6月特選映画「奇跡のリンゴ」★映画のMIKATA【15】中村義洋監督★映画をMITAKA… | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・














◆映画情報
上映時間 129分/劇場公開(東宝)/初公開2013年6月8日
オフィシャル・サイト
http://www.kisekinoringo.com/
◆スタッフ
監督: 中村義洋/製作: 市川南。小林昭夫。見城徹。高橋誠。遠藤真郷。松田陽三。川邊健太郎/プロデューサー: 臼井央。エグゼクティブプロデューサー: 山内章弘/
共同プロデューサー: 藤巻直哉。本整小玉圭太/原作: 石川拓治『奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録』(幻冬舎刊)/脚本: 吉田実似。中村義洋/撮影: 伊藤俊介/美術: 瀬下幸治/編集: 松竹利郎/音楽: 久石譲/照明: 石黒靖浩/録音: 松本昇和/助監督: 佐和田惠/プロダクション統括: 金澤清美/
◆キャスト
阿部サダヲ: 木村秋則/菅野美穂: 木村美栄子/池内博之: もっちゃん/笹野高史: 深津/伊武雅刀: 三上幸造/畠山紬: 雛子/渡邉空美: 咲小泉颯野: 菜ツ子/ 原田美枝子: 三上葺子/山崎努: 木村征治/

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近頃、朝起きるのが早い。いつの間にか早寝早起きになっていた。朝日と共に起き、星と月と共に暗くなると眠たくなります。かといって、世界でいち早く経済活動を始め、株式市場のために生活時刻の針を無理して早める必要もないだろうーなと、思います。思いつきで「これは名案…」とばかりに大風呂敷を広げる猪瀬都知事に、一言言いたくなります。折角、早起きしたんだから。自分のために時間を有益に使えないものなの…!例えば、庭の雑草をむしったり、本を読んだり、借りてきたDVDの映画を観たり、ラジオ体操をしたりー、何か健康にいいことをしてもいいだろう…よ。私は、毎朝明るくなる四時半過ぎには起床して、大抵、リンゴを1個包丁で四分の一に切って、それをまた二つに食べ易く小さく切るー。大抵はその皿に生のトマト二つを四つ切にして添えたり、沖縄旅行をして以来、繊維質豊富なパイナップルのファンになったので、缶詰からシロップに漬けた輪切りのパイナップルを二切れのせたりします。それに、野菜ジュースと乳酸飲料を大きなビールジョッキーにナミナミ満たして飲みます。これが私の朝食の定番になってます。忘れてた、近頃はこのメニューにサプリメントの「グルコサミン」と「ビタミンⅭ」を加えて飲んでます。これで私の体調は良好です…。だから毎朝、リンゴの持つ恩恵に与ってます。リンゴは何も言わないけれど、赤いリンゴに魅せられてます。


早朝の習慣はもう一つあります。もう目的もなくテレビのスイッチを入れて、何気なく画面を見る習慣はとうの昔に捨てました。その代わりにAMラジオを四時過ぎから聴いてます。部屋には四台のラジカセがあり、954TBSか、1242ニッポン放送の番組にラジオを同調していますー。勿論、テレビは番組と番組の間にさまざまなコマーシャル映像が挿入され、その広告収益が民間放送の経営を支えていますー。ところが、最近ラジオを聴いていて、この声のラジオコマーシャルが多くなったなーと気がつきました。頻繁に長々と商品宣伝のオシャベリが続くと、私は嫌にナリ別の局にダイヤルの針を移動し、気分が悪くなり別のラジオをONにします…。さらにさらに、大きな驚きと発見は、昔も今もいまだに「宗教」の時間が早朝時間帯に流れていることです。私のおおきな「疑問」ですー。都会の夜は、深夜まで人が絶え間なく往来し、もはや夜は寝るだけの時間帯ではなり、昼の延長の、翌日に繋がる小休止のような時間になってしまいました。同時に早朝の意味と意義は、昼の経済活動がはじまる前のウォーミングアップ、まして、朝の三時や四時は布団の中でまだ明けない「朝」のボンヤリした時間ではなくなりましたー。『ゴー』と大きな機械音と共に始まる経済活動の始動の前の、個人的な静寂とホーと一息できる趣味の時間帯となっているーのではないでしょうか…。私にとっては、早朝の二時間は、ブログを書いたり、お寺の境内を散歩をしたり、短歌を指折り数えたり、゙童話の続きを構想したり、文化のいちばん自由で爽快で楽しいノノンビリする時間となってます…。朝は心を買い解放する黄金の価値があります。


掲載が遅れに遅れて申し訳ないです…。自分ではマイペースで映画鑑賞をいしているのですが、六月は名作秀作、新作公開の作品が多かったです。近々、6月の特選映画をアップロードしますが、それでも、余りに本数が多いので7月に一部ズラして廻したくらいです。6月の総括「特選映画」を気長にお待ち下さい。例えば、今回掲載した「奇跡のリンゴ」にしても、原作は勿論読了しました。尚且つ木村明則さんが無農薬栽培への天啓を受けた福田正信氏の自然農法を知りたくて『自然に還る』(春秋社)を読み始めたり、私の植物学の「先生」である中尾佐助さんの『栽培植物と農耕の起原』(岩波新書)でリンゴのルーツを調べたり、と映画以外にも好奇心が広がって、思わぬ時間の寄り道をしてました。でも、映画は私にとっては、今を理解するための「切り口」なので、トコトン思索したくなるんですーね。


