ドキドキしてるのが自分の音じゃないって、思わず翔ちゃんを見上げる。
「・・・しょぉ・・・ちゃ・・・?」
翔ちゃんの目が薄く開いて・・・
「・・・雅・・・紀」
その低めの声でおれの名前を呼ぶ。
ヤバイよ翔ちゃん、なんだよズルいよ
そんなやさしい声で おれの名前を呼ばないで
そんな誘うような目で おれのことを見つめないで
おれ 勘違いしちゃうよ
目を逸らすことができないでいるおれに
翔ちゃんの唇が
頭に
そして温かい手に前髪を上げられて
おでこに
キス・・・
「ぇっ・・・!」
驚いて力が入る。
なに? なんで?
翔ちゃんにはドレスを着せてあげたい人が
カノジョ ガ
いるんじゃないの?
おれが・・・ホイホイくっついてくるから
反応見て 楽しんでるの?
オトコだし、傷つかないとでも思ってる?
だからそんなふうにするの?
ちがう・・・
おれが悪いんだ・・・
ちゃんと、やめてって言えないから・・・
ショウチャン ハ ワルク ナイ
中途半端に受け入れて 隙を見せてるおれが悪いんだ・・・
でも 拒めない
コバメル ハズ ガ ナイ
拒んだら・・・二度と・・・触れることができなくなるかもしれない
大好きな翔ちゃんが たとえ気まぐれでも おれに触れてくれるなら
一度だけ・・・ 一度だけでも
その想い出を胸に持ってたら
おれはこの先 生きていけるのかな
温かい水が、右の目から顎に伝っていた。
→【11】