実にスピーディに訳文を仕上げた。

 

彼女がよく言っていたのが「私の訳文はあくまで一次翻訳。直訳なのでしっかりチェックしてください。」ということだった。確かにその通りだった。

 

ただ、直訳ではあれ、とにかく早く一次翻訳が上ってくるので随分と助かった。まあ、確かにチェックには時間が掛かったが……。

 

 

以前、紹介した東北大の英作文問題の出典「歴史をかえた誤訳」(鳥飼玖美子著・新潮文庫)を読んでみた。

 

この本、通訳のみならず翻訳についても、かなり蘊蓄の深いことが書いてありなかなか面白い

 

翻訳のジレンマを女性に喩えた言葉『不実な美女か貞淑な醜女か』というものがある。昔からある表現らしい。

 

「原文という夫」に忠実な「訳という名の妻」はえてして見た目は醜く、誰が見ても美しい妻にかぎって夫に忠実とは言いがたい、という意味である。なかなか、「言い得て妙」な言葉だと思う。