6月推奨「ワン・デイ」★映画のMIKATA【14】ルネ・シェルフィグ監督★映画をMITAK | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

 

スタッフ
監督: ロネ・シェルフィグ/製作: ニーナ・ジェイコブソン/製作総指揮: テッサ・ロス/原作: デヴィッド・ニコルズ『ワン・デイ』(ハヤカワ文庫刊)/脚本: デヴィッド・ニコルズ/撮影: ブノワ・ドゥローム/プロダクションデザイン: マーク・ティルデスリー/衣装デザイン: オディール・ディックス=ミロー/編集: バーニー・ピリング/音楽: レイチェル・ポートマン/音楽監修: カレン・エリオット/主題歌: エルヴィス・コステロ/
キャスト
 アン・ハサウェイ: エマ/ジム・スタージェス: デクスター/パトリシア・クラークソン: アリソン/ケン・ストット: スティーヴン/ロモーラ・ガライ: シルヴィ/レイフ・スポール: イアン/
シネマ情報
上映時間 107分/劇場公開(アスミック・エース)/2012年6月23日初公開/
オフィシャル・サイト
http://oneday.asmik-ace.co.jp/

 6月下旬の推奨映画をアップロードします。映画館で観賞した映画は8本でした。1本目の映画は、オーケストラチェリストの愛妻が夜の街路でレイプされた高校教師が、病院でレイプ常習犯へ≪復讐≫を代行する秘密組織から協力を囁かれ、復讐を遂げた後に、その代償の共犯を強要される「 ハングリー・ラビット」(ジャニュアリー・ジョーンズ監督)です。2本目は、イラク戦争を舞台とする神経症になった帰還兵の歪曲したラブストーリで、私の嫌いな戦争映画「一枚のめぐり逢い」( スコット・ヒックス監督)です。3本目は、19世紀のドイツのグリム童話「白雪姫」を現代的解釈でリメイクした映画「スノーホワイト」( ルパート・サンダース監督)です。4本目は、1980年代にリリースされた人気アニメのリバイバル劇場版で、明らかに熟年男子たち、団塊の世代を狙った昔懐かしいアニメ映画「ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略」(窪岡俊之監督)です。パート1を見た後に、「もう見ないー」と決めたのですが、再び観てしまいました。5本目は、巨大なサメに襲われ左腕を食い地切られた、ハワイの海が大好きな13歳の少女サーファー・ベサニーが、再び立ち直る葛藤と苦闘を描いた「ソウルサーファー」(ショーン・マクナマラ監督)です。6本目は、ある日高校生のピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)は、失踪した父の仲間だった遺伝子研究のオウソリティー・生物学者カート・コナーズ博士(リース・イーヴァンズ)のいるオズコープ社を訪ねる。が、そこで遺伝子操作実験中の蜘蛛に噛まれてしまう。その日以来、ピーターの身体内で異種の蜘蛛遺伝子が移植され、人間でありながら蜘蛛の糸を吐き出すスパイダーマンへ異変する、シリーズ第3作目の「アメイジング・スパイダーマン」(マーク・ウェブ監督)。 7本目は、アメリカ海軍特殊部隊「NAVY SEALS」が活躍する「ネイビーシールズ」(スコット・ウォー 。マイク”マウス″マッコイ 監督)です。私の嫌いな戦争映画です。8本目は、同じ大学を同時に卒業したエマとデクスターの男女がいた。テレビ番組の人気司会者となり、浮名を流してモテモテの有名人となった恋多き活発な男はデクスター。一方、詩と小説を書き、「文学」を愛していて、地味だが才能のある美貌の女がエマ。大学を卒業した7月15日に男女は出会い、一晩の快楽を与え合い、その後の23年間の出会いと別れの紆余曲折を描いた「ワン・デイONE DAY 23年のラブストーリー 」(ルネ・シェルフィグ監督 )。今回の特選映画にワン・デイONE DAY 23年のラブストーリー」を選びました。

1本目の ハングリー・ラビット」は、暴行を受け妻の痛々しい傷跡とレイブ後の心のトラウマに対して、非合法の≪復讐≫殺人に揺れる高校教師にニコラス・ケイジが主人公を演じます。いかにも優しく非暴力で気の弱い夫に、彼は適役です。空腹のうさぎ「ハングリー・ラビット」が合言葉で、警察組織の中枢刑事までが、この符丁を囁いたのは衝撃でした。はてはて、この言葉の出典はルイスキャロルなのかなー? どこから引用されたひねりの言葉なのかな・・・とずっと頭をひねっていましたー。誰か知ってますか・・・・? 近頃、リメイク版が多いので、この映画もまた、以前に何処かで見た映画かなーと錯覚しそうな手垢のついたストーリなのですが、やや残念な仕掛けと展開でした。