さて、映画の話題に入ります。まずは6月の特選秀作映画王冠1奇跡のリンゴ』(中村義洋監督)をアップロードします。前回の特選映画『くちづけ』に続いて、私は、この作品もまた日本アカデミー賞候補の1本に挙げたいと思う感動的な映画でした。


中村義洋監督はとても映画作りの巧い人だなーと思ってます。伊坂幸太郎原作の「アヒルと鴨のコインロッカー」(2006年)、「フィッシュストーリー」(2009年)
「ゴールデンスランバー」(2010年)、「ポテチ」(2012年)等々もなかなか見応えが有りました。ヤヤ社会的関心のあるテーマをチラつかせながら、しかも、主役の選び方が的を獲ている。この作品の主演・阿部サダヲでも、恐らくこの人がピッタリの適役でした。


自然農法でリンゴ栽培に成功した木村明則役を演じる主演の「阿部サダヲ」という俳優は不思議なキャラクターを持っています。第31回日本アカデミー賞主演男優賞優秀賞を受賞した『舞妓Haaaan!!!』(2007年。水田伸生監督。宮藤官九郎脚本 )、『なくもんか』(2009年)で演じた彼の主演作品以来、私が観た映画は3作目です。一貫してオチャラケタ緩んだ笑い顔が、ヘラヘラ・フッーと息を抜いたときに見せる当惑したような表情がなんとも言えない≪困惑したチャップリン≫独特の泣いた笑顔に、全くよく似ています。独特の笑いのペーソスの雰囲気を持っていますーね。


今でも私は、時々興味津々の「人物」が登場するタイトル次第で観ている『プロフェッショナル 仕事の流儀』で2006年12月7日放送され、大反響を呼んだ番組と、その後、2006年12月から2008年6月までルポライター・石川拓治が取材した、ヒューマンドキュメントー本『奇跡のリンゴ』(2008年幻冬舎刊行)が、この映画の脚本の基になってます。 脚本家・吉田実似と、彼自身も数々の優れた脚本を書いている中村義洋監督によって脚本が共同執筆されてます。私は石川拓治氏の本を読んで、まず「面白い…」と実感し、木村明則氏の人物像を浮上させる寸鉄の片言隻語と文章力に舌を巻きました。その後にこれがどう映像化されるのかを期待して映画を観ました。ただ、本の中では脚色の段階で、幾つか木村明則をドラマチックに演出するエピソードが欠落しているのかなーと思いました。例えばある日、高級車に乗ったこわもてのヤクザが三人来て、携帯で彼に話してくれと言う。すると親分らしき人がNHKの放送を見て、驚くことに「テレビを見て、涙がでた。あんたといっぺんサシで飲みたい」と話し始めたという。放送以来、人生相談や身の上相談の電話がひっきりなしに舞い込むという。貧乏の末のお米を買うためにキャバレーで働くエピソードは脚色されてました。


映画のストーリはこうです。主人公・木村秋則(阿部サダヲ)の、好奇心旺盛な性格と、新しいもの好きの志向と、機械好きの少年時代のまざまな滑稽な失敗のエピソードから始まる。高校を卒業して神奈川県川崎市の工場地帯の工場に就職して、生産コストの管理と計算の仕事に従事する。その後、実家のリンゴ栽培を継ぐために青森県弘前市に帰る。故郷で妻・美栄子(菅野美穂)と共に養子に入ってリンゴ栽培を始める。だが、秋則は、年に十数回も散布する農薬が原因で皮膚に異常をきたし寝込むこともある妻の体質を心配して、無農薬のリンゴ栽培を志す。だが、農薬を使わないリンゴ栽培は絶対不可能と思われていた。秋則は偶然書店で目にとめた、肥料も農薬も使わないで米栽培に成功した福岡正信の『自然農法』を耽読し、それをリンゴ栽培で試みようとする…。しかし、リンゴ園は害虫に荒らされ、リンゴの木は枯れ始め、リンゴ園は全滅し、近隣では侮蔑の言葉「かまどけし」と誹られるー。苦節十年、それでもあきらめずに自然農法でのリンゴ栽培を捨てずに続け、とうとうリンゴの白い花が咲く…。


昨今、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)による農業に与える影響が問題となっています。輸入される農産物には今まで関税が掛けられて、国内の農産物差よりも高い値段で販売されて、国内農産物を価格で擁護していましたが、これが、貿易自由化を目指す経済的枠組み「TPP」に参加すると、コメの関税率778%が撤廃されることで、安い外国産米が独占的な日本農産物の流通市場に大量に流入して、安価で食品として安全で美味しい「外国産米」ならば、私たちはきっと輸入米を喜んで食べるでしょう…。すると、日本の農業生産は大打撃を受け、年約4兆1000億円の売り上げが減少するとの試算をはじいてます。「奇跡のリンゴ」を読んで観て、農家に大量の肥料と多種多量の農薬と種子と高価な農機具を独占的に販売している「農協」なんて潰れてしまえ!と思っている私などは、従来より保守自民党が保護して、選挙のときに大量の≪票田≫となっていた農業団体ー、市場自由経済のアンタッチャブルな聖域だった「農業市場」が開放されて、却っていいじゃないかーと思うのですが…ね。私にそんな事を考えさせた映画でした。私の映画評価は★★★…近年最高の収穫といってよい感動の名作映画の1本でした。


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