VSE定期運行終了の報は、メガトン級のインパクトを鉄道趣味界にもたらしました。

では小田急のダイヤ改正は…といえば、そこまでのインパクトこそないものの、東武や京王といい勝負の減量ぶり。これもコロナ禍に伴う乗客の激減に伴う収益激減からすると止むを得ないといえますが、それでもなかなかの「エグさ」でして。

 

2022年3月12日(土) 小田急線のダイヤを変更します (PDFファイル注意)

 

以下引用開始

小田急電鉄株式会社(本社:東京都新宿区 社長:星野 晃司)は、2022年3月12日(土)に小田急線のダイヤを変更いたします。
新たなダイヤは、お客さまの行動変化に伴うご利用動向を踏まえて、現行ダイヤを見直しています。平日の朝方ラッシュ時間帯における、着席ニーズの高まりを捉えた特急ロマンスカーの増発、小田原から相模大野間を運行する列車の減便等のほか、日中、夕夜間の運転本数見直し、藤沢駅を中心とした江ノ島線の運行形態変更などを実施いたします。
鉄道事業を取り巻く環境は大きく変化しており、ご利用動向にあわせた運転本数の見直し等の取り組みについて、ご利用の皆さまのご理解をお願い申しあげます
(引用ここまで。赤字は管理人)

 

小田急電鉄大本営より)

 

序文を見て思ったことは、「顧客の行動変化に伴う利用動向」を正面から掲げていること(上記引用のうち赤字で示した部分)、そしてそれがいかなる意味があるのかということ。これまでにはなかったことですが、以前の「ムーンライトながら」廃止の際のJR東日本・JR東海両社のプレスリリースあたりから、このような表現が見られるようになりました。これが何を意味するのか。企業としての体力が弱まっている中で、なりふり構っていられないということなのか、あるいは「コロナ禍」を大義名分として「本当は止めたかったがなかなか踏ん切りがつかなかったこと」を止めるという意味なのか。恐らくその両方でしょう。

 

詳細はぜひとも上記リンク先をクリックしてご覧いただきたいのですが、以下は管理人が見た気になる点を箇条書きにしております。

 

【特急ロマンスカー】

① 朝の「モーニングウェイ」増便

② 「はこね」を平日45本/日(上下合計。以下同じ)から30本/日、土休日51本/日から39本/日へ減便

③ 「メトロホームウェイ」の時間帯建て替え

④ 新宿駅発22時以降の「ホームウェイ」削減

 

【一般列車】

⑤ 平日・土休日とも列車の設定本数を見直し

⑥ 急行の経堂停車を終日実施に変更

⑦ 多摩線直通の快速急行を急行に格下げ、江ノ島線方面への急行を快速急行に格上げ

⑧ 江ノ島線列車について、一部を除き藤沢で系統分断

⑨ 千代田線との直通列車を準急に変更

⑩ 初電・終電の時刻は大きな変更なし

 

順次見てまいりましょう。まずは特急ロマンスカーから。

朝の「モーニングウェイ」増便は(①)、朝間に料金収入を得られる列車を増発して増収につなげようという考慮でしょう。

それよりもショッキングなのは「はこね」の大幅減便です(②)。これは観光利用の減少という実態に即したものと思われますが、東武が「リバティ」こと500系を活用し、日光・鬼怒川方面と伊勢崎線方面とを問わず、3連と編成単位を小さくしても頻度を維持しているのに対し、小田急は東武と逆に本数を減らす方向となりました。小田急でもEXEやMSEは分割運用が可能なので、その気になれば東武と同じ方向をとることもできなくはないのですが、いかようにも併結できる「リバティ」とは異なり、EXEもMSEも連結の位置・方向が決まっていますので、その結果として生ずる車両運用の複雑化を嫌ったのかもしれません。

「メトロホームウェイ」の時間帯建て替えは(③)、日比谷線から東武に直通する「THライナー」と同様、初便の時刻を繰り上げて遅い時間の列車の運転を取り止めることで、夜間の利用の減少に対応したものとなっています。これは「ホームウェイ」の新宿駅発22時以降の列車の削減とも通じるものです(④)。

こうなると、ロマンスカー自体の所要編成数が減少することにもなりますので、VSEが定期運用を外れるとしても、VSEの代替車両が導入されることはないものと思われます。つまりロマンスカーの編成数の総数は減少することになるのでしょう。

 

「はこね」大幅減便はショック

 

以上は特急ロマンスカーですが、一般列車に関しても、平日・土休日とも列車の設定本数を見直しをアナウンスするなど(⑤)、「減量ダイヤ改正」であることは明確に打ち出されています。それでも利便性の向上には意が用いられており、急行の経堂停車終日実施(⑥)、多摩線直通列車と江ノ島線直通列車との間での種別の振り替え(⑦)などは、分かりやすさを追求することと、利用実態に即した措置であるといえます。初電・終電の時刻には大幅な変更がないこと(⑩)も好印象です。

他方で、効率化を図った結果といえるのが、江ノ島線列車の藤沢での系統分断(⑧)。つまり、現在新宿から直通している快速急行や急行が片瀬江ノ島まで行くことがなくなり、藤沢-片瀬江ノ島間が折り返し運転となるわけですが、これは藤沢駅がスイッチバックする構造であることと、配線の都合により運転取り扱いを複雑化させないため(10連が1番線にしか入れられない)の措置と思われます。本当は藤沢駅のスイッチバックを解消するのが一番なのでしょうが、用地その他の問題で非現実的ですから、このような措置は止むを得ないものといえます。

 

快速急行は藤沢折返しになるなど、一般列車も変わる

 

最後に一般列車でも、こちらは東京メトロ千代田線との直通列車について。

現在、主に夕方以降には千代田線から急行として直通していますが、これが全て準急になるということです(⑨)。

 

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JR車による急行がなくなる

 

↑の写真は多摩線に直通していたときのものですが(現在ではJR車は多摩線には入線しない)、現在は本厚木・伊勢原まで急行として達しています。

これら急行が全て準急になるということであれば、ことによると、本厚木・伊勢原までは達しなくなる可能性もありますが、その点に対しては今のところ明確に示されてはいません。この点は、続報を待ちたいところです。


小田急では、VSEの定期運行終了のニュースのインパクトにかき消されていますが、特急ロマンスカーも一般列車も変更点の多い改正となりそうです。

 

【おことわり】

当記事で使用している写真は、全て以前の記事からの転載です。