ある時期、ハリウッドの戦争映画の舞台はベトナム戦争でしたが、近頃は中東のイラン・イラクのオイル戦争前線を舞台とする、歪曲したヒューマンな戦争翼賛の悲喜劇戦争映画が多くなりましたねー。これもその一本と思います。砲弾と弾丸が飛び交う戦場で見知らぬ「女性」の一枚の写真を拾ったお陰で、主人公の軍曹・ローガン・ティボー(ザック・エフロン)が数々の命の危険と危機から救われるという、屈折したラブストーリ一枚のめぐり逢い」です。私達日本の皇軍陸軍兵士ならばきっと、「千人針」や愛妻のお守りの「陰毛」や神社の「お守り」なのだろうがー、ここではベス(テイラー・シリング)の写真が≪お守り≫でした。私の嫌いな戦争映画ですが、ならば、「一枚のめぐり逢い」を戦争映画として嫌うならば、戦場の殺戮の悲惨さを描き、人間を交戦させる戦争を美化するあらゆるナショナリズムとイデオロギーと男らしさのヒロイズムの虚飾を空しいと暴く、例えば、コッポラの『地獄の黙秘録』も、スピルバーグの『シンドラーのリスト』も、ウィンクラーの『勇者たちの戦場』も、邦画の『レイテ戦記』等々の反戦映画・・・も、戦争翼賛の映画というのかーとなじられそうですね!でも私は、多くのハリウッド映画は、アメリカの若者を戦場で国家のために死ぬ勇気を鼓舞し、徴兵へ掻き立てる作品と看てます。

3本目は、ルイスキャロルの『アリスの不思議な国』に続いて、ティムバートン監督がまた「白雪姫」のグリム童話的世界を現代的に解釈して、新しい映像技術を駆使して、極彩色の光の帯が飛び出す3Ⅾの幻想的な演出手腕を揮った作品かなと先入観がありましたが、「スノーホワイト」のルパート・サンダース監督は、CM界でキャリアを積んだCMデレクターのようです・・・ね。ただ、私の率直な感想は、最後に優しく美しい白雪姫が勇敢な馬上のジャンヌダルクに化けてしまい、小人たちがお城の攻撃に参加する裏工作兵になってしまうー、納得のいかない結末でした。結局、「悪」と対決して「悪」と闘うためには、「善」の白雪姫は、魔術を使う「悪」に立ち向うために、殺し滅ぼす剣の「悪」にならなければ勝てないーという暗喩なのかな・・・?戦乱の後に平和があり、平和の後に抑圧と圧政があり、暗黒政治の後に再びヒーロかヒロインかが、王剣をかざす「善」が出現するー。童話的世界は、「善&悪」のヤヌスの顔を持つものですねー。

4本目は、明らかにマーケッテングした末に、そこそこの興行成績を収めるには≪団塊の世代≫を狙えーという分析結果の製作だろうと憶測してしまう、昔懐かしいアニメ映画「ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略」(窪岡俊之監督)のパート2です。オジサンたちには子供の頃に熱中したアニメは、懐かしさ以上に仕草や言葉使いや友達付き合いや考え方に至るまで意識に浸透しているのではないかと思いますー。「明日のジョー」」も「巨人の星」も「銀河鉄道」も「宇宙戦艦大和」も「ドラゴンボール」も「妖怪人間ベム」も「愛と誠」も「るろうに剣心」も、みんな皆、オジサンたちのためのリバイバルですね。三部作のパート3は観ないつもりでいますが、しかし、傭兵集団「鷹の団」から離脱して再び放浪の旅に出た長大な剣を肩に乗せて振り回す孤独な剣士ガッツはどうするのか・・・?、シャルロット王女の寝室に忍び込み姦通して国王の逆鱗に触れ、地下で拷問を受けるグリフィスはどうなる・・・?、さらに、貴族の称号まで授与され優遇された鷹の団が、ミッドランドから弓矢で追われ、再び傭兵の残党としてどう生きてゆくのか・・・。この先の残された顛末が些か気になりますがー。

5本目のソウルサーファー」の主人公役のベサニーは、実在の少女のようですねー、公開直前の5月23日に有楽町で開催されたジャパンプレミアの舞台挨拶に「プロサーファー、ベサニー・ハミルトン」(22)がハワイから来日というニュースが流されていました。ハワイのカウアイ島に住む少女ベサニーは、サーフィンが自分の全てのような毎日だったが、片腕を失った事故で奇蹟的に一命をとりとめたけれども、サーフィンが出来なくなり失意の中にいた。その時に、タイのプーケットで起きた津波の被害救済のためにキリスト教のボランティアで現地を訪れ、海と波に恐怖心を抱き、元気を無くした子供達に胸を痛め、サーフィンで励まそうとするー。
 この津波被害は、2004年12月26日にインド洋を震源とするM9.0の地震が発生、大津波がインドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、スリランカ、インド、モルディブ、ソマリア、ケニアなどを襲った。この津波により死者約22万人、行方不明者7万7千人、負傷者13万人という大惨事になった。その後に、2012年3月11日に東日本大震災と大津波と原発汚染が襲った・・・。一度は観ておきたい映画の1本でした。
 以前にこのブログで「ファミリーツリー」(アレクサンダー・ペイン監督)をコメントしましたが、あの映画もハワイが舞台でした。ハワイにすっかり魅了されてしまいまして、私は、この映画を観ながらまだ一度も訪れたことが無いハワイのビーチにすっかり憧れ、老後はハワイのビーチのコテイジで余生を過ごしたいと憧れました・・・。ハワイで生活する市民は、あんなにも身近に海と波と太陽があり、素晴らしい環境だな・・・と心底憧れました。そこで私は今、池澤夏樹の『ハワイ紀行』(新潮社刊行)を読み始めました。でも、ハワイの別荘で老後の年金生活を出来る日本人がどれだけいるのでしょうか・・・ね?

