明けましてお目でとうございます、流石埜魚水です。この映画ブログを2009年にはじめまして、かれこれ今年でいつの間にか七年目になります。どうしたら読みやすく興味の湧くブログを書けるのか、そしてまた、次回も読みたい或は読書登録したいと魅かれるブログをどうしたら書けるのか、非力ながらいろいろ工夫したいと思っています…。
結局、2014年の邦画観賞の総括として、前回«日本アカデミー賞»候補作品より、3作品『舞妓はレディ 』『WOOD JOB!(ウッジョブ)』『0.5ミリ』を選びまして、あくまでも私にとっての最優秀作品としました。
ブログを書く時間がなくて2015年になってようやく映画コメントを書き始めました。おそくなって誠に申し訳ありません。2014年末から新年にかけて映画館で観賞した特選映画は4本でした。残念ながら、この中にはあまりワクワクする映画がありませんでした。『毛皮のヴィーナス』は難解で感動があまりなかったので、まあ、「ゴーン・ガール』がまずまずましな作品だったかなーと、特選映画にしました。
2014年の映画界の最大の話題は、やはり北朝鮮最高指導者「金正恩第1書記」を暗殺する計画を題材としたSony Picturesのコメディ映画「The Interview」事件でしょうーね。同社はこの為、数週間にわたり、社内の金融情報や未公開映画、電子メールなどのハッキング被害にあい、情報が盗み出され、インターネットに流出される激しいサイバー攻撃を受けてました。さらに、ハッカーらは「The Interview」を上映する映画館を攻撃することを脅かしていた…。それに対して同社は、12月25日に公開される予定だったこの作品をとうとう公開を中止すると発表した。公開中止以前より既に多くの映画館が上映中の意向を明らかにしていたが、北朝鮮は「The Interview」の上映を戦争行為であるとさえ表明していた。他方、米当局はこのサイバー攻撃を北朝鮮によるものと判断し、オバマ大統領は対抗措置を表明した。しかしこの上映中止に対して、アメリカ国内では言論の自由の敗北として世論と映画関係者から轟々と非難が寄せられ、上映中止が非難された。とうとう、Sony Pictures Entertainmentも、12月23日に公開中止の決定を翻し、一部劇場とネットでの公開を決定した。北朝鮮は許せない…というアメリカの言論の自由とデモクラシーが勝利したーと言えます。以前、北朝鮮舞台の「007」の上映にチャチャを入れるクレームがありました。現在の所、日本・韓国・中国での公開は予定されていませんが、 日本でも早くこの作品を見たいものですね…!
結婚5周年に突如失踪した妻・エイミー(ロザムンド・パイク)を捜す夫・ニック(ベン・アフレック)は、初め妻殺しの犯罪の張本人のように見られ、警察の捜査で追い詰められ、過剰なメディア報道によって世間の目が夫に集まり、疑惑と好奇心と破滅の恐怖にさらされていました。1本目は、主役・ニックが次第に群衆によってエイミー殺害疑惑の目で追い詰められるミステリー&スリラーを描いた『ゴーン・ガール』(デヴィッド・フィンチャー監督。原作&脚本:ギリアン・フリン。)でした。結局、ニックの浮気に対する復讐で、エイミーは本当は隠れて生きていて、殺されたかのように見せかけていたというのが真相だった。
妻の無邪気なたくらみに翻弄される夫・ニックの滑稽さよりもむしろ、マスコミ報道に乗せられて架空の殺人事件に踊らされる顔のない群衆の姿を巧みに演出している映画だなと思いました。ニックを犯罪者にまで貶め、濡れ衣を着せて人生を破滅させようとする、さらに、元彼で数年前に彼女への接近禁止令を出した裕福なデジー・コリンズ (ハリス) を欺いて豪邸に匿うことを懇願し、再び彼さえも偽装の殺人事件に巻き込んでしまうー。観ているうちにエイミーのキャラクターは恐ろしいー、いやや、女という存在は怖いなと思い始めました…。女は愛おしく可愛い存在でもあるが、反面、その「女」というのは、魔女にも魔物にもなる狂気の存在で、仮面の裏側には「鵺的」魂を持っているのですね…!こんな女とは絶対結婚したくないですね…!独身男性は、結婚するのが恐ろしくなるのではないでしょうか
2本目は、J・R・R・トールキンの『ロード・オブ・ザ・リング』3部作に続き、その物語の序章にあたる『ホビットの冒険』をピーター・ジャクソンが映画化したアドベンチャーの最終章あたる映画で、第1部の「思いがけない冒険」第2部の「竜に奪われた王国」に続く『ホビット3 決戦のゆくえ 』(ピーター・ジャクソン 監督)です、
