自分の映画に間抜けな役で
出ているのを
そして
彼の作品群を
観ると
巨匠に観られたくはない
偉そうに監督様に観られたくはない
間違っても風格など持ちたくない・・と
思っているのだろう
恐らく
タランティ―ノは
でも
実は
タランティ―ノは
とても
風格がある
巧みで
冷静で
そして
意外に常識人ではないかと思ったりする
この映画はもうマカロニウエスタンに
憧れて撮ったことは
明らかで
もしかしたら
この映画を観る予定の人は
いかにも
タランティ―ノが
趣味で凝り固まった
バリバリのマカロニウエスタンを
撮ったと思っているかもしれない
確かに
『続・荒野の用心棒』というよりは
マカロニウエスタンを代表する名前
ジャンゴをタイトルにして
フランコネロをお呼びして
最高の粋を見せたり
素敵な残酷描写をご披露いただいたり
好き者を喜ばせる要素はある
しかし、しかしだ
諸君
この映画、
そんな単純なものではない
タランティ―ノは、
奴隷制度を描こうとした
それはアメリカ映画が今までやらなかったこと
しかし
それをまともにやったのでは
娯楽にはならない
と、いうより
そんな普通の映画はタランティ―ノ興味の外
彼の頭の中には
自分が興味があるテーマをジャンル娯楽映画に消化するには
どうしたらいいのか・・しか考えていない
その魂こそが彼の素敵なところであり
スピルバーグとは違うところだ
まあ
スピルバーグもジャンル映画の達人であるけど
やっぱり
ホロコーストとか奴隷制度みたいな世界は
普通の映画になっちゃう
あくまでも
タランティ―ノはジャンル映画の中で描く
この映画はとても良質なバディームービーになってる
ほんと
アカデミーを取ったクリストフ・ヴァルツ 演じるドクター・キング・シュルツが
死ぬほど魅力的だ
飄々としていながら
その心底には熱き、確固としたものが流れる男
マカロニウエスタン的には
リーバン・クリ-フのイメージか
とにかく
前半のこの二人の道行がほんとに久しぶりな良質、
バディームービー
つまりは
脚本がほんとによくできている。
残酷さもユーモア―も嫌味なくわざとらしくなく
物語に溶け込んでいる。
これはもうテクニックのある人にしかできない
タランティ―ノが
風格がある
巧みで
冷静であると書いたのは
この
マカロニウエスタンというジャンル映画の中で
奴隷制度という難しいテーマを見事に消化させる腕
奴隷制度の非道さ、残酷さを
マカロニウエスタンの表現方法を活用するという
頭の良さ
さらには
マニアしかわからない小ネタを散りばめる
ラブ・ストーリーまである
要するに
至れり尽くせり映画