★映画のMIKATA【48】周防正行監督・脚本「シコふんじゃった。」★映画をMITAKA… | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

◆スタッフ
監督 周防正行/ 製作 大映 キャビン /脚本 周防正行/監督: 周防正行 /製作: 平明暘 山本洋 /プロデューサー: 桝井省志/企画: 島田開 石川勝敏/撮影: 栢野直樹/美術: 部谷京子/編集: 菊池純一/音楽: 周防義和/助監督: 高野敏幸/

◆キャスト
本木雅弘(山本秋平)/清水美砂 (川村夏子)/竹中直人 (青木富夫)/水島かおり(朝井知恵)/田口浩正(田中豊作)/宝井誠明(山本春雄)/梅本律子(間宮正子)/松田勝(堀野達雄)/宮坂ひろし(北東のケン)/片岡五郎 (主審・林)/六平直政 (熊田寅雄(OB)/村上冬樹(峰安二郎(OB会会長)/桜むつ子(穴山ゆき)/柄本明 (穴山冬吉)/

◆フィルムデータ

配給 東宝/公開 1992年1月15日 /上映時間 105分/製作国 日本/


流石埜魚水の阿呆船、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

12月の★映画のMIKATA★映画をMITAKA…は、この映画だけはコメントをブログに載せたい、この映画のこのシーン、あの映画のあの名台詞に注目したい、私の映画鑑賞はこの映画をこう見たー、あの映画のあの名場面が懐かしいーという、あれやこれやの印象的な新作、懐かしの旧作の洋画邦画にコメントをつけて、アップロードしたいと思っています。


勿論、プログにアップロードしなくても、私は、12月もいろいろな映画を見るため、足繁く映画館に通っています。今日もあの「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督の映画「アバター」を見てきました。期待に胸を膨らませすぎたせいで、却ってストーリが単純なので、期待と想像は、シューと凋んでしまいました。ドアーを出る時に、インディアンと騎兵隊の西部劇のパターンではないか…と割り切ってしまった途端に、3Dの興奮は微塵に砕けました。


レアな特殊鉱物を手に入れたい地球の企業が、西部開拓をすすめる鉄道会社と騎兵隊。5光年離れた惑星「パンドラ」がインディアンの先祖代々の土地。翼竜が空を飛び山々が宙に浮かぶパンドラの幻想的で神秘的な光景、古生代の未知の生物たちは西部劇の開拓風景とインディアンの風俗習慣…。車椅子の主人公で元海兵隊員のジェイクは正義の味方で保安官。先住民ナヴィと族長の娘ネイティリは、保安官とインディアンの娘との淡い恋物語。パンドラの中心である母なる存在「エイワ」はインディアンの聖地…。空を飛ぶ始祖鳥のような大鳥は、野生の白馬だろうか…、こう置き換えると、まさに幌馬車の西部劇。


でも、3Dの立体映像は迫力があります。今、監督と小峰隆の対談本「豪快!映画学」(集英社インターナショナル)を読んでいる最中なので、より詳しいコメントは次回に譲ります。


年末年始は面白い映画が目白押しですね。「釣りバカ日誌ファイナル」も「おとうと」も見たいです。「インビクタス/敗れざる者たち」「ゴールデンスランバー」も「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」も「サロゲート」も見たいですね…。やはり、邦画が若干弱いのかな…。

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さて今月の第三弾は、既に名作になっている周防正行監督の「シコふんじゃった。」をご案内します。


寡作で有名なこの監督作品で、私が観賞した映画は三作品。若い修行僧達のポップスな日常と、現代仏教をコミカルに描いた『ファンシイダンス』(1989年、本木雅弘主演)。キリスト系大学内の弱小相撲部を舞台に、伝統的な国技である相撲、スポーツと日本文化の神事である相撲の間を揺れる角界を見事に皮肉った『シコふんじゃった。』(1991年、本木雅弘主演)。この作品で第35回ブルーリボン賞作品賞ならびに第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した。平凡な中年サラーマンのささやかな冒険と、社交ダンスに奮闘する男の滑稽な姿を描き、日本アカデミー賞の監督賞と脚本賞を受賞した『Shall we ダンス?』(1996年、役所宏司主演)。10年の長いブランクの後で発表され、電車内の痴漢冤罪をテーマに、日本の警察機構と刑事裁判に対して疑問を投げかけた『それでもボクはやってない』(2007年、加瀬亮主演)を発表した。2007年度のキネマ旬報ベストワン、2008年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したー。次はどんな作品をーと想像するだけで楽しいです。


さて、映画「シコふんじゃった。」のストーリは…。


キリスト教系の教立大学4年の秋平は、父親のコネで一流商社の就職も決まり、残りわずかな大学生活を思いっきりエンジョイしていた。ある日、卒論指導教授の穴山に呼び出される秋平だが、授業に一度も出席したことのなかった秋平は、穴山から卒業と引き換えに、彼が顧問をしている廃部寸前の相撲部の試合に出るよう頼まれる。楽して人生を乗り切ろうとした典型的現代学生の山本秋平だが…。


ところがその相撲部には留年を重ねた8年生の青木富夫(竹中直人)一人しか部員がいなかった。相撲をこよなく愛しているが、これまで一度も試合に勝ったことがないという有様。大学の相撲対抗試合に出場するため部員を募り、漸く、鈍重でデブのクリスチャン田中(田口浩正)と、大学院生のマネージャー(清水美砂 )が、秋平の弟である春雄(宝井誠明)の入部に成功する。