ホビット族の青年ビルボ・バギンズがドワーフ王トーリン・オーケンシールド率いる13人のドワーフ族と共に、邪竜スマウグに奪われた祖国エレボールと財宝を奪還するために出発すところから『ホビット』の冒険ファンタジーが始まるー。物語のエンディングもこの邪悪な竜が退治されて、ビルボが再び故郷の家に帰る安堵感で終わる。途中、地下街に棲むゴラムと遭遇し、なぞなぞ勝負の末に指にはめると姿を消す不思議な「指輪」を手に入れる。ビルボは、魔法の指輪によって何度かの危機を逃れる「忍びの者」として活躍する。一行の前に時々現れるのが、白い顎髭に青いとんがり帽子、長い杖がトレードマークの賢者ガンダルフです。光と炎を操る力を持つ老人です。この二人が「ホビット」の中心人物と言えます…。第2部では、トアーフとビルボ一行は、闇の森へ足を踏み入れ、巨大なクモの群れに襲われ、闇の森エルフに捕まって投獄される。ビルボの機智で脱出、樽に乗って急流を下り脱出する。湖まで逃れ、谷間の国デイルの王族の末裔である船頭バルドの案内でエスガロスへ入国する。一行と別れたドワーフは、冥王サウロンに遭遇する。ビルボ一は姿を消して黄金の洞窟に侵入し、スマウグを撃退しようと戦うが失敗に終わる。スマウグはエスガロスの町を破壊しに飛び立っていってしまう。ホビットの第3部「決戦のゆくえ』では、バルドは、港町エスガロスを襲う邪竜スマウグを狙って黒い矢を放ち、討ち取る。街を破壊され家を失ったエスガロスの市民は、エレボールへ避難しようとするが、ドワーフの王子トーリンは、黄金に目が眩み宮殿を固く閉ざし、何びとの侵入も許さない。アゾク率いる闇の大軍勢とトーリンワーフ軍が最後の決戦に挑む…。
3部構成の『ホビット』のストーリは長いです。簡単に紹介したが、正直言ってTSUTAYAからDVDを借りて一部二部をもう一度観賞しましたが、漸く物語の流れが分かりました。率直に言って私は、この映画を見るたびに退屈しました…!第一部のコメントでも書きましたが、私にはこの荒唐無稽な魔法に満ちた仮想空間とねじれた時間の織りなすファンジックなストーリーがよく分かりません。聖書と神話の文化が醸成した「物語」を否定するつもりはないが、やはり聖書と神話のエピソードは何か心にシックリきません。以前見たいろいろな「ファンタジー」の映像記憶が、意識の中で混濁しそうになります…。私たち日本人の祖先は農耕民族で、望郷の目的地を持った狩猟民族の旅と遍歴物語ー、その途中の旅の道程で遭遇する冒険と危険、旅の途中で目に映る異郷の風景と助け合う仲間、宿でもてなされる慰安と寛ぎー、はるかな目的地を胸に秘める夢と理想ー。率直なところ、ファンタジーの持つそんな獣と狩猟の異質な魔法空間の属性が、私には些か退屈でした。…この考えは全く変わってません。
3本目は、1900年代初頭に経済的豊かさを求めて日本から新天地・カナダに渡航した日本人家族を主人公に、過酷な肉体労働と東洋人ゆえの言われなき差別に会いながらも日系人野球チーム「バンクーバー朝日」で、スポーツを楽しむ青年たちを描いた『バンクーバの朝日』(石井裕也監督)でした。
カナダの日系人の野球チームを発掘したドキュメント本か、或は、原作小説がある筈だと調べてみたが、原作は小説ではなくて、2012年からビックコミックに連載された「バンクーバーの朝日軍」という野球漫画でした。それを脚本家の奥寺佐渡子が脚色したようです。昨年『八日目の蝉』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受けた奥寺佐渡子の
手腕は大したものす。ただ、野球映画に傑作がまた一本加わりましたーと言いたいのだが、それ程の傑作と思いませんでした。石井裕也監督は本当に自分の作りたい映画を撮っているのだろうかーな?それとも創造と発想が枯れてしまったのかなーと疑ってます。
4本目は、ザッヘル=マゾッホが1870年に発表した自伝的小説「毛皮を着たヴィーナス」を基にアメリカの劇作家デヴィッド・アイヴスが同名戯曲を書き、それに着想を得たロマン・ポランスキーが、演出家トマ(マチュー・アマルリック)と、オーディションを受けに来た無名の女優ワンダ(エマニュエル・セニエ)の二人を主人公に、恰も劇中劇のように戯曲を映画化した『毛皮のヴィーナス』(ロマン・ポランスキー 監
督)でした。
個人の肉体的快楽を至高とするサドの作品『ソドム百二十日あるいは淫蕩学校』『美徳の不幸』『ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え』など多くは、パスティーユ牢獄とシャラントン精神病院で書かれたものがほとんどです。«サディズム≫の語源ともなているマルキ・ド・サドの倒錯したエロティズムは近代に大きな影を、今日でも落としています。依然、人間の暗部を理解するには不可欠な言葉となっています。更に、『毛皮を着たヴィーナス』もまた、肉体的精神的苦痛を性的快楽と感じる嗜好は、ザッヘル=マゾッホの名前に由来していて、「マゾヒズム」の語源となった作家です。サドと並んでマゾッホもまたエロティズムを論じるのに不可欠な作家です。80歳のロマン・ポランスキー 監督が、今更何故にマゾの作品を映画化したのか、私にはよくわからないです…?
だが、2002年度のアカデミー賞監督賞『戦場のピアニスト』、2010年度の銀熊賞を取った『ゴーストライター』、『オリバー・ツイスト』(2005年)などの名作を残している監督が、どうしてザッヘル=マゾッホの小説を映画化したのか…。その意図をどうしても勘ぐりたくなります…!私は監督の心の底にある裏の意図を未だ掴めずにいます。或は、この作品の作家の「謎」を解くためにインタビュー記事を読みたいです…!何方か教えてください。