これまでのお話
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[同日金曜日 21:00 Side.S]
「わ、わ、雅紀!ダメだ、ちょ、鍵開けて?」
「おっけ~しょぉちゃん!まかしといて!」
両手に鞄とスーパーの袋を提げた俺は、玄関のドアを雅紀に開けてもらう。
雅紀の肩越しに何気なくその手元を見ていたら、不慣れな手つきでキーケースの鍵を取り出してるのに気付いた。
あれ・・・雅紀、鍵3つも付いてたかな・・・?
チラと見えた「それ」は自転車の鍵にしては大きいし、車の鍵とは形状が違う。
不確かな違和感を感じながら家の中に入った。
「どする?先、シャワー浴びちゃう?」
キッチンから雅紀が声を掛けてきた。
「あぁ・・・、そうだな。・・・雅紀、一緒に入る?」
「ん~、とりあえずしょぉちゃん先入っちゃってて?おれコッチやってから・・・終わったら行くよ・・・あっでも遅くなっちゃったら悪いから待ってないで出て来ちゃっていいからね?」
「ふ~ん。そっか。分かった。でも、メシ、適当でいいからさ。」
「ん。後で温めるだけでいいようにお皿に移しておくだけだから。」
喜んで来るかと思ってたのに・・・、
湯船に浸からない男のバスタイムはあっという間で、結局洗い終わるまで雅紀が現れることはなかった。
ガシガシとタオルで頭を拭きながらリビングに向かうとちょうど雅紀がエプロンを外したところだった。
「・・・お先に。」
「あ~、間に合わなかったか!くふふっ!じゃぁさ、しょぉちゃん先飲んでて?ハイ!」
無邪気に笑うと冷蔵庫から冷えたグラスと缶ビールを一本手渡された。
「おれも急いで行って来まぁす!」
テレビを点けてソファーにもたれ ローテーブルにビールを置くと、無造作に置かれた雅紀のキーケースが目に入った。
チラ、と廊下の向こうのバスルームの様子を伺うとドア越しにくぐもったシャワーの水の音。
カチャリ・・・
キーケースを手に取ると中を見る。
ヘッドの丸い、小さな穴の開いたタイプの鍵・・・コレはうちの。
ヘッドがクラウン型の幾何学模様のような線の入った鍵・・・コレは雅紀んちの。
もう一つのコレ・・・今更実家でもないだろ。じゃあ何の・・・どこの・・・?
見慣れない、玄関のものらしい鍵を右手でいじりながら左手でグラスを傾け、熱いシャワーとスッキリしない気持ちのせいで渇いた喉に一気に流し込む。
「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ・・・ッハァ~ッ・・」
呼吸を取り戻すように深くため息をつくと、気持ちを吹っ切るようにカシャンと鍵を置いてキッチンへ行き、冷蔵庫から丁寧に盛り付けられた刺身と冷製惣菜の皿を両手に持って運ぶ。
取り皿と箸を手にキッチンを出たところで雅紀が風呂場の方からペタペタと歩いてきた。
... to be continued
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