元妻とは四年付き合って、結婚した。

結婚して四年後に子どもを授かり、その翌年、僕たちは離婚した。

 

こうやって結果だけを並べると、僕たちの関係は「うまくいかなかった結婚」という一言で片付けられてしまうのかもしれない。

でも、今になって昔のことを思い返すと、まず浮かんでくるのは、単純に「楽しかったな」という気持ちだ。

付き合っていた頃は、とにかく楽しかった。

年の差もあったし、価値観も違った。
「なんでそうなるの?」と思うこともたくさんあった。

でも、当時はそのズレすら面白かった。

違うから笑えたし、違うから新鮮だったし、そんな彼女を愛おしいと思っていた。

 

入籍した年に、コロナが流行った。

両親へ挨拶に向かう日、羽田空港行きのバスの車窓から見えたダイヤモンド・プリンセス号。その光景を、今でも鮮明に覚えている。

世の中全体がどこか不安で、先の見えない時期だった。

二人とも自宅でリモートワークをして、一日中同じ家にいるようになった。

普通なら息が詰まりそうなものだけれど、僕はむしろ、

「ああ、パートナーがいるって、こういうことなんだな」と思った。

世の中が大変なときに、同じ家に誰かがいる。
くだらない話をして、一緒にご飯を食べて、仕事をして、またくだらない話をする。

それだけで心強かった。

大げさかもしれないけれど、世の中に降ってきた苦難みたいなものを、二人で乗り越えているような感覚すらあった。

 

2人で旅行もした。

ものすごく高級なホテルに泊まるわけでもない。
特別な料理を食べるわけでもない。

それでも、二人で知らない場所へ行くだけで楽しかった。

そして僕は、旅行そのものと同じくらい、旅行が終わった後が好きだった。

「あそこ、よかったよね」
「あそこのパンやばかったよね」
「あのとき面白かったよね」

そんな話を後になって彼女がしてくれると嬉しかった。

自分にとって楽しかった時間が、相手の中にもちゃんと残っている。

それが、なんだかすごく嬉しかった。