「鬼平犯科帳-猫じゃらしの女」★映画のMIKATA【9】富永卓二監督★映画をMITAKA… | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

◆スタッフ
原作:池波正太郎/企画:市川久夫・鈴木哲夫/脚本:安部徹郎/
音楽:津島利章/監督:富永卓二/プロデューサー:能村庸一・佐生哲雄/撮影:伊佐山巌/照明:中島利男/美術:倉橋利韶/録音:中路豊隆/
編集:園井弘一/殺陣:宇仁貫三/

◆キャスト

中村吉右衛門/尾美としのり・三浦浩一・蟹江敬三/ゲスト俳優:池波志乃・三ツ木清隆/制

フィルム・データ
本編47分/放映:1990年11月28日/
製作年度:1990年/


流石埜魚水の阿呆船、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

「鬼平犯科帳」」シリーズには、魅力的で印象的な女たちがたくさん登場します。平蔵の妻・久栄を演じる多岐川裕美も魅力的ですねー。シリーズの全編を通して登場する妻・久栄は、見慣れているせいか多岐川裕美以外のどんな女優も鬼平の妻に相応しくないとさえ思えてきます。密偵・おまさを演じる梶芽衣子も魅力的ですね。盗賊の引き込み女だったおまさは、ドスや白刃をかいくぐって来ただけあって度胸がすわっていて貫禄があります。女囚「さそり」を髣髴させます、でなければ女の密偵役はつとまらないね…。


「鬼平犯科帳」」シリーズに登場する女たちは、レギュラーの女たちばかりではありません。事件の中にも、この女がいなければ物語の生彩を欠くという印象的な女優が随所にいます。女たちの登場は、鬼平の物語を盛り上げ、この女たちがいて初めて物語は佳境に入ります。「鬼平犯科帳」」シリーズが、ドキドキ、ワクワク、フアフアと面白いストーリを展開するためには、この女優のあの演技が、あの女のこの役柄が重要な役割を持っています。


「麻布一本松」で市口又十郎と惚れ合っているお弓(水島かおり)も印象的な女です。泥水を飲んだ過去があるにしてはオキャンであどけない明るさがありました。「山吹屋お勝」では、平蔵の従兄にあたる巣鴨の大百姓・三沢仙衛門が後妻に願った料理茶屋の女中・お勝もまた印象的です。そして、密偵・伊三次(三浦浩一)が通う娼婦のおよね(池波志乃)がまた「猫じゃらしの女」では脇役だが、非常に印象的な女の一人です…。


男心に男が惚れたでは、村田英雄が熱唱する極道任侠の演歌になってしまうが、「ベランメエ」で腕白坊主のような平蔵の気風の好さ、人の命を無残に踏み潰す悪をとことん嫌う鬼の平蔵のまっすぐな正義感、女に優しく男にも細やかな配慮を忘れない人情に厚い鬼の平蔵、料理の味にうるさく酒がめっぽう強い粋で風流な平蔵が、武家社会の厳しい封建秩序にも拘らず、映像の中で自由闊達に生きている…。私たち、会社組織の中でアップアップしている現代人は、鬼の平蔵のドラマのペルソナに、理想の上司、理想の亭主、理想の家庭、理想の日本人の姿を重ね合わせているかもしれません。

密偵の伊三次は、独り身の気楽さから住まいを持たずに、ある時は清水門外の役邸内にひと間を貰っていて寝泊りすれば、ある時は深川の船宿「鶴や」の粂八のところに厄介になり、ある時は本所二ッ目の軍鶏鍋や「五鉄」へ泊り込むこともあった。


いろんなところに寝泊りしている伊三次は、今晩は上野山下の下谷町二丁目の提灯店の娼婦およねと楽しんでいた。およねは三年前から伊三次の馴染みの女であった。


伊三次が贔屓にする「およね」は、少し細身の池波志乃が演じる。猫が竹籠の中の鈴とジャレつくように、おしのは酔いしれて小柄でしなやかな肢体をくねらせて男とじゃれきながら踊る…。おしのはどうやら、客の腰にこの猫じゃらしを結びつけて、この鈴音を聞きながら男に抱かれ恍惚感を味わうようだ。


この晩、みよしやのおよねは、遊んだ客を経師屋の「うささん」と呼び、その男から預かった一握りほどのある物を伊三次に見せる。およねは中身を絶対見るなと言われていたのだが…。預かった品物は、紅絹の布に包んだ鍵の蝋型を入れた袋だった。やがて、伊三次はその男が鍵型師の卯之助であることを知る。


