Moon#3
「・・・どぉしたの、それ?」
いつの間にか目を覚ました雅紀が
こちらを見上げている。
「ん・・・ さっきの友達からお土産でもらったんだけどさ。」
「しょぉちゃんのコト、『しょう』って呼んでたヒトでしょ~?」
と言って口を尖らせる。
くっそ、かわいいぜ。
「雅紀も呼び捨てにしていいのに。」
と言うと
「べっつにぃ~。いいもぉん・・・」
と言って転がってきて俺の太腿に頭を乗せる。
「・・・香水・・・とか?」
俺は手の中にある小瓶を見ながら
本当の事を言うべきかどうか、
「いや香水じゃなくて・・・その・・・何ていうか・・・
クスリっていうか・・・」
「くすりっ!?」
歯切れの悪い答え方をした俺に何かを察知したのか、雅紀が飛び起きた。
「・・・しょぉちゃん、もしかしてもしかしてそれってさぁ・・・
なんかヤラしい系のやつ?」
「ん・・・まぁ・・・そんな・・・とこ・・・かも・・・?」
えぇ~っと声を上げながら
雅紀が「どっち?どっち?」と自分の顔と俺の顔を交互に指差している。
その指を捉えて雅紀の顔の方へと向けてやると一層声のボリュームが上がった。
「 えぇ~っ、マジでぇぇ? おれなのぉ~っ?
・・・それを、どうすんのっ?
・・・ってか、どーなんのっ??」
「それがよく分かんなくてさ・・・
『これ、彼女に飲んでもらうと楽しいよ♪』って、それだけ言われたんだけど。」
「へぇ~、飲めばいんだ?
・・・でもさっ、しょぉちゃん、おれって、『カノジョ』
雅紀の真剣な表情に、笑いをこらえる。
そういえば友人にも、雅紀との事は話していなかった。
「・・・この場合は少なくとも、俺の方ではないだろ?」
その言葉に「そっかぁ」とあっさり納得して
雅紀は俺の手から小瓶を取り上げ、しげしげと眺め始めた。
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