一昨日、思わぬ形で大手私鉄各社がメディアを賑わせることになりました。

 

EU、企業名挙げ私鉄の市場開放要求…日本反発

 

日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉を巡り、EUが鉄道事業の協議で日本の私鉄の市場開放を求めていることが分かった。

これまでにJR東日本、東海、西日本の3社が市場開放を約束しており、日本側は更なる要求に反発している。ブリュッセルで26日に始まった交渉会合で打開策を探る。

鉄道協議を含め、政府などが物品を買い入れたり公共事業を発注したりする「政府調達」分野は関税協議に次ぐ難関だ。EUの経済政策を仕切るカタイネン欧州委員会副委員長は「最終段階に入る用意がある」と述べており、年内の大筋合意に向けて双方が妥協点を見いだせるか注目される。

日本の交渉筋によると、EUが企業名を例示し、私鉄事業の規制緩和を迫ってきたという。近鉄や阪急電鉄などが挙がった模様だ。

 

YOMIURI ONLINEより)

 

槍玉に挙がったのがこの2私鉄ですか…。

 

 

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関西私鉄が槍玉に挙がったのも、車両メーカーや電子機器メーカーとの付き合いを大事にしているという、特有の「体質」があるのが理由ではないかと思われます。例えば阪急は系列のアルナ工機が車両製造から撤退した後は日立に車両を発注し、電機品は京都線系と神戸・宝塚線系で異なるメーカーのものを搭載していますし、近鉄は系列の車両メーカーを持っています(近畿車両)し。

 

以前…というかそう古くない時代に、外国製の電機品を用いた車両は登場しています。それが、京急2100形やJR東日本のE501系で、これらは独シーメンス(ジーメンスとも)の電機品を採用していました。

独シーメンス製電機品の採用は、京急の新1000形の一部にもありました。

これらの車両は、発進・停止時に独特な音階を奏で、鉄道趣味界では「ドレミファインバータ」などといわれて親しまれていました。

 

 

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これらの車両が独シーメンスの電機品を採用したものの、現在ではJR東日本のE501系は電機品の換装で国産品に取り換えられており、京急でも2100形・新1000形の電機品の換装が進められ、「ドレミファインバータ」は風前の灯の状態にあります。

なぜそうなったかといえば、これら電機品が国産品とは仕様が異なり、特に保守面において不利な面があったから。聞くところによると、独シーメンスとのライセンス契約の関係で、鉄道事業者が勝手に修理することができなかったそうですが、もしそれが事実なら、日本国内の過酷な車両運用には到底対応しきれません。

実はこの「修理に難渋する」という問題は乗用車(外車)、特に欧州車にもあって、部品が払底しているなどの理由で、国産車よりも修理に時間がかかるということです。それと同じことが、鉄道車両の場合も起きていたわけです。

余談をいえば、欧州車の中でもメルセデスだけは、群を抜いた頑丈さにより故障が発生する確率が低くなっているんだそうです。

 

そのような次第で、海外産の電機品を採用することは、日本の鉄道事業者が躊躇せざるを得ないのも理解できます。

まして日本の場合、世界的にも例を見ない大混雑と過酷な車両運用など、車両及び電機品には過大な負荷がかかります。果たしてそのような車両を製造することができるのか、できるとしてアフターサービスができるのかには、正直言って疑問を持たざるを得ません。

 

かつて独マイバッハ製のエンジン及び変速機構を搭載して、華々しく登場したDD54形というディーゼル機関車がありましたが、実働10年程度で退役を余儀なくされました。その理由は、当時の国鉄の労使対立などに起因し、精密すぎる変速機構が当時の国鉄検修陣には使いこなせなかったこともありますが、最大の理由はアフターサービスに難があったことです。ライセンス契約の関係上、勝手な修理が罷り成らず、そのために稼働率が低下したことです。

現在のJR各社も含めた日本の鉄道事業者が、外国製の車両や機器を採用することに及び腰なのは、やはりこの時のトラウマがあることは否めない事実でありましょう。勿論、JR各社は一応門戸を開いてはいますが…。

 

※ 当記事で使用している写真は、全て以前の記事からの転載です。