君がいるから *1S
「ン♡」
翔ちゃんからの甘いキスが
胸の内側にくすぐったい歓びを植え付ける。
明日は翔ちゃんとデートだ♡
チュ、
「くふふふっ、ね、どこ行こうね?」
「うん、どこ行こうね?」
翔ちゃんの声が優しくて『ダイスキ』が溢れてくる。
「やっぱ夏を感じられるトコかなァ、」
翔ちゃんの言葉で脳裏にいつかの千葉での1日が蘇る。
おれも翔ちゃんもあの1日が忘れられなくて
ディスクに落として保存用も作ったし
いつでもすぐに観れるようにHDD本体からも消していない。
「海、かな、」
「海、だねっ、くふふっ!」
満場一致の行き先に、
また嬉しさとダイスキが生まれて溢れていく。
*
*
*
「お疲れ様でしたっ!今日はありがとねっ!」
ラジオ収録が済んで、
マネージャーにお礼を言って。
今ならおれ飛べるんじゃないかなってくらいの足取りの軽さで
近道の坂道を走って下って翔ちゃんとの待ち合わせ場所に向かう。
坂の先の大きなイチョウの木の下のゼブラゾーンに見慣れた車を見つけて
走ったからじゃない鼓動がトクンと胸を打った。
近付くのと同時に歩道側の窓が降りて、
サイドミラー越しにサングラスをかけた大好きな人が微笑んで
窓から覗いた太い腕が掌を挙げて
ヒラヒラと合図を送って来る。
おれは走っていた歩幅を狭めながらキョロキョロと周りを見回して
他に歩行者がいないのを確認すると
その窓へ飛びついた。
「オツカレ、」
「ただいまっ!くふふっ!」
おれは軽く唇を触れさせて
また周りを確認して
車道側に回って
助手席へと乗り込んだ。
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