「星守る犬」★映画のMIKATA【26】」瀧本智行監督★映画をMITAKA… | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

◆スタッフ
監督: 瀧本智行/製作: 市川南、服部洋、雨宮俊武、諸角裕、喜多埜裕明、北川直樹、石田耕二/プロデューサー: 窪田義弘/エグゼクティブプ
ロデューサー: 塚田泰浩/ラインプロデューサー: 竹山昌利/企画: 神戸明/原作: 村上たかし『星守る犬』(双葉社刊)/脚本: 橋本裕志/
撮影: 浜田毅/美術: 若松孝市/編集: 高橋信之/音楽: 稲本響/主題歌: 平井堅 『夢のむこうで』/VFXスーパーバイザー: 小坂一順/
スクリプター: 長坂由起子/照明: 高屋齋/整音: 瀬川徹夫/装飾: 平井浩一/録音: 藤丸和徳/助監督: 山本亮/チーフデザイナー: 小林久之/
◆キャスト
西田敏行:おとうさん/玉山鉄二:奥津京介/川島海荷:川村有希/余貴美子:旅館の女将/温水洋一:「リサイクルショップ河童」店長・富田/濱田マリ:富田の女房/塩見三省:西谷課長/中村獅童:コンビニショップ店長・永崎/岸本加世子:おかあさん/藤竜也:奥津京介の祖父/三浦友和:海辺のレストラン・オーナー/


流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・


6月の映画特選をアップロードします。映画館で観賞した映画は7本でした。1本目の映画は、「もしドラ」(田中誠監督)。2本目は★★★「軽蔑」( 廣木隆一監督)。3本目は、「星守る犬」( 瀧本智行監督)。4本目は、「スカイラインー征服ー」(グレッグ、コリン・ストラウス監督)。5本目は★★「X-MEN ファストジェネレーション」(マシュー・ヴォーン監督)。6本目は、「デンデラ」(天願大介監督)。7本目は「アンダルシア」(西谷弘 監督)。


1本目の「もしドラ」は、既に6月14日号のブログで早々に掲載していてます。勿論、社会現象にもなっているこの映画は特選映画ですが、割愛します。


2本目の★★★「軽蔑」」は、日本的土着の情念を追求した作家・中上健次の同名小説を原作に、寺島しのぶ主演の『ヴァイヴレータ』(2003年) 、岡田将生、蒼井優が主演した『雷桜』(2010年)等で知られる廣木隆一が監督を務める。主演は、今最も注目され、今最も活躍する個性派男優の高良健吾と鈴木杏。二人が、刹那の愛を燃え尽き、体を貪り合う男女を熱演する…。性欲を燃焼することで、男の魂と女の愛は本当に満たされるのだろうか…。歌舞伎町のチンピラ・カズと、繁華街の風俗で肌を曝すポールダンサー・真知子の最期は、悲惨なものでした。カズはお金が元の諍いでヤクザに刺され瀕死の傷を負いー、血だらけの彼を抱きしめる町子は、再び遊興の街・歌舞伎町へ生きる場を求めて帰る…。恰も、男女の燃え上がる愛の刹那だけが、生命の輝きだというならば、それは若者だけの特権であろう…。原作を読んでいないのでなんとも確定的な作品論をコメントできないが、映画だけで独断的に言えばそんなところです。


3本目の「星守る犬」 」は、北海道の山中のあるキャンプ場の草茫々の雑木林から、放置されたワゴン車に身元不明の中年男性(西田敏行)と犬の遺体が発見される。地元役所の福祉課に勤務する奥津京介(玉山鉄二)が、男の白骨体と犬の遺体に興味を持つ。本ばかり読んで、「どんな人生も図書館に並ぶ本と同じ…」が口癖の京介が、孤独なルーチンを抜け出して男の人生と足跡を東京から辿り始める。男は、出版社の創業者であり、事業に失敗、優しい妻との離婚により、子供と温かい家族を失い、最期に傍にいた愛犬の「ハッピー」と共に死に場所を求めて車で旅に出たことが明らかになる。誰と人生の末期を迎えるか…、或いは、高齢者が生涯をどう締めくくるのか…という問題は、成熟した豊かな社会、逆三角形の人口ピラミッドになった高齢化を迎えた先進福祉社会にとって、「生甲斐」の追求から老人たちの「死に甲斐」の問題が大切になっています。今に相応しい分かりやすい映画でした。


4本目の「スカイライン-征服-」は、暇な時間をつぶす楽しい娯楽映画という評価で充分でしょう。地球を侵略する「宇宙人」というストーリ設定は、今まで夥しい映画が製作されてきました。この映画もまた、突如としてロスの夜空に青白い閃光と共に、巨大な飛行物体が空を埋め尽くす。ある高級マンションの住人たちを主人公に、光の中に次々と人間を吸い上げて行く。地球外生物の侵略が始まる…。「エイリアンズVS. プレデター』の監督、グレッグ、コリン・ストラウス兄弟らしいVFXの映像でした。


