
ちょっと前に、
映画好きというか映画好事家の間で、
ブームになって
「按摩と女」という映画が
草薙剛主演でリメイクされた、
清水宏監督
ちょっとした
きっかけで、
見る機会を持った
僕のような、
頑固で、
観るものも、
食べるものも、
帰る道筋も
決まりきった生活に
基本的に
不満のない人間にとって
この
まったく
予期もしなかった
機会というのは
大切だ
まったく知らないわけではない
ただ
怠惰で見ていない作品を観るというのは
本当に貴重だ。
さて、
その清水宏監督の
「ありがたうさん」だ
この映画、
本当に、クールである
ウエットなところがない
ウエットにすれば、
いくらでもできる話だ
貧乏がゆえに売られていく娘
なにか事情があって、やさぐれた女
柔和な笑顔、しかし自分の過去ははとんど話さない運転手
過酷な道路工事に従事させられている朝鮮人の女性
この映画、
ひとりも役名がない
売られていく娘
その母親
髭の紳士
黒襟の女
唯一、
呼ばれるのが
運転手の有りがたうさん・・だ。
なにかを思い出す
そう
僕のブログを昔から読んでくれているひとなら
たびたび
例に出すあの映画
「ザ・ドライバー」
この有りがたうさんも
ドライバーだ
そして
徹底的にクールなのも同じだ
一見すると
上原謙の演じるドライバーは
とても親切だ
伝言から買い物まで
笑顔で引き受け
さらに
顔見知りにはきっちり声をかける
安全運転で、
歩行者優先
通るときは「ありがとう」と声をかける
しかし
彼が、
それぞれの他人の事情に深くかかわろうとはしない
完全なるただの傍観者だ
しかし
それはあたりまえのことだ
彼は
ただのバスの運転手だ
当時
二枚目として大人気だった上原謙
同じように二枚目だったザ・ドライバーのライアンオニール。
重なる部分は多い
しかし
国が違う
さらに、時代も思い切り違う
それなのに
この清水監督のクールさはどうだ
なるほど
好事家が夢中になるわけだ
しかし
いまも昔も
日本の映画、ドラマの主流はウエット
「あっしにはかかわりのねえ、話だ」といいながら
かかわってしまう木枯らし門次郎だ
その点、
笑顔で、やさしくて
なんでも言うことを聞いてくれる
でも
深くはかかわらない
過去も明かさない
未来も語らない
このクールの極みの上原謙を描いたこの映画
いまの時代ですら
評価するひとは少ないだろう
きっと
いま、
この映画みても
痺れるひとは少ないだろう
早すぎた
まだこの清水監督の時代は来ていない。
ただ
とりあえず
素敵なことに
ただで、観られる。
あなたは
この映画のクールさに痺れることができるか?
http://youtu.be/3fK3kVs4eJs
「有りがたうさん」全編動画