「12月特選映画ー武士の家計簿」★映画のMIKATA【36】 ★映画をMITAKA… | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

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◆スタッフ

監督: 森田芳光/ プロデューサー: 元持昌之/エグゼクティブプロデューサー: 飛田秀一 、 豊島雅郎、 野田助嗣、 原正人/アソシエイトプロデューサー: 岩城レイ子、 三沢和子/原作: 磯田道史、 『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮新書刊)/脚本: 柏田道夫/撮影: 沖村志宏/美術: 近藤成之/編集: 川島章正/音楽: 大島ミチル/照明: 渡辺三雄/制作担当: 砥川元宏/装飾: 鎌田康男/録音: 橋本文雄/助監督: 増田伸弥/プロダクション統括: 永井正夫/

◆キャスト
堺雅人= 猪山直之/ 仲間由紀恵= 猪山駒/松坂慶子= 猪山常/西村雅彦= 西永与三八/草笛光子= おばばさま/伊藤祐輝= 猪山成之/藤井美菜= 猪山政/大八木凱斗= 猪山直吉(後の成之)/ 中村雅俊= 猪山信之/

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今月は次々と新しい映画が公開されるので、それを観賞するのに追われて書く余裕がありませんでした。『最後の忠臣蔵』も見ました。ミュージカルの『バーレスク』も楽しみました。『相棒劇場版2』の水谷豊の刑事役も面白かったです。デズニー映画の『トロン・レガシー』も、、『ハリーポッターと死の秘宝ART1』 』も見ました。結構見るのに忙しかったです。


遅くなりましたが、12月上旬の映画特選をアップロードします。映画館で観賞した映画は5本で、総評としては、さすがに年末だけあって一年の総決算のような秀作、構想をあたためて満を持して公開される粒ぞろいの名作が多かったです。


1本目の映画は「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(原作、山崎貴監督)。2本目は「武士の家計簿」(森田芳光監督)。3本目は、「KISS&KILL」(監督)。4本目は「ロビン・フッド」( リドリー・スコット監督)。5本目は「ノルウェーの森」(トラン・アン・ユン監督)。なにせ粒ぞろいの秀作名作がそろっている映画界なので、迷いに迷った末に敢えて特選映画を「ノルウェーの森」を挙げました。ただリドリー・スコット監督の★★「ロビン・フッド」も捨てがたい魅力がありました。そこでもう一本ベターな映画として選びます。ところが森田芳光監督の★★★「武士の家計簿」もやはり時代映画としても捨てがたい魅力と企画に魅せられるストーリでした。私は、来春早々にアップロードしたい≪2010年特選映画ベスト5≫の一本に入れたい位の秀作であると思いました。そこでもう一本、ベターな映画として「武士の家計簿」も選びます。


①さて1本目の「SPACE BATTLESHIP ヤマト」は、テレビアニメの『宇宙戦艦ヤマト』から、この実写映画『ヤマト』に至る足跡を映画のHP『ALL CINEMA』の≪松本零士≫のサイト http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=131438  からご紹介しながら、簡単なコメントで閉じたいと思っています。


私は毎日今か今かと待ちわびて、TVに釘づけになる程の『宇宙戦艦ヤマト』のアニメ世代でもないし、日用雑貨や玩具に「宇宙戦艦ヤマト」のキャラクターを身のまわりに置くほどの幼少でもなかったので、このアニメに夢中にはならなかったです。ただ、懐かしいアニメであり、師走の話題作としてとり挙げます。


それにしても最近、昔懐かしい「人気アニメ」を実写化した映画が増えました。驚きです。この辺りの視点は、「死の棘」(№29掲載)のブログ話で触れてあります。もう一度くり返すと、依然時代はアニメ全盛期です。現代人の心はキャラ化しています。映画のヒット作は漫画を実写化したもの、ニャンニャンキャンキャンと騒ぐアイドル主演のコミカルな映画が全盛です。近頃は韓国のアイドル出演に黄色い声が発するファンが増えました。バンダイキャラクター研究所の相原博之の分析、「キャラ化するニッポン」(講談社現代新書)は鋭い現代社会論でした。…近年、マンガ原作の映画が目白押しだ。…映画でも、マンガ原作ものが近年ヒットを連発している。「ALWAYS三丁目の夕日」「NANA」「海猿」「タッチ」「デスノート」「ハチミツとクローバー」「どろろ」「さくらん」そして「ゲゲゲの鬼太郎」「蟲師」など、挙げればきりがない。…ここにも「生身の現実世界」よりも「キャラ的現実世界」に親近感を覚える日本人たちの特性を見出すことができるのだ…


