なんだかんだ 公私?ともにいろいろ心乱れて・・・・
そういう時って 妄想できないのよね
どちらかというと 心ここにあらず
勢いから遅れると よくわからなくなっちゃう
まぁ 途中でやめるのも 中途半端で次に(まだあるのか?)行けないので
終わりまで ボチボチ もっていきます
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『もう一回 やる?』
『ばか~』
『ねぇ 私たち それどころじゃないと思うけど・・・』
『そ~だぁ たいへんだ』
現実に戻ってしまうと あまりにも想像しがたい状況
あの時間まで戻らなくては
一体 今日はいつなんだろう
『きょう いつだっけ』
『えっ きょうって?』
『画材屋の・・・』
『8月26日かな』
『何年なんだぁ~?』
『ここの・・・ここでの日付はいつなの?』
『分かんねぇよ・・・』
『画材屋の塔屋が見えていたっていつだ・・・』
『ところで さとしくんっていくつ?』
『え 俺 11月で25だよ』
『ともこは?』
『うふ ともこ って 照れる ひとつ下よ』
『うん ちょっと照れた』
下のお店に降りてみると
店主が美味しいアイスコーヒーを出しながら
『私の役目は終わったようですね 良かった良かった』
『さぁ 店じまいをしますから・・・』
『えっ 俺たちどうすれば いいの』
『元に戻るのにはどうしたら いいんでしょうか』
『それと今日は何日ですか』
店主は笑っているだけで何も答えてはくれない
追い出されるように店の外に出て
『どうしよう』『とりあえず 画材屋に行ってみよう』
『あっ 今 TV 沖縄海洋博に誰かが行ったってやっていた・・・』
『ナニそれ?』
『あー1995年だ きょう 終戦50年目の年・・・』
『俺 事務所入っているなぁー ウフ』
『なにか なにか 絶対意味があるはず・・・えっ・・・だって中学生?』
『うん? タレント? 誰?』
『売れてないんだね 俺』
『テレビ見ないし・・・ごめん』
表通りではなく 杏雲堂の裏手から ここは昔から変わってない
戦前から建っている古い病院 空調の配管が這っている
ぐいッと腕を引かれる
『あっ・・・』
『ともこ がまんできない・・・』
『・・・・・・いや・・・さとしくん・・こわい』
つよく 抱きすくめられる
『したい・・したぁ~い・・したい』
『ばか・・・絶対 ダメ』
『う~ん』
『あっ あー わかった!! 急いで』
『なに なに?』
『いいから 急ぐの 今日が終わらないうちに・・・・』
あの小引き出しのなかの誓詞 日付が昭和11年2月26日
2・26事件の日 明日から60年還暦のカウントダウンが始まる
『戻れなくなる 永久に 急いで』
『もう 閉まってるよ~』
『いいから 急いで』
駿河台下まで 転げるように坂を下る
塔屋が見えてきた・・・
店の入口の明かりは消えているが上の階は明かりがついている
『大丈夫だわ 絵画教室の日が今日でよかった』
ホントは入れない 裏口からこっそり 地下へ
『あるよ』『ホントだ』
きょうの出来事なのに ずうっと以前のことのよう・・・・・・
『入るのよ』
『怖っ~』
さとしの腕をグッとつかみ 観音とびらの中へ
真っ暗
強く抱き合いながら・・・涙が止まらない
どのくらい目を閉じていただろうか
外の空気は あのときとかわらない
1階のレジには青木さんがまだ接客をしている
さとしくんの携帯が鳴る
『ハイ 今戻ります ごめんなさい えっ あっ まぁ』
『マネージャーが呼んでいるから 行くわ』
『あぁ そう お仕事がんばってね』
『うん じゃぁ 』
『バイバイ』
蒸し暑い 夜 上を見上げる 塔屋 見えない
昨日と同じ 夏の日
そうだ さっきの あの日の お店に行ってみよう
