冒頭の写真をとくとご覧あれ。何かが足りないことにお気づきではありませんか?

実はこれ、中央快速線のE233系。車端部にあった所属表記が消されています。

 

国鉄時代は、旅客車には必ず「所属表記」がありました。管理局名を表す漢字1文字と、基地名の電略を表す片仮名2文字。例えば「千マリ」であれば幕張電車区(千葉鉄道管理局)。「大ムコ」であれば向日町運転所(大阪鉄道管理局)。いずれも現在は幕張車両センター、京都総合車両所として、車両基地としては現存しています。

それがJR移行と同時に、多くの旧管理局がJR各社でいう支社局の扱いになったものの、冒頭の漢字一文字は存置されました。勿論組織変更や名称変更などで、頭の漢字が変わることはありましたが、それでも「漢字1文字+片仮名2文字」は維持されてきました。

 

ところが。

 

JR東日本は、最近になってこの所属表記を省略しているようで、写真のように消されたり、新造車としてロールアウトした車両には最初から表記がなかったりします。

 

恐らくですが、このような「所属表記」は国鉄~JRだけの文化だったのでしょう。他の鉄道事業者、特に大手私鉄ではこのような表記をしているところはほとんどありません。例外は東京臨海高速鉄道(TWR)ですが、これは「東臨運輸区」という表記がなされていて、国鉄~JR表記とは異なります。

それではなぜ、このような所属表記が国鉄~JRだけの文化だったのかといえば、昔の「1両単位で客貨車を運用していた」時代の名残ではないかと思います。およそ車両には「検査」の必要がありますので所属区所に戻さなければなりませんが、そのときに所属区所が見てわかるように、このような表記をし始めたのではないかと。

それが後年の固定編成化によって意味合いは薄くなったものの、それでも慣習として維持されてきたものと思われます。

現在ではコンピューターで管理することができますし、所属区所がどこなのかも会社が把握していれば無問題。それに何より、国鉄時代のような超広域運用もなくなったので、車両がどこに行ってしまうか分からなくなることもなくなった。それ故に、わざわざ車両に所属を書いておく必要もなくなったということでしょう。それでJR東日本は、所属表記の消去に舵を切ったものと思われます。

なお、所属表記が消されているのはJR東日本所属車両ばかりではなく、他のJRの車両にも出現しているようです(出展:『鉄道ファン』2024年7月号30頁)。

 

しかし。

 

国鉄時代を知る管理人としては、やはりこのような「国鉄時代の文化」が消えていくことには、寂しさを感じざるを得ません。

また国鉄が遠くなっていくようです。