Moon#4
「・・・で?しょぉちゃんはさ、これを飲んで欲しいワケ?」
妙に真剣な顔をしてこちらを覗き込む姿に、言葉を返せなくなる。
「べっ、別に俺は・・・」
「・・・いーよ?飲んだげるっ。」
言うが早いか雅紀は瓶の蓋を開けると
何のためらいもなく一口で中味を飲み干してしまった。
「うわっ、バカっ!お前何して・・・!!」
これだから、天真爛漫は怖い。
中味のわからないモノ、疑いもせず一気飲みって。
しかもこのタイミング?
「んん? ・・・別に味も匂いもなんもないよ?・・・しょぉちゃん、こんなのただのスイだよ、スイ。」
「味の問題じゃないだろ!?お前、成分もよく分かんないのに全部飲んでどーすんだよ!何かあったらどーすんだよっ!!」
今さらながら包装されていた箱の中を慌てて探り始めた俺を、
「どぉせ全部英語とかなんでしょ?
んなの読んだって、わっかんないよ?
もぉ~心配性だねぇ、しょぉちゃんは・・・」
「だってもし、お前に何かあったら・・・!!」
「だぁいじょうぶだって! ・・・あるとしたらさ、しょぉちゃんが楽しくなるコトなんでしょ?」
そう言って雅紀はくふふっと笑ってみせる。
「・・・なんか、嬉しかったから。
・・・しょぉちゃんがちゃんと話してくれて。」
「え・・・?」
「だってこんなスイ、味も匂いもないし、
内緒でご飯にかけてもさ、わっかんないじゃん?」
「・・・何でご飯にかけんだよ?
ってか、そもそもスイじゃねーし・・・」
「いぃのっ! ・・・とにかくね、しょぉちゃんが喜んでくれるなら、何でもいぃのっ♪ 」
そこまで言って立ち上がると、雅紀は
「んじゃ、お風呂入れてくるね」
と、浴室の方へ向かった。
・・・と思ったらすぐに小走りに戻って来て、
「ね、ね、今日一緒に入っちゃう?くふふふっ!」
と、飛びつくように後ろから抱きついてきた。
「バ、バーカっ!・・・お前、急に何言い出すんだよっ!」
軽い笑い声を立てつつまた浴室へと戻って行く雅紀を見ながら、
これも媚薬の効果なんだろうかと・・・ふとそんな考えが頭をよぎっていた。
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