(イヤだ!)
反射的に腕を引いて一瞬身構えた。
「オイ!今相葉くん嫌がっただろ!
離せよ、」
ほんの一瞬、
だったのに。
見逃さず翔ちゃんが間に入ってくれて
来てくれただけで十分嬉しかったのに
翔ちゃんが次から次へとドラマか映画のヒーローみたいに
「雅紀は昔からオレに懐いてんだから!嫌がる訳ねーだろうがよ!」
そう言い切るMさんに
僕が無意識に考えの外に追いやった感情を言い当てる。
「雅紀(コイツ)はこんな事されてもまだアンタを信じようとしてンだよ!
今まで世話になったアンタを疑うなんて雅紀(コイツ)にはできねェんだって!」
僕だって
本当はそうじゃないかもしれないって
僕は騙されてるのかもしれないって
心の隅っこで気付いてた。
でも
やっぱり今までのことを考えると
悪く思うのは失礼じゃないかって
「雅紀(コイツ)の優しさに付け込むような真似しやがって
雅紀(マサキ)がいいって言ったって俺が許さねェからな!」
「しょぉちゃん!」
嬉しかった。
僕のキモチ、分かってくれたことが嬉しかった。
僕が言えない分、
代わりに言ってくれたことが嬉しかった。
『俺が許さない』
そう言ってくれて本当に嬉しかった。
「ッハ!なんだよちょっと揶揄(からか)っただけじゃねーかよ!」
ドクン、
Mさんの、黒い部分。
信じてた、優しい笑顔が過(よぎ)るのに
今僕の前にいるMさんは別人のようで。
僕にはどうしようもない悲しいキモチが溢れてしまう。
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