その10(№5473.)から続く

登場当初から、485系や183系といった完全な特急型車両に比べると、「格落ち」の感が否めなかった185系。
その「格落ち」感の最たるものは内装でした。
そこで、185系も登場から13~18年を経過した時点で、順次リニューアルが施されることになります。
リニューアルの進捗は、新前橋の車の方が先でした。以下、新前橋(新前橋車)と田町(田町車)それぞれに分けて取り上げます。

【新前橋車のリニューアル】
こちらのリニューアルは、185-200の新造投入から13年後、平成7(1995)年度から順次着手されました。
新前橋車の方がリニューアルの着手が早かったのは、表向きには、翌年に群馬県を中心に展開する観光デスティネーションキャンペーンの開催を控えていたからだとされています。勿論それも大きな理由でしょうが、実際には田町車との「立場」の違いがあったのではないかと思われます。田町車の場合は、185系使用列車よりも格上となるフラッグシップとして251系「スーパービュー踊り子」が存在したのに対し、新前橋車の場合は185系使用列車自体がフラッグシップとしての役割を担っていたため、テコ入れの緊急性は新前橋車>田町車だったのではないかと。
具体的な内容は以下のとおり。

① 腰掛をフリーストップリクライニングシートに取り換え。
② 腰掛の取り換えに伴い、壁面窓下に備え付けてあったテーブル、灰皿、肘掛けは撤去。
③ 車内の化粧板と床の敷物を取り換え。
④ (途中から追加されたメニュー)デッキと客室を仕切る自動扉を、マット式からセンサー式へと変更。
⑤ 外板塗色を白地に黄色・グレー・赤のブロックパターンを側面向かって左側に配したものに変更(これは白が雪、黄色・グレー・赤は上州三山をイメージしたものとされる)、反対側の側面向かって右側には「Express185」のロゴを窓下に配する。

このように、新前橋車のリニューアルは、普通車をメインとしたメニューだったのですが、追ってグリーン車にもリニューアルを施すことになりました。工事は事実上並行して進められましたが、編成単位でみると普通車の工事が先行し、その後1か月ないし半年後くらいにグリーン車についても工事を実施するという手順になっていました。
具体的な内容は以下のとおり。

① 腰掛は取り換えないが、形状をバケットタイプに変更する改造を施してホールド感を向上。
② 背面テーブルを新設、それと引き換えに肘掛けから引き出すテーブルを撤去。
③ トイレを和式から洋式に改める。

グリーン車は普通車とは異なり、化粧板の変更などは行わなかったため、こちらは登場当時の意匠を色濃く残すものとなりました。
ともあれ、新前橋の185系は、リニューアルによって、普通車・グリーン車とも居住性、特に普通車のそれが格段に向上し、特急列車としてふさわしいレベルに向上しています。
ただし静粛性・遮音性に関しては、リニューアルで固定窓化改造が見送られ、開閉式のまま存置されたこともあって以前と変わらず、この点だけは、他の特急型車両と比べて一歩譲る部分として残ってしまいました。開閉式2連窓を固定化して間の柱を取り払えば、より静粛性・遮音性が向上し、眺望も改善されたと思われますが、そこまで手間と費用をかけるのは憚られたのでしょうか。
新前橋車のリニューアルは、平成8(1996)年11月ころに終了し、同時に白地に緑の横帯という、新前橋車のオリジナルカラーが消滅しています。

【田町車のリニューアル】
新前橋車のリニューアルが平成8(1996)年度のうちに終了したのに対し、田町車のリニューアルの着手は遅れ、平成11(1999)年度からとなりました。平成11年度は、185-0が投入されてから18年となります。流石に新造投入後18年となれば、何らかのリニューアルが必要となる車齢といえます。
ただしグリーン車の改良についてだけは、平成9(1997)年度から翌年度と、本格的なリニューアルの着手に先んじて行われていました。新前橋車のグリーン車が腰掛を取り換えずに座面形状を改良するものだったのに対し、田町車のグリーン車は腰掛そのものを取り換えた点が異なっていました。
それにしても、普通車よりもグリーン車の改良が先んじて行われること自体に、東海道線東京口、あるいは「踊り子」の特殊性を見るような気がします。グリーン車の改良が先行するということは、それだけグリーン車、優等車の需要が大きいことでもありますから。

そしていよいよ、平成11年度から田町車についてもリニューアルが行われるわけですが、具体的な内容は、普通車に関して言えば新前橋車とほぼ同様となっています。こちらも、なぜ固定窓化改造を施して静粛性・遮音性の向上を目指さなかったのかと疑問に思うのですが、やはりコストと手間の問題があったのでしょう。
田町車もリニューアルに伴って、外板塗色についても新前橋車同様に変更されました。田町車のカラーリングは、白地の車体にブロックパターンを側面向かって左側に配するのこそ同じですが、色は新前橋車とは異なり、湘南電車をイメージした濃緑と黄柑色(オレンジ色)とされ、中央の濃緑を黄柑色で挟む形態となりました。また、新前橋車に描かれた「Express185」のロゴは、田町車には描かれませんでした。なお、この濃緑と黄柑色は、先頭車の窓下部分にも配置されましたが、こちらは、濃緑と黄柑色との間に細い白帯を入れるという芸の細かさでした。
田町車のリニューアルは、平成14(2002)年度までに完了しています。リニューアル完了に伴い外板塗色の変更も完了しましたから、この時点、つまり平成14年度で185-0のオリジナルカラーが一旦消滅したことになります。

…とこのように、新前橋車・田町車ともにリニューアルが行われ、(静粛性・遮音性以外は)185系は、特急列車としてふさわしい水準の居住性となりました。

次回は、リニューアルの前後に登場した、185系の「変わり種カラー列伝」を取り上げます。

その12(№5489.)に続く