P•A•R•A•D•O•X #5 | 山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

ある時は嵐情報。またある時は櫻葉妄想小説。自由に生きております。
腐寄りにつきノーマルアラシックさまは速やかにご退出くださいませ。

これまでのお話
Chained Moons #1  #2  #3  #4



Moon#5





・・・ところが湯を張りに行ってから、いつまで経っても雅紀が戻って来ない。



「風呂入れるって・・・ なんだよついでにシャワーかよ?」



その割には何の音もしない浴室の方へと様子を見に行ってみると、洗面所の前で雅紀が蹲(うずくま)っていた。



「!!・・・雅紀っ?!」
 
 
 
慌てて駆け寄ると、雅紀はぐったりとして固く目を閉じていた。



「雅紀っ!どーしたんだよっ!おいっ!大丈夫か?!」


「・・・しょ・・・ちゃ・・・」



目を閉じたまま、抱き寄せた俺に身体を任せて聞き取れないほどの小さな声で呟く。



「んぅ・・・気持ち・・・わる・・・」



咄嗟にさっき雅紀が一気に飲み干した小瓶を思い出して、死ぬほど後悔した。



「雅紀、吐け!さっき飲んだやつのせいだろ、早く出さないと!」



両脇に腕を入れ、支えて立たせようとすると雅紀は僅かに首を振る。
 
 

「・・・動け・・・なぃ・・・目ぇ回ってて・・・チカラ・・・入んな・・・」



ハァハァと肩で浅い呼吸をして、よく見ると、額にはじっとりと汗が滲んでいた。


{FBB6CEC9-6A5F-4B5F-AF29-171660D5F881:01}



「待ってろ、今 救急車呼ぶから!」



そう言って立ち上がろうとした俺の服の端を弱々しく掴んで、雅紀はまた僅かに首を振ってみせた。



「・・・だめ・・・それ・・・ぜったいだめぇ・・・だいじょぉ・・・から・・・」



ほんの一瞬だけ、目を開けて俺を見上げる。



「だって・・・!!」


「も・・ちょっと・・・休ん、・・・だいじょ・・・から・・・ね・・・?」



弱々しく笑顔を作って見せると、そのまま気を失うように腕の中へと崩れ落ちて来た。



「雅紀・・・?雅紀!」



どうしたらいいのか、途方に暮れる。

あぁ、俺は何て事してしまったんだろう。

今、どうするべきかも分からず、ただただ、腕の中の雅紀を見つめるしかなかった。

とにかく、楽になるよう横にさせて・・・スウェットの腰紐を緩めて、飲めそうなら飲ませられるよう水を用意して。



「クッソ・・・!」



人生でこれほどまでに自分の軽率さを悔んだことはなかった。