ふぁんたじー⑦ | kei'

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日々のこと

慢性satoshic

なんだかんだ 公私?ともにいろいろ心乱れて・・・・

そういう時って 妄想できないのよね

どちらかというと 心ここにあらず 

勢いから遅れると よくわからなくなっちゃう

まぁ 途中でやめるのも 中途半端で次に(まだあるのか?)行けないので

終わりまで ボチボチ もっていきます


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kei'

『もう一回 やる?』

『ばか~』


『ねぇ 私たち それどころじゃないと思うけど・・・』

『そ~だぁ たいへんだ』


現実に戻ってしまうと あまりにも想像しがたい状況

あの時間まで戻らなくては


一体 今日はいつなんだろう

『きょう いつだっけ』

『えっ きょうって?』

『画材屋の・・・』

『8月26日かな』

『何年なんだぁ~?』


『ここの・・・ここでの日付はいつなの?』

『分かんねぇよ・・・』

『画材屋の塔屋が見えていたっていつだ・・・』


『ところで さとしくんっていくつ?』

『え 俺  11月で25だよ』

『ともこは?』


『うふ ともこ  って 照れる  ひとつ下よ』

『うん ちょっと照れた』


下のお店に降りてみると

店主が美味しいアイスコーヒーを出しながら


『私の役目は終わったようですね 良かった良かった』

『さぁ 店じまいをしますから・・・』


『えっ 俺たちどうすれば いいの』

『元に戻るのにはどうしたら いいんでしょうか』

『それと今日は何日ですか』



店主は笑っているだけで何も答えてはくれない

追い出されるように店の外に出て


『どうしよう』『とりあえず 画材屋に行ってみよう』

『あっ 今 TV 沖縄海洋博に誰かが行ったってやっていた・・・』

『ナニそれ?』

『あー1995年だ きょう 終戦50年目の年・・・』

『俺 事務所入っているなぁー ウフ』


『なにか なにか 絶対意味があるはず・・・えっ・・・だって中学生?』

『うん? タレント? 誰?』


『売れてないんだね 俺』

『テレビ見ないし・・・ごめん』



表通りではなく 杏雲堂の裏手から ここは昔から変わってない

戦前から建っている古い病院  空調の配管が這っている


ぐいッと腕を引かれる

『あっ・・・』

『ともこ がまんできない・・・』

『・・・・・・いや・・・さとしくん・・こわい』

つよく 抱きすくめられる

『したい・・したぁ~い・・したい』

『ばか・・・絶対 ダメ』

『う~ん』


『あっ あー わかった!! 急いで』

『なに なに?』

『いいから 急ぐの 今日が終わらないうちに・・・・』


あの小引き出しのなかの誓詞 日付が昭和11年2月26日

2・26事件の日 明日から60年還暦のカウントダウンが始まる


『戻れなくなる 永久に 急いで』 

『もう 閉まってるよ~』

『いいから 急いで』

駿河台下まで 転げるように坂を下る


塔屋が見えてきた・・・

店の入口の明かりは消えているが上の階は明かりがついている

『大丈夫だわ 絵画教室の日が今日でよかった』

ホントは入れない 裏口からこっそり 地下へ



『あるよ』『ホントだ』

きょうの出来事なのに ずうっと以前のことのよう・・・・・・

『入るのよ』

『怖っ~』

さとしの腕をグッとつかみ 観音とびらの中へ

真っ暗

強く抱き合いながら・・・涙が止まらない

どのくらい目を閉じていただろうか



外の空気は あのときとかわらない

1階のレジには青木さんがまだ接客をしている


さとしくんの携帯が鳴る

『ハイ 今戻ります ごめんなさい えっ あっ まぁ』

『マネージャーが呼んでいるから 行くわ』

『あぁ そう お仕事がんばってね』

『うん じゃぁ 』

『バイバイ』


蒸し暑い 夜  上を見上げる 塔屋  見えない

昨日と同じ 夏の日


そうだ さっきの あの日の お店に行ってみよう