さらに春雄に思いを寄せるデブ女の正子(梅本律子)がマネージャーとして入部する。このメンバーで何とか団体戦に出場するが大会では、3部リーグで最も弱そえ相撲部にさえ惨めな惨敗ー。慰労会ではOB((熊田寅雄)から痛罵される。秋平はそれに反発して、「今度こそ勝ってやる!」と、一度試合をすれば退部してよいという約束を忘れて、次は絶対に勝ってみせると豪語、相撲部復活を宣言してしまう。こうして3カ月後のリーグ戦を目指すことになる。


さらに、イギリスからの留学生でレスリングの選手スマイリーも加わる。彼は人前でお尻をさらけ出すことを頑として拒み、まわしの下にタイツを着けているので試合では反則ー。スマイリーは不戦勝負けを続ける。


名門相撲部復活をかけて相撲部顧問で元学生横綱の穴山教授(柄本明)の田舎で厳しい夏合宿を続けるー。もともとは相撲の素人で、すぐに強くなるはずはない。小学生の腕白相撲の力士たちにさえ軽く投げ飛ばされる。穴山教授もそれを見てついに本腰を入れ…、そしてリーグ戦へ出場する。


3部リーグとはいえ、やや苦戦気味、それでも何とか勝ち進む。今まで一度も勝った事のない青木さえも滑稽な勝利を収めた。対抗戦最後の決勝で優勝校とぶつかる。スマイリーも仲間が奮闘する姿を見て、タイツをはぎ取り土俵に勇んで出場する。そして、見事に教立大学相撲部は優勝するのだった…。


卒業単位と引き換えに試合に出場する羽目になった秋平であったが、しかし相撲の世界に何か熱く魅力的なものを感じ始める。やがて彼は、いつしか相撲を心から愛するようになり、ひとり相撲部に残る決意めてシコを踏みはじめる…。
***
主人公の山本秋平を演じた本木雅弘のマワシ姿が凛々しいです。彼のあふれるばかりの筋肉質の野性味と、繊細で肉体的な演技の上手さは、この時期から現れています。役者としての彼は、結婚して家庭を持ってから生活が充実しているからなのか、あるいは好い作品と配役と監督に恵まれているせいなのか…、見て楽しい映画やドラマが多いです。


このブログ(★映画のMIKATA②★映画をMITAKA・・・)でも既に掲載していますが、第81回アカデミー賞外国語映画賞、第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した滝田洋二郎監督「おくりびと」では、楽団のチェロ奏者をあきらめ、夢を捨てて故郷の山形に都落、わからないまま納棺士として働くことになった主人公小林を本木雅弘 が演じています。特に葬儀の古いしきたりや、葬祭の細かい儀式めいた決りごとの多い納棺士独特の、繊細な演技表現と柔軟な身体演技は好かったです。


私はNHKTVのドラマ「坂の上の雲」の本木雅弘もよく見ています。明治の海軍を率いた秋山真之を演じた本木雅弘もまた、彼の繊細な演技とは全く対極の肉体的な野性味がよく出ていて、亜細亜の中の小さな島国日本から、世界の海に船出した明治の剛直な軍人、伊予の無骨な下級武士独特の奔放さを魅力的に演じていました。



2010年は、どうなるのかなー、時代は司馬遼太郎でしょうか、政治の季節なのでしょうかー。ラジカルに人間存在を問う、哲学的に歴史と人間の真実を求める改革の時なのでしょうかねー。西郷隆盛の映画が見たいですね。



この映画「シコふんじゃった。」は、本木雅弘の肉体的な野性味と、繊細で柔軟な、二つの演技力がよく現れていました。


周防監督の評価が漸く認められた作品なので、監督作品から放出される要素、コメディーな笑いと温かい可笑しみ、あるいは、主人公に映画のテーマを冠せながら、ジワッーと時代の矛盾に近づき、シリアルに社会問題の輪郭を描く映像手法が、この映画「シコふんじゃった。」ではよく表現されています。


実際、この映画を見ながら私はよく笑いました。相撲部に8年生もいて一勝もしたことがないの青木(竹中直人)が、緊張のあまり下痢したお尻をヨジリながら一勝して笑わせるペーソスは周防作品ならではの温か味です。


あるいは、リーグ優勝校の主将と土俵上で頭を低くして四肢を踏んばり、筋肉を膨らませてがっちり取り組む本木雅弘のマワシ姿は、凛々しくも野性味がありました。この主人公に、社会の中で健全な精神を育てるスポーツと、肉体の娯楽と快楽としてのスポーツの位置、身体の運動と肉体の強靭さを競うスポーツとしての「相撲」と、日本の伝統的な神事としての「相撲」の間を揺れる角界の矛盾を具現させています。


相撲界は今揺れています。一つは力士の麻薬所持による逮捕者がでた問題。二つは相撲部屋での稽古が虐めとリンチになって修行中の若い力士を死なせた相撲部屋の体質の問題、角界の古い体質と人材育成の未熟さー。重ねて三一つは、伝統の国技でありながら、「横綱」「大関」は外国人力士が続いています。柔道が伝統的な格闘技の「武道」から国際的なスポーツに脱皮して、オリンピックの競技種目になっているのにも拘らず、相撲は旧態依然、国技からスポーツに脱皮できていません。却って、朝青龍が優勝をかけた汗の飛び散る好取組、拳を握る最後の一番に勝って思わずガッツポーズをしたことが、審議会で問題視されたりしました。


こう見ると、周防監督の次作の映画が期待できます。「それでもボクはやってない」の次の作品では、私は是非とも自衛隊を滑稽に可笑しく描いて欲しいです。さもなければ、愉快で奇想天外なホームレスを主人公にしてみたら面白いですね…。


流石埜魚水の阿呆船、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

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