Believe 38 | 山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

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つながる花2Believe1/37





Believe 38/Side-S





「・・・しょぉちゃん、おれ、誰かを本気で愛すると、


その人と想いが通じてるだけでどこまでも強くなれるって初めて知ったよ・・・。」





俺の胸に頬を付けて微睡(まどろ)む雅紀が


左手で鳩尾(みぞおち)に指を沿わせながら独り言のように呟く。





「・・・俺は・・・、



本気で愛すると自分の中の常識も何もかも捨てて


我儘になるんだって気付いたよ・・・」





サラサラとした雅紀の細い髪を指で掬っては零しつつ、


天井のライトをボンヤリと眺めた。





「・・・正直、『好きな人の幸せのため』なんて、



キレイゴトじゃ済まない程 我儘に


雅紀のことを愛しちゃってんだよなァ・・・」




「でもそれってさ、」





ムクリと頭を持ち上げて


腹這いに態勢を変えて雅紀が俺を見下ろす。





「しょぉちゃんの飾らない、むき出しのキモチってことでしょ?」





そう言って、唇に触れるだけの優しいキスをして





「そんなワガママはおれからしてみたら嬉しい以外の何でもないよ?くふふふ、」





オレンジ色の灯(ライト)を背にした雅紀の輪郭が柔らかく光る。





「・・・天使かよ・・・」



「くふふ、何ソレ?」





耳を擽るように笑う雅紀に腕を回し


抱き寄せて愛しい重みを胸に受け止めた。





幸せな、時間。




大切な人を全身で感じながら目を閉じる。





遠のき始めた意識の中、



雅紀が俺の手を取って



指を絡めたような



気がした。













カーテンの隙間から零れた光が閉じた瞼を照らし、


意識が少しずつ浮上する。




無意識に左手でシーツを辿り雅紀を探したけれど温もりに出会えず


湧き上がった胸騒ぎが一気に意識をクリアにした。





「雅紀!」





いないかもしれない、


そんな気がして部屋を飛び出すと


キッチンからエプロン姿の雅紀がヒョコッと顔を覗かせた。





「あ!起きた?しょぉちゃん おはよ♡」


「あ・・・、」





そうだ、ココは雅紀ンちだった。


いなくなるはずないか・・・





すっかり覚醒した視界には


雅紀の家のリビングが映っていた。





「・・・はよ。」





ポリポリと指で顳顬(こめかみ)を掻きながら


雅紀の姿を見に足を進める。





「くふふっ、しょぉちゃん すげー寝グセ!


今からフレンチトースト焼くからダッシュでシャワー入っておいでよ、ダッシュでだよ?」





雅紀がカウンター越しに笑って、





「あぁ、サンキュ、そうするわ、」





俺は幸せの続きに心底安堵して





「ンまそ♡」





雅紀の背後に回って


後ろから抱き締めて


肩に顎を乗せると




雅紀が自然と小首を傾げるようにこっちを向いて




チュ、




バターの香りのする唇が


俺の唇を啄(つい)ばんだ。





「フ、」

「くふふっ、」





照れて下を向くそのサクラ色の頬に


今度は俺から啄ばむようなキスをして





「じゃあ、行ってくるわ、」





ニヤニヤと悦びを噛み締めながら


バスルームに向かった。











「ンまかった!ご馳走様!」



「ごちそうさま!


ちょっと焦げちゃってたね、ごめんね?くふふっ!」



「いやそれがまた美味いんだって、」



「そうだよね!ちょっとくらい焦げてる方がね!くふふふっ!」



「いやマジで美味かったわ、」





せめて、とコーヒーのお代わりを二人分、マグに注(つ)いで椅子に腰を下ろすと、





「あ、ありがと、いただきます、」





と小さく早口で言った雅紀が一口飲み込んでマグを置いて





「おれ しょぉちゃんに一個お願いがあるんだけど、」





と、真面目な顔で真っ直ぐに見てきた。





「なに、なに、なに?!」





怖ぇ、なんだよ急に改まって、




動揺する俺にお構いなしに雅紀は言葉を続けた。





「おれ、



・・・会っちゃダメかな、


話、したいんだけど。」





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