Vol.74【私にとっての黒澤明の映画①】の続きです。前回は、私が高校生の時に初めて見た黒澤明監督(以下「黒澤監督」と言います)の作品「デルス・ウザーラ」などについてお話ししました。

 Vol.44【映画 名画座~並木座、文芸地下・・・】でもお話ししましたが、私は、大学生の頃、名画座でよく日本映画を見ていました。名画座というのは、すでに公開が終わった映画を2本立てか3本立てにして安い値段で見せてくれる映画館のことで、東京では都内各地にありました。

 また、その頃(1970年代)は、「ぴあ」という月刊情報誌があって、この雑誌は、いろいろな映画・演劇・コンサート・美術展などが、いつ、どこで開催されるかを詳しく伝えていて、私はこの雑誌を頼りに都内各所の名画座で日本映画を見ていました。

 週2回ぐらいのペースで、いろいろな日本映画を見ていましたが、その中に黒澤監督の「酔いどれ天使」(1948年:公開年次→以下同じ)、「野良犬」(1949年)、「生きる」(1952年)がありました。日本映画を見始めて早い時期にこの3つの作品に出会えたことは、本当に幸せだったと思います。この3つの作品については、後日、独立した稿でお話ししたいと思っています。

 名画座の小さなスクリーンに映し出される傷の入ったモノクロの画面であることなど関係なく、黒澤監督の映画の、緻密なドラマ展開、圧倒的な映像の迫力、出演者の鬼気迫る演技などに引き込まれ、私は黒澤映画の大ファンになりました。

 「羅生門」でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞して以降の「七人の侍」、「蜘蛛巣城」、「隠し砦の三悪人」、「悪い奴ほどよく眠る」、「用心棒」、「天国と地獄」などは、名画座でもよく上映されていましたが、黒澤監督の初期の作品はなかなか名画座でも見ることができませんでした。

 なんとか黒澤監督の映画をもっと見たいと思い、前述の「ぴあ」の映画欄を探したところ、東京都中央区に国立の「フィルムセンター」という施設があることが分かりました。この施設は数多くの古い日本映画のフィルムを収蔵しており、それらの作品を一般に公開していました。この施設は現在も同じ場所にありますが、名称が変更されていて現在は「国立映画アーカイブ」というそうです。

 私は、「フィルムセンター」で、黒澤監督の第1回監督作品「姿三四郎」(1943年)、太平洋戦争のさなかに製作された「虎の尾を踏む男達」(1945年)、戦後まもなくに制作された「素晴らしき日曜日」(1947年)などを見ることができました。いずれの作品も、予算や時期的な制約の中で作られたと思うのですが、一切の妥協はなく素晴らしい作品であると今でも思っています。

 私は、大学に入ってから自分を見つめる時間ができるまで、人生とは何か、人はどう生きるべきかなどのことについて、深く考えたことがありませんでした(幼かったんですね)。

 黒澤監督の数々の映画は、そんな私の頭を殴りつけて眼を開かせてくれた映画で、今でも心の中で輝いています。

 

 

 

 

 

The Men Who Tread on the Tiger's Tail | Voulez-vous couchez avec moi,ce soir? (ameblo.jp)

(ある方のブログを引用させていただきました。ありがとうございました)

 

 ツイッターに画像を投稿しました(2023.10.8)。

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