6本目は、アメイジング・スパイダーマン」(マーク・ウェブ監督。脚本: ジェームズ・ヴァンダービルト、アルヴィン・サージェント、スティーヴ・クローヴス)です。娯楽映画としては退屈しない面白さがあり、観て損は無いでしょう ー。最近、テレビでこれまでの旧作が連続して2本、「スパイダーマン2」【2004年公開。監督: サム・ライミ。 脚本: アルヴィン・サージェント 。 スパイダーマン主演:トビー・マグワイア (ピーター・パーカー)】と、「スパイダーマン3」【2007年。監督: サム・ライミ。 脚本: サム・ライミ、アイヴァン・ライミ、アルヴィン・サージェント。主演: トビー・マグワイア( ピーター・パーカー)】が放映されていましたが、シリーズとしては、今回の「アメイジング・スパイダーマン」は、監督も脚本も異色のようですー。これまでのスパイダーマンのストーリの大枠と軌跡と設定を辿りながら、遺伝子操作による怪物と闘うというストーリでした。これからこのアメリカン・コミックのヒーローはどうなるのか・・・、興味は尽きないです。

7本目は、「ネイビーシールズ」(スコット・ウォー 。マイク”マウス″マッコイ 監督)。女医に扮してコスタリカに潜入していたCIAエージェントが拉致される事件が勃発する。暗躍する黒幕は、麻薬取引や武器密輸で財を成した「クリスト」。アメリカ海軍特殊部隊NAVY SEALSにCIAエージェント奪還命令が下りる。押収した携帯電話の分析から、アメリカ国内に強力な破壊力を持つセラミック粒を織り込んだ爆弾ベストを着たイスラム系テロリストを潜入させるテロ計画を察知するー。ネイビーシールズの精鋭部隊に再び指令が下りる。深夜のテレビでよく放映されていたのを見た記憶があるので、そんなに新鮮でも斬新なストーリでもなかったー。暇つぶし程度の映画です。

8本目のワン・デイONE DAY 23年のラブストーリー 」(ルネ・シェルフィグ監督 )は、余り名作名画の収穫が少ない6月でしたが、唯一の収穫といってよい感動の映画でした。「ウーン、イイナー。人生縮図が好く描かれてるー」と私は、称賛しています。もはやテレビ業界から干されて、失意と落胆と失業の日々を送っていた男がひとりー。子供は誕生したが、自分を絶望のどん底から救ってくれた愛妻は、他の男と不倫した末に離婚をしたデクスター(ジム・スタージェス)が彼の現在でした。ハイスクールの教師をしながら売れないコメディアンと同棲生活をしていたエマ(アン・ハサウェイ)にもまた、ギクシャクした男女関係の不協和音が訪れていた。一人でも寂しい、でも二人でいても楽しくない悩ましい日々を送った末に分かれる女の現在があったー。男と女は、変転の末に再び出会い、いつでも会える「友達」は、魅かれ合う恋の相手と知りー、とうとうかけがいのないパートナーであることに気付きー、それを漸く、離れられない「恋愛」と認めた二人は結婚したー。エマの小説は、ハードカバーの単行本となり、デクスターの子供を妊娠するー!?。遅すぎたが、今が幸福の絶頂にあり、人生の楽しさをかみしめている男と女であった。普通ならばハッピーエンドの最後なのだが、自転車に乗ったエマが大型トレーラーに轢かれる瞬間に、私は図らずも映画のそのワンシーンを見ながら、「ワー」とため息のような驚嘆を洩らしてしまいました。人生とは、なんと惨酷で無常ではないか・・・といわざるおえません。街路に横転して命が事切れたエマの幸福そうな微笑の死顔が、印象的でしたー。「死」が二人を分けたー。デクスターにいつも厳格な態度の父は、エマを失って酒場で泥酔し喧嘩し悲嘆にくれる息子に対して、やはり愛妻を失った同じ境遇にいる父として、「いつもそばに居るように思えばいいのさー」と優しく諭す。「私はそうしているー」と助言する。離婚した妻との間に生れた一人娘との会話シーンもまた微笑ましかったなー。蛇足を書くならば、邦画の「ガールズ」や「フラワーズ」では決して描けなかった女の幸せを求める作品でした。、男と女の「愛」とは何か・・・?7月15日の23年間の人生の縮図で描いたしゃれた映画でしたね・・・。