「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の実写化映画は、この≪キャラクターのアニメ化≫の社会分析が正鵠を得ているのではないでしょうか ! もう一つ付け加えれば、日本のCG技術の水準が高くなって、いかにもオモチャと模型とスタジオでフィルムを加工したようなチャチで迫力のない実写映画を越えたともいえます。ヤマトとガミラス艦隊のクライマックスの戦闘のVFXシーンなどは、チャチで安ッポい印象を微塵も感じさせなかったです。


今回の「SPACE BATTLESHIP ヤマト」は、ほぼ1977年の劇場版のストーリを基に製作しています。実写化の監督は、「BALAD 名もなき恋のうた」「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督、主演俳優は古代進役に木村拓哉が、森雪を黒木メイサが演じています。その他の俳優も演技のできるベテランが多数出演しています。これだけの俳優が顔を揃えていると俳優のギャラが高くつくだろうなー、生半可の中ヒットで、興行収入が少ないと制作費の赤字を出すだろうなー、と杞憂します。


「SPACE BATTLESHIP ヤマト」のストーリはこうです。

2194年、外宇宙に現れた正体不明の敵ガラミスが、地球攻撃を始める。地球防衛軍は壊滅。ガラミスは遊星爆弾を投下し、人類の大半を死滅。放射能汚染された地球の生き残った人類は、地下での暮らしを余儀なくされる。エースパイロットだった古代進は軍を退き、地下生活をしていた。ある日、地球から14万8千光年先にある惑星イスカンダルから通信カプセルが落下する。そこには、イスカンダルには放射能を除去できる装置があることを告げていた。地球人はイスカンダルの高い科学技術、波動エンジンを搭載した宇宙戦艦ヤマトを再建造し、地球と人類を救うためにイスカンダルへ旅立つ。ヤマトへの帰還を志願した進は、戦闘班班長として乗り込む。戦死した古代の兄・守役に堤真一が演じ、沖田十三艦長に山崎努が演じる。人類滅亡まで残された1年以内に、銀河の彼方にあるイスカンダルへ往復することが出来るのか…?そしてヤマトは苦難を乗り越えて帰還する。


次に、簡単に実写版「ヤマト」までのTVアニメの放映と、劇場版上映の足跡を振り返ってみます。


1977年公開の劇場版「宇宙戦艦ヤマト」では、デスラー総統の妨害をかいくぐり、イスカンダル星にたどり着く。劇場版第2作 「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」(1978年公開)は、大ヒットした前作の続編として制作されます。製作総指揮=西崎義展。原案=西崎義展・松本零士・舛田利雄。監督=松本零士・舛田利雄。宇宙の彼方から全宇宙の征服をたくらむ白色彗星帝国が接近。古代は未知の星から発信されたテレサという女性からの助けを求めるメッセージを受け取る。古代らは宇宙戦艦ヤマトを極秘に出航する。途中、ガミラス星のデスラー総統と再び戦火を交える。


1980年の「ヤマトよ永遠に」は、スターシャの娘・サーシャが登場する劇場版3作目でした。西暦2202年、地球にミサイル型の巨大な物体が地球に着陸。異星人兵士によって、首都は一瞬にして制圧されてしまう。元ヤマトの乗組員たちは、惑星「イカロス」にある宇宙戦艦ヤマトに乗り込むため地球脱出を図る。イカロスには、スターシャの娘・サーシャがいた。


「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」(1981年公開) は、劇場版第4作。TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」の続編。西暦2201年、白色彗星との死闘を終えてから1ヶ月、ヤマトはまた新しい旅へと出ようとしていた。今回は、古代艦長代理による、新乗組員の訓練を兼ねたテスト航海であた。劇場版第5作の「宇宙戦艦ヤマト 完結篇」(1983年公開)は、宇宙の彼方からもたらされた未曾有の危機に、古代たちヤマトの乗組員が命をかけて立ち向かう。地球に迫っている水の惑星「アクエリアス」。地球に大規模な水害をもたらす恐れがあった。艦長古代進が調査のために派遣される。それをディンギル帝国の大機動艦隊が襲撃する。


さてTVアニメの足跡はどうだろうか?

