『一緒に食べる人とか、いるんじゃないの?』
けっこう勇気を出して言ったのに、翔ちゃんはハハハハッって笑い飛ばして『いねぇし』とか言いながら勝手にCDを入れ替えてノリノリに膝を叩いたりして・・・。
結局いつものスーパーで割引シールのついた惣菜と乾きもの、それから野菜スティック用にいくつか野菜も買って、翔ちゃんちのキッチンに立ってるおれ。
「明日早くないなら泊まってけば?雅紀も飲んじゃえよ。」
シャワーから出てきた翔ちゃんに冷蔵庫を開けながら話しかけられて、一瞬返事に困ってると、
「ハイ。ビールも雅紀に飲んで欲しいって。あぁ~、もしかして身構えてる?」
なんて言うからカァッて顔が熱くなる。
「ちがっ・・・!」
「大丈夫だよ。なんにもしないから。な、泊まってけって。」
「な・・・なんもしないってなんだよ!当たり前だろ!バカじゃないの?しょぉちゃんっ!!」
「ハハハハハ!」
そうだ、いつもみたいに全部笑い飛ばせばいいんだ。
笑って、笑って、何とも思ってないように。
おれの思い過ごしだったように、宣言通り、翔ちゃんは特に変なことをしてくる様子もなく、ハワイの話とかアルバムの話とか色々楽しく話をして食べて飲んで・・・ソファーに横になって寝ちゃってる。
とりあえずブランケットを掛けてあげて、テーブルの上を片付ける。
グラスとお皿は食洗機に入れて、食べ残したものはラップをして冷蔵庫へ。
エプロンを外してソファーに近づく。
「しょぉちゃん・・・しょぉちゃん、起きて?ね、ベッド行こ?こんなとこで寝たら風邪引いちゃうよ?」
「んん・・。 ・・・。」
「ちょ、しょぉちゃん?ねぇ、ベッド・・・あ、歯も磨かないと。」
「んぅ・・・雅紀ぃ・・・」
えっ? えっ?
ど、どうしよう。翔ちゃんの両腕にがっつり首をホールドされてソファーに跪いた状態から動けないんですけど!
「えーっと、サクライさん?起きてくださ~い!放してくださ~い!」
顔が翔ちゃんの胸に押し付けられて視界の悪い中、とりあえず自由な両手でペチペチと軽く叩いてみる。
心臓が、ドキドキしちゃう。
アレ?待って?
このドキドキって、おれの音じゃない。
→【9】