『どうする・・・?こんな風に・・・迫られたら・・・』
ハァァァァ、何やってんだ、俺。
アイバくんが去った岩風呂で1人大きくため息をつく。
でもさ。
脱衣所であんなマジマジとカラダ見られたり
冗談で腰に触れた時の態度・・・とかさ
つい、揶揄(からか)いたくなンのは仕方なくね?
『どうする・・・?こんな風に・・・迫られたら・・・』
ブクブクブク・・・
目の際まで湯の中に潜る。
至近距離で感じたアイバくんの息遣い・・・
もうちょっと押したら・・・イけそうだったかな・・・
イヤイヤイヤ!!
何考えてんの、俺ッ!!
ダメでしょ。
オトコでしょ。
ブクブクブク・・・
頭も全部潜って、息のギリギリまで我慢する。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、
外音が遮断され、水中で自分の鼓動だけが耳のすぐ内側で響く。
ザバアッ!!
突然、水中から力強く引き揚げられる。
何?!何だ?!
「ショウくん?!大丈夫?!ねぇっ!ショウくんっ!!」
「・・・アイバくん?」
「はっ・・・!!アレ?大・・・丈夫・・・?」
目の前に、泣きそうになってるアイバくんの顔。
「アイバくん・・・?」
「よ・・・よかっ、ビックリし・・・、おぼれたのかと・・・」
え?泣く?泣く?!
「ゴメン、驚かせて。」
「よぉい、ドンッ!!」
バシャン!
えッ?!
なに?どういう事?!
ザバッ!
「ちょ、ホラ、ショウくんも!」
「お?おう?!」
「ハイ、吸って!!」
スゥー?
「吐いてぇ!!」
ハァー??
「吸って!ハイッ、ゴー!!」
バシャンッ!ブクブク・・・
ワケ分かんないまま、アイバくんにつられて風呂の中。
大の大人が二人で息止めて競争なんてさ。
・・・さっきのアイバくんの顔・・・泣きそうになってたな・・・
競争なんて、涙、誤魔化したのかな・・・
あんな風に心配されるって、悪くないな・・・
息の苦しい胸に愛おしさを含んだ嬉しさが込み上げた。
初めての感情でよく分からないけど、・・・俺はアイバくんを大切だと思い始めてる。
多分おそらく、ただの友達以上に。