伊三次は卯之助と蝋型から、なにやら盗賊の危険な血の匂いを嗅いだ。早速に密偵の勘が働き、粂八につなぎを付けて、探り始める。


卯之助は盗賊「伊勢の甚右衛門」の手下の子助と彦造に、複雑で込み入った鍵の蝋型を模造する職人技を軽く見られたために、二十五両で蝋型を渡すのを拒み、「七十両でなけれは、この蝋型は売れない」とふっかけたのだった。甚右衛門は卯之助を拉致して蝋型の在り処を拷問して白状させたのだが…。卯之助はおよねに型を預けたことを吐くが、型は既に伊三次によってすりかえられていたのだった。


およねのもとに盗賊の手下が袋を受け取りに来る。伊三次は急遽蝋型の代わりに杯を二つ合わせて手ぬぐいでくるんだものを入れ替えた袋をおよねに手渡す。伊三次はおよね部屋に残り、およねを危険から守る決意をする。一方、粂八は蝋型を平蔵に送り届け、袋を持った盗賊の手下を尾行する。盗人宿に監禁されていた卯之助も発見し、盗賊たちから瀕死の卯之助を助け出す。


卯之助の逃亡を知った盗賊たちはすぐさまおよねを襲撃しようとおよねのいる岡場所「みよしや」に向かう…。何も知らないおよねに甚右衛門の一味が迫りつつあった。しかしそこには、平蔵たち火盗改方が待ち構えていて、盗賊たちを一網打尽にする。


平蔵は、今回捕り物騒ぎでお手柄だったおよねに小判二両を手渡すように包み、伊三次には、およねが好きなら、「いっそ、女房にしたらどうだ。おれが手を貸してもいいよ」とさえ労いながら言う。


長谷川平蔵の密偵伊三次への温かい心遣いは、ホロリとさせるシーンです。平蔵は、伊三次がその昔、関の宿場女郎達に育てられた孤児であった事を知っていた。そして、おみねもまた勢州関の生まれで、その母「お市」は関の宿場女郎をしていた。これは、池波正太郎の小説にしか書かれていないのだが、実は、伊三次とおよねの意識の闇の中に隠された過去の記憶であった。女郎のお市は、小さい頃の伊三次をことさら可愛がってくれたのであった…。脚本からは、この伊三次とおみねの深い因縁の糸、最後の最後まで絡む伊三次とおみねの哀しい因果が省かれてしまっているのだ…。この点に関してだけは、脚本家の安部徹郎氏にダウトをかけたいです…!


この因果と因縁のストーリ展開がなければ、「猫じゃらしの女」(第二シリーズ第六話)に続いて、おしのが登場する鬼平犯科帳の「五月闇」(第六シーズ11話)は、物語に深みと奥行きがなくて面白くないですね…。


むかし密偵・伊三次は、今は兇賊となった強矢(すねや)の伊佐蔵の女房を横取りして、彼に重傷を負わせたことがあった。伊三次はこの「五月闇」で、伊佐蔵のこれでもかこれでもか苦しんで死ねー、とい怨みのこもった刃に倒れる…。「猫じゃらしの女」に続いて、池波志乃と三浦浩一の二人が因果と因縁のドラマを演じています。

私は今の20代の若者たちに、職にあふれて満足に家庭をもてない独身男たち未婚女たちが増えている…、企業につとめても派遣社員だ非正社員だパートだと、満足な給料をもらえない独り身のわびしい男たち孤独な女たちが増えているのが少し心配です。40代になってもまだ童貞だという純情な男や、30代になっても男の肌を知らない可憐な処女たちが増えているのもまたやや気になります。いやいや勿論、十代で麻薬で逮捕され、美人局の恐喝さえするその反対もありますよ…!


冗談半分で言えば、結婚・離婚すれば、女はどこの馬の骨だか分からない不良外人に惚れてしまい、「ダーリン」は外国人と惚気てる異文化呆けの大和なでひこたちよー。男はボインボインの金髪のグラマーに色目を使い、ハンバーガとコカコーラに洗脳されている益荒男たちの「性」の貧しさよ…。これは「国家戦略室」で日本人の結婚問題を真剣に対策を議論してもいい現状ではないでしょうか。でなければ、人口の少子化傾向は止まりそうもありません、国力は衰える一方です…。