(2)
「あ、そうだ、コレ、」
翔ちゃんがバッグから出して僕の前に置いたのは、
僕がいつもつまみに食べてるビスケットだった。
「あ、ありが、」
普通すぎる翔ちゃんの優しさがグッと胸に迫って。
我慢してた涙がまた溢れて。
「ぅ、・・・ふふ、ごめ、・・・っっ、」
思わず膝を抱えた。
フワって、翔ちゃんのいい匂いがして近くに来たのが分かって
次の瞬間、肩を抱かれて、頭に翔ちゃんの掌を感じた。
「・・・まぁ、悔しいよなぁ〜、」
そう。
悔しかった。
すっごい重圧に耐えて
あんなに頑張ったけど。
一生懸命やったけど
かんじゃったし
進行飛ばしそうになっちゃったし
反省点がいっぱいすぎて
僕に期待を寄せてもらったたくさんの人に申し訳なくて
期待に応えられなくてごめんなさいって
やっぱり僕には荷が重すぎたんじゃないかって
そう思ったら自分の力量のなさにただただ悔しくて。
それを翔ちゃんは分かってくれてる、そう思ったら胸の深いところが熱くなって。
「・・・ぅぅ、」
どうしよう、
顔を上げられないくらい、胸が押しつぶされそうに苦しい。
でも。
背中をゆっくりさすってくれる翔ちゃんの手に
だんだん胸の痛みが癒されていくのを感じて
「・・・はぁ・・・、」
深く、
息を吐き出した。
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