政府も労働組合の連合も最低賃金1,500円をどのように達成したらいいか迷っています。

 

最低賃金1500円 | 全国生協労働組合連合会(生協労連) (cwu.jp)

 

まず、デフレの原因が過度の円高と言われています。

しかし、飲食業などで円高による材料費の値下がり効果は確かにありましたが、

この業界では最低賃金で雇用するケースがあり、小泉政権以外の政府は

最低賃金を定期的に上げてきているので、賃金上昇圧力は常にありました。

 

 

本来ならば、円高による材料の値下がりを従業員や株主などに還元したり、

将来の円安に対しての内部留保とするべきでありましたが、

実際には過度な価格競争を行ってきた結果、労働分配率が低い低成長業界となっていきました。

 

為替は将来どのように動くのか不確実(リスク)な要因であり、本業の商品の価格に反映させるのは、

本来するべきではなかったことは間違いありません。

 

日本の時給が上がらないのを政府の責任のように言われますが、人件費を決めるのは最終的には

経営者の判断であり最低時給で決るものではありません。

 

ただ、経営者がすべて悪いのではなく、株主に対する説明責任において法令に従った判断は、

株主代表訴訟などのリスクもないので、コンプライアンス(法令順守)の基準は仕方がないのかも知れません。

 

私は埼玉県に住んでいますので、埼玉県川越市の飲食店関係の募集広告の時給ですが、

 

丸亀製麺やCOCO壱は1,150円と最低時給を100円以上上回っています。

 

やよい軒、サイゼリヤ、スターバックスは1,100円で50円以上上回ります。

 

給食センターや介護施設、並びに日本で最大級の飲食店であるマクドナルドは

なんと最低時給(1,028円)に近い1,030円で募集しています。

 

給食センターなどの市の管理下に実質的に置かれているところは別として、

マクドナルドは民間企業なのでこれでは求人獲得競争に出遅れてしまうので、

ブランド力育成に重大なリスクを背負うことになります。

 

アメリカでは、特にロサンゼルス市などは時給が3,000円とも言われているマクドナルド

ですが、そのためビッグマックセットが2,700円になったとも言われています。

 

 

日本では、ビッグマックセットが750円で単品が450円(60%)なので、

ビッグマック単品がアメリカでは1,500円くらいだということになります。

 

 

日本マクドナルド自体もコロナ禍の影響も受けず価格転嫁にも成功したため、

2023年の上半期営業利益が過去最高となっています。

 

スパゲティのサイゼリアなどが時給を上げているなかでの最高益更新は

経営モラル的にはいかがなものなのでしょうか。

 

従業員が働いている以上に賃金が低いとモラルハザードを起こし

ブランド力にも悪影響をおよぼす可能性があるからです。

 

以下の表はビッグマックの値段と為替相場、最低時給、それに関する指標などを

まとめてみました。

ビックマック価格 円ドル為替 価格/為替(A) 埼玉県最低時給 価格/時給(B) (A)×(B)  社長
1971 200 300 66.7% 132 1.52 1.01  藤田
1973 250 300 83.3% 132 1.89 1.58  藤田
1974 280 300 93.3% 132 2.12 1.98  藤田
1989 280 137 204.4% 503 0.56 1.14  藤田
1990 380 144 263.9% 527 0.72 1.90  藤田
1995 280 94 297.9% 625 0.45 1.33  藤田
2001 280 107 261.7% 677 0.41 1.08  藤田
2003 199 115 173.0% 678 0.29 0.51  八木
2006 280 116 241.4% 702 0.40 0.96  原田
2018 390 110 354.5% 898 0.43 1.54 カサノバ
2022 410 131 313.0% 987 0.42 1.30  日色
2023 450 150 300.0% 1028 0.44 1.31  日色
2024 500 150 333.3% 1100 0.45 1.52  
2024 500 150 333.3% 1200 0.42 1.39  
2024 500 150 333.3% 1300 0.38 1.28  
2024 500 150 333.3% 1400 0.36 1.19  
2024 500 150 333.3% 1500 0.33 1.11  
2024 450 150 300.0% 1100 0.41 1.23  
2024 450 150 300.0% 1200 0.38 1.13  
2024 450 150 300.0% 1300 0.35 1.04  
2024 450 150 300.0% 1400 0.32 0.96  
2024 450 150 300.0% 1500 0.30 0.90  
2024 550 150 366.7% 1500 0.37 1.34  
アメリカ 1500 150 1000.0% 3000 0.50 5.00  
日本 770 150 513.3% 3000 0.26 1.32  

 
             

注)1971年から1971年は最低賃金がなく1日最低労働賃金1055円を8時間で割った暫定値です。

 

まず、この表で言えることは、為替と最低賃金と価格によるレシオが、1を割り込むと経営危機になり、

その都度単価を引き上げて業績を回復させています。

 

その意味でマクドナルドは2003年のビックマック価格を199円に引き下げた戦略は、

レシオを0.51という最悪な水準にしてしまいました。

 

その後、「マックからマック」にと言われた原田泳幸元社長ですが、彼のレシオも0.96と

1を割り込み数字的にはうまく行ったみたいに言われますが、

ブランド力のアップには貢献できませんでした。

 

そして、アメリカから来たカサノバ氏ですが、一気にレシオを1.54まで引き上げました。

地味ですが、日本マクドナルドの救世主と言っても過言のない存在です。

 

その後、日色社長は最高益を出し続けていますが、レシオ的には1.31と

なっていて、これは為替の円安のデメリットを従業員にしわ寄せしているとしか

言わざるを得ません。

 

このままでと従業員のモラルハザードと来年4月の求人難で、

企業ブランドを棄損しかねない状態となっています。

 

SNSなどで従業員が、おでんを直接食べたなどの動画がでましたが、

これは業務と賃金の差によるモラルハザードであり、

従業員のみを責めることは中立的ではないとも言えます。

 

では、時給1,500円にするにはビッグマックをいくらにすれば良いのでしょうか?

販売量が同じ(一定)とするならば、550円にすればレシオを1.34と現在のまま

維持できることになります。

 

このレシオは労働生産性を表すことになり、アメリカは時給3,000円を出すためには、

価格は1,500円となりレシオは5.0となり生産効率は低いことになります。

 

日本では時給3,000円にするための価格は770円でレシオは1.34の現在と

同じ数値になります。

 

日本のビッグマックが安く提供されているのは、日本の国力が弱まっているのではなく、

生産効率が高すぎる割に適正な賃金が出されていないことが労働生産性の低さの原因となっているのです。

 

これはあくまでも私見でありますが、政府や日銀が労働分配率などの

データをきめ細かく公開すれば、消費者は納得して価格転嫁に応じるのでは

ないのでしょうか。