★映画のMIKATA【33】スティーブン・ダルドリー監督「愛を読むひと」-1★映画をMITAKA | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

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都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。

原題:The Reader/監督:スティーブン・ダルドリー/製作:アンソニー・ミンゲラ、シドニー・ポラック/製作総指揮:ボブ・ワインスタイン、ハーベイ・ワインスタイン/原作:ベルンハルト・シュリンク/脚本:デビッド・ヘア/撮影:クリス・メンゲス、ロジャー・ディーキンス/美術:ブリジット・ブロシュ/編集:クレア・シンプソン/音楽:ニコ・ムーリー/製作:2008年アメリカ・ドイツ合作映画/


上映時間:2時間4分/配給:ショウゲート/オフィシャルサイト: http://www.aiyomu.com/  


ケイト・ウィンスレット(ハンナ・シュミッツ )/レイフ・ファインズ(ミヒャエル・ベルク )/ブルーノ・ガンツ(ロール教授 )/デヴィッド・クロス(少年時代のミヒャエル )/レナ・オリン(ローゼ・マーター/イラーナ・マーター/二役
)/アレクサンドラ・マリア・ララ (若き日のイラーナ )/ハンナー・ヘルツシュプルング:ユリア(ミヒャエルの娘) /ズザンネ・ロータ :カーラ(ミヒャエルの母)


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ヒットラーとナチズムとユダヤ人虐殺を映画にした「アウシュヴィッツ」ものは数多くあります。例えば、ジョージ・スティーヴンス監督の「アンネの日記」(1959年)は、ユダヤ人家族のオットー一家が、屋根裏部屋でした隠遁生活を、娘アンネが書き残した日記が原作ですが…、もうすでに古典になっています。


例えば、スティーブン・スピルバーク監督の「シンドーラーのリスト」(1993年)は、戦時下での「人間性」の問題に関心の種を蒔きました。私などは映画の持つ波及力と底力、停滞した状況意識を重心移動させる梃子力、映画のトリックスター的パワーに驚きました。この映画に刺激されて、日本でも戦時中にユダヤ人を救ったシンドラーがいた、約6000人のユダヤ難民にビザを発行して救った杉原千畝が忘れられた日本人として歴史から発掘され、話題になりました。


例えば、オリヴァー・ヒルシュピーゲル監督の「ヒットラー最後の12日間」(2002年)、ステファン・ルツォヴィツキー監督の「ヒットラーの贋札」(2007年)、最近見た映画で、総統の暗殺を策謀するナチ将校の暗殺未遂計画を映画化した、ブライアン・シンガー監督の「ワルキューレ」(2008年)も印象に残ります。


さらに私には、ロバート・ゴードン・エドワーズ監督の「愛の嵐」(1973年)もまたその一本に入れておきたい作品です。元ナチス親衛隊員のマックスと、ゲットーで彼の性の愛玩物になっていた美貌の少女ルチアとの再会と、二人の倒錯したエロスの世界を描いた作品は、また別の意味で印象に残っています。


そして、スティーブン・ダルドリー監督のこの映画、「愛を読むひと」もまた、直接にナチズムとヒットラーを描いた映画ではありませんが、1960年代のナチズムの戦争犯罪を裁いた「アウシュヴィッツ」裁判を背景としたもので、やはり戦争と人間を描いた映画の一本としてあげなくてはならない作品ではないでしょうか…。


15歳の少年、ミヒャエル・ベルク (脚本では少年はマイケル)は偶然 街中で知りあった熟女ハンナ・シュミッツの部屋に通され、彼女の美しいトップレス姿と豊満な肉体をちらりとかいま見て、性に目覚める…。ポルノ映画のように解説すれば、それから後、21歳も年上の電車の車掌ハンナのアパートに足繁く通い、性の手ほどきを受け、男の性の快感を開花させ、彼女の肉体に溺れてしまう…。15歳の少年の青い性、年上の女性との甘い情事の官能映画です…。


初めは、幼い15際の少年と、元収容所の女性看守ハンナとの倒錯した愛の物語であり、「愛の嵐」に近い作品であるのかと思っていましたが、予想に反して、かなり真面目に正面から戦争犯罪を描いています。


どちらかと言うと、「シンドーラーのリスト」に近い作品、アカデミー賞を受賞してもいいような可也ヒューマンな映画です。


映画は、1958年の第二次世界大戦後のドイツを舞台にしています。表現をかえるならば、15歳のマイケルは、年上の女性ハンナと淡く美しい恋に陥る。学校の帰り道にハンナの部屋に通い、夏休みにハンナと共に自転車で旅をし、ハンナとの情事にのめり込む。


そして、請われるままに始めた本の朗読によって、2人の時間はいっそう濃密なものになる。ハンナはミシャエルに本の朗読を頼み、彼は学校の教材をベッドの上で、ホメロスやキケロやシラーを読んだ…。いつしか、朗読の後に情事…、それが二人の愛の儀式となり始める。


ハンナ役を、『タイタニック』のヒロイン、ケイト・ウィンスレットが演じ、彼女に献身的な愛をささげる男をレイフ・ファインズが演じています。初め、ケイトが 『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』に出演するので、ニコール・キッドマンがハンナ役で撮影がスタートしたところが、2007年の撮影から5ヶ月後に、彼女の妊娠が発覚、再びケイトがハンナ役を演じることになったそうです。


余談になりますが、アメリカのアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞、イギリスのアカデミー賞でも主演女優賞を獲得したケイト・ウィンスレットに、「プレイボーイ誌」が、ヌード撮影と掲載を熱烈にオファーしているそうです…。


これまで、同誌でヌードを披露した女優は、マリリン・モンロー、シャロン・ストーン、パメラ・アンダーソン、シャーリーズ・セロンらがいる。ケイト・ウィンスレットのヌードが掲載されるとすれば、次の作品の宣伝のために脱ぐかもしれません、私も大いに期待したいです…。


もしも、冷淡でよそよそしい美の雰囲気を放つニコール・キッドマンが、熟れた裸の演技をべッドでさらす、さらに老いたハンナの姿を演じていたとしたら、 どんな映画になっていたのだろうかな…と、想像すると面白いです。


さて、ある日突然、ハンナはミシャエルの前から姿を消してしまう。時は流れ、8年後。大学で法律を学ぶマイケルは、傍聴した戦争犯罪を告発する法廷の被告席にハンナを見つける。マイケルが傍聴した裁判で見たのは、戦時中の罪を問われている戦争犯罪の被告人ハンナだった。


裁判に通う内に彼女が必死に隠し通してきた秘密にようやく気づき、衝撃を受けるのだった。彼女は、自分が文盲であることを秘密にしたために、裁判で不利な証言を黙認して、無期懲役を宣告されてしまう。


かつて愛した人への忌まわしい過去に苛まれながら、美しいハンナとの過去の甘い記憶を胸に秘めて、、ミシャエルはハンナのために物語を朗読したテープを刑務所に送り続ける…。ミシャエルは、再び彼女の「朗読者」になる…。


彼女が文盲であることの秘密は、依然、ミシャエルの意識にくすぶり続けています。再び裁判から10年後に、刑務所で老いたハンナと会う。


意外や意外、彼女の釈放が決まり、ミシャエルがハンナの社会復帰と老後を引き受けたにも拘らず…、彼女は釈放直前に首吊り自殺してしまう。この結末にも、何か不自然なものを感じます。


また、次回にこの続きを掲載します。


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