『宇宙戦艦ヤマト』(監督:松本零士。監修:舛田利雄、豊田有恒、山本暎一、舛田利雄。企画: 西崎義展、 山本暎一。原案: 西崎義展、 山本暎一。脚本: 田村丸、 藤川桂介、 山本暎一。キャラクター設定: 岡迫亘弘、 槻間八郎。作画監督: 芦田豊雄、小泉謙三、 白土武、泉口薫。) は、1974/10/06~1975/03/30の日曜日19:30~20:00に放映されました。第一次アニメブームの旗手となった金字塔です。次回のTVアニメ放映までの間に、1977年に劇場版「宇宙戦艦ヤマト」が公開されます。


その後、アニメ人気に乗って引き続き、『宇宙戦艦ヤマト2』は1978/10/14~1979/04/07(監督: 松本零士。プロデューサー: 広岡修、原案: 松本零士、西崎義展、舛田利雄。脚本: 藤川桂介、 館俊介。絵コンテ: 石黒昇 安彦良和。)に再びTVで放映されました。第一次アニメブームを巻き起こした大人気SFの続編。TV放映の期間中の1978年に、劇場版第2作「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」、1980年には続いて劇場版第3作「ヤマトよ永遠に」が公開されます。


さらにその後、衰えない高視聴率とアニメファンの人気に答えて、TVアニメ「戦艦ヤマト III」が、1980/10/11~1981/04/04(監督: 松本零士。原作: 松本零士。脚本: 山本暎一、藤川桂介、総作画監督: 小泉謙三。SF設定協力: 豊田有恒、 星敬、出渕裕。アニメーションディレクター: 棚橋一徳)が放映されます。テレビシリーズ第三弾となります。1981年には劇場版第4作の「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」、1983年に劇場版第5作の「宇宙戦艦ヤマト 完結篇」が公開されます。


②2本目の「武士の家計簿」は、歴史研究家の磯田道史の、御算用者として、代々加賀藩の財政に関わってきた猪山家の幕末維新の実生活を描いたノンフィクションストーリ「武士の家計簿」「加賀藩御算用者の幕末維新」を、森田芳光監督が映画化したものです。世間体に惑わされず、つつましく堅実に生きた加賀藩の下級武士・猪山直之を演じた堺雅人と、直之と共に借金生活を共にした献身的な妻・お駒役の仲間由紀恵が好演でした。近代の家族形態の崩壊が逆に、日本人の伝統的な夫婦の姿と、家族の親密な絆に新鮮な感動を呼ぶのかもしれません…!、


ハリウッドの新作公開だけでなく、近頃の邦画もテレビコマーシャルが盛んになりました。「刀でなく、そろばんで、家族を守った侍がいた」ーというコピーが頭に焼き付いてしまう位くり返し流れていました。ここまで宣伝しないと観客をスクリーンまで引っ張ってくれないものなのか…と、映画界裏側の厳しい競争を感じさせました。


映画宣伝に期待して映画館で見ると、そのつまらなさに落胆させられる映画も多くある中で、、「武士の家計簿」は期待通り面白かったです。


出費がかさんだ猪山家は、父の信行(中村雅俊)が重ねた借金もあり、長男の直之は家計の改革を宣言する。贅沢で余分で家財を一切処分して、質素倹約の生活に徹する。倹約生活が続く中、直之は4歳の息子・直吉にも御算用者として生きる道を叩き込む。家計簿をつけさせ、お金を管理させ、そろばんを弾かせる。直吉は早く11歳で算用場に見習いとして登城する。


元服した成之はやがて明治維新を迎える。新政府軍の大村益次郎にそろばんの腕を見込まれ、軍の会計職に就く。その大村も刺客の手により暗殺されてしまう……。


「武士の家計簿」の面白さの一つは、古くて新しい伝統的な日本の家族形態を身近に新鮮に感じた点もある。もう一つは、幕末維新の日本の激動期を下級武士の生活の視点で描いている処にもあるだろう…! 武士といえば刀を腰に差し、士農工商の上でアクラをかいている階級ばかりと錯覚しますが、借金苦の下級武士もいて、商人のように算盤ばかりはじく侍もいるのかと、見えなかった武士の姿を見せてくれる処もあるだろう。


やや長くなるので、3本目の「KISS&KILL」、4本目の、「ロビン・フッド」、5本目の「ノルウェーの森」は、次回に掲載いたします。


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