これまでのお話
[8月XX日金曜日 8:00 Side.S]
あぁ・・・金曜か・・・
支度の邪魔をする重い気持ちを奮い立たせようと深呼吸する。
あの夜、雅紀からメールをもらったけど何て返すか考え込んで何度か書き直すうちに時間が経ってしまい、
『お疲れ。また金曜に。おやすみ 翔』
そんな素っ気ない返信しかできずにお互い忙しくあっという間に金曜になってしまった。
そのあとも雅紀からは毎日、朝の挨拶と、おやすみの挨拶と共にその日のざっくりとした報告メールが届いていたが・・・それ以上の内容は来ていないし、そうである以上あの日の事を突っ込んで聞き出そうとするのはスマートじゃないって、冷静な俺がブレーキを掛けて、当たり障りのない返信をするだけで、気になっていることを聞けずにいた。
なにより、・・・そんな想いを抱いてしまう自分が、嫌だった。
「・・・っしゃ!」
胸のモヤモヤを吹き飛ばすように気合を入れて玄関から勢いよく一歩を踏み出す。
[同日 10:00 Side.A]
「はよーっす」
スタジオの前室で にの のDSを覗き込んでたら翔ちゃんが来た!
「おはよう、しょぉちゃん❤」
3日ぶりの翔ちゃんが嬉しくて そばに寄ろうと上半身を浮かしたのに、つれない翔ちゃんの反応。
「・・・あぁ、はよ。」
眉間にシワ寄ってますけど!
笑ってくれなかったんですけど!
つうか、目ぇ、逸らされちゃいましたけど!?
ドクン、ドクン、ドクン・・・
ナニ・・・?翔ちゃん・・・
おれ何かしちゃった?
そう言えば、ここんとこメールも素っ気なかったような・・・
翔ちゃん忙しいからなんだ って思ってたんだけど・・・違った?
おれなんか忘れてる約束あったっけ・・・??
ドクン、ドクン、ドクン・・・
ちょ、鎮まれ、おれの心臓!
ザワつく胸を押さえながらさりげなく にの のそばを離れて、メールチェックするフリで翔ちゃんにメッセージを飛ばす。
『おはよう 翔ちゃん。ずっと会いに行けてなくてごめんね。今日、終わったら行ってもいい?』
楽屋の端の壁にもたれて座った翔ちゃんが、広げた新聞をそのままに携帯を手に取って見てる。
返事・・・なんて来るかな・・・
「おはよーっす。あ、翔さん、おはよう。」
あぁっ、なんだよマツジュン。いいタイミングで!!ほらぁ、翔ちゃん携帯しまっちゃったじゃんっ!なんだよぉ~っ、もぉっ!
気を揉むおれをよそに、バカジュン、じゃない、マツジュンが、こっちに来た。
...to be continued
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