5本目の★★「X-MEN ファストジェネレーションは、『X-メン』シリーズの5作目で、今作は、「X-MEN」の起源にまでストーリは遡って、ミュータント第一世代たちのドラマを描く。1944年のナチス・ドイツ占領下のポーランドの強制収容所の大量虐殺から、1962年の世界戦争への一触即発のキューバ危機までの時代背景の中で、ミュータントの起原と出現が描かれます、


ナチの科学者・シュミット博士は、ユダヤ人少年・エリック・レーンシャーが鉄門を捻じ曲げる超能力を発見する。シュミットはエリックの能力を引き出すために母親をわざと眼前で殺害する。後に、エリックはその時の怒りを復讐に変えて元ナチスの人間を次々と襲撃。シュミットを執念のように追いかける。後にプロフェッサーXとなるチャールズは、イギリスのオックスフォード大学で突然変異・ミュータントに関する研究をしていた。


セバスチャン・ショウと名を変えたシュミットは、超能力を使う悪の集団「ヘルファイア・クラブ」を組織して、世界制服の野望を持つ。チャールズはショウの野望を食い止めるために、ストリッパーのエンジェル・サルバドーレ、タクシードライバーのアーマンド・ムニョス、刑務所に収容されていたアレックス・サマーズ、ショーン・キャシディたちのミュータントを各地から集める。


ミュータントの起原と出現を、ナチス占領下のポーランドのユダヤ人強制収容所から描いたところが、この映画が単なる娯楽映画でない特異なところだろう…。
マシュー・ヴォーン監督と、シリーズではいつも主役演技をしているブライアン・シンガーが、製作に参加することで、この映画は、超能力のミュータント同士の戦いで終らない。


6本目の「デンデラ」もまた高齢化社会に相応しい映画でした。佐藤友哉の小説を原作に、深沢七郎の「楢山節考」を製作した今村昌平監督の息子である天願大介が、脚本と監督を担当した。父親の監督作品を越え、父親の偉業と才能を越えたいとの、息子らしい野望なのか?


「うば捨て」は実際はなかった…という歴史家もいるようですが、この映画は口減らしのために極寒の山村で、70歳を迎えると山奥に年寄りが捨てられるというストーリ設定で、いわば 楢山節考での「姥捨て山」伝説のその後を描いたといってもいいです。ただ私には、深沢七郎作の「楢山節考」を映画化した今村昌平監督の映像が印象的なので、インパクトのない二番煎じの映画という評価です。


唯一観賞の価値があるとすれば、いつも厚化粧やピンライトで隠された名女優たちの年老いた素顔がスッピンで見られることだろうか…。斎藤カユ役の浅丘ルリ子が掟に従って、雪深い山中の「お参り場」へ背負子にのせられて捨てられる。しかし、カユが目覚めると、そこには捨てられ死んだ50人の老人たちが「デンデラ」という共同体を作り、村人へ復讐する機会を狙っていた。浅丘ルリ子を初め、椎名マサリ役の倍賞美津子、浅見ヒカリ役の山本陽子、デンデラのリーダーの三ツ星メイ役の草笛光子、小渕イツル役の山口果林ら、これまでスクリーンで活躍した邦画を代表するベテラン女優たちが、シワクチャの老婆役で登場しています。


7本目の「アンダルシア-女神の報酬」は、テレビドラマ「外交官・黒田康作」に続き、真保裕一の小説を基にした織田裕二主演の連続シリーズです。劇場版『アマルフィ 女神の報酬』に続く第2作目となるサスペンスで、まずは新保裕一の原作が面白いー、今までにない国際社会が舞台なのでスケールが大きいー、キャストがまたいいー。


黒木メイサと伊藤英明がロケ地であるスペインや、ヨーロッパの風景に溶け込んで゜いてよかったです。とかく、日本人俳優は、どんな名演技の名俳優でも、何か野暮ったいカメラを首にびらさげた団体旅行者のイメージになってしまう…と感じるのは、私だけかな。


私は現代作家が映画ストーリや映画製作や脚本に参加することに大賛成です。映画監督と比較して、作家たちのストーリテーラーとしての奇抜性、構想力、創作性、リアリティーとイマジネーションのバランス等…やはり作家の才能は優れています。新保裕一や小説「GO!」の作家・金城一紀や、日本アカデミー賞を獲った「悪人」の原作者、吉田修一ように、いい映画作りに積極的に参加して欲しいです。


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