
この映画評は
押井守の「攻殻機動隊」の評でも
厳密に言えば
TVシリーズアニメの評でも
原作漫画の評でも
ありません。
じゃなにかといえば
この攻殻機動隊のTVシリーズを
元に
未来の物語ならね
物語の未来を語ってみたい・・と。
だから
映画やTVシリーズを
全然見てなくても
読めます、わかります。
西暦2030年。情報ネットワークが進展し、
犯罪が複雑化の一途を遂げる社会情勢の中、犯罪の芽を捜し出し、
これを除去する攻性の組織が設立された。
公安9課、通称「攻殻機動隊」。
完全義体のサイボーグ、草薙素子(くさなぎもとこ)を筆頭に、
彼らは自らの信ずる正義を成していく-。
(公式ホームページより)
もし
我々が
地球外生物とコンタクトした場合、
まったく
地球にはない概念、価値観、感情で
理解しなくてはならない。
地球でのすべての概念など意味はなく
概念という概念すらないのは当たり前である。
しかし
SFという物語の中で、
地球外生物とのコンタクトを描くとしても
その言語は地球上のものであり
感情は人間のそれである。
いきなり
難しげなことを書いたが
要するに
なんで
宇宙人が英語しゃべってんだよ
なんで
宇宙人が人間の女が好みなんだよ。
元々
なんで愛するという概念が
一緒なんだよ・・というわけです。
こういう無間地獄のような
それを言っちゃおしまいじゃんの問答をしたのは
「惑星ソラリス」の原作者、 スタニスワフ・レム。
これは
SFという物語の
あまりにも無限の可能性が広がりを
表現した概念でもあります。
昔から
本当に昔から
SFの中では
携帯電話は存在したわけです。
携帯電話とは言わなくても
小型通信機・・という表現で
あの白黒アニメ「宇宙少年ソラン」の中でも
腕時計型の通信機が出てきます。
ただ
それはいかにも未来にありそうなもの・・として
出てきたのであって
いつかは
出るんじゃねえ・・って感じで
みんなの中では認識されていたのであって
これが
国民のほとんどが小型通信機を持つ・・という
表現が、
もし
昔、SFの中で表現されれば
これは
完全に未来を予見したことになる。
しかし
これだけでは
物語ではなく
そこから
個人が携帯する通信機が
災害のときに
遮断されてパニックになって・・ていうところまで
表現してこそ
物語になるんです。
つまりは
未来おいて
必然的に発達するテクノロジーによって
表出する世界観をちゃんと認識することによって
未来の物語は表現できる。
この攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXというTVアニメシリーズは
電脳社会においての
犯罪を描くことによって
その社会によって初めて表現できる
人間の存在の真実が描かれる。
冒頭に書いたレムの概念。
宇宙外生物のまったく
いままでの人間既知外の世界観が
描かれています。
義体化
本作世界におけるサイボーグ技術。
義手、義足、人工臓器の概念を全身に拡張、
草薙のように、脳と基幹神経系だけを残して
ほぼ全身を人工物に置換することさえも可能(完全義体化)とされる。
生身の人間を越える運動能力を持つサイボーグは
「戦闘サイボーグ」と呼ばれており、
専用ソフトウェアによる格闘・射撃などの能力強化も行われている。
そのため負傷や障害が無い健康体にも関わらず、
そうした特殊能力を求めて義体化を行う者も多い。
この義体化、つまり
サイボーグ化という概念だけで
十二分に
独特な世界観が
描くことが出来る。
サイボーグも
さっきの携帯のように
昔のドラマの中でも
頻繁に出てきたものだが
これが
電脳化や
ハッカーという具体的な
実際世界とリンクしてくると
より迫力が増す。
要するに
物語というのは
昔、現代を繋ぐことによって
観えてくる世界を
よりリアルに切実に
描くことによって
新しくなっていく。
攻殻機動隊という物語は
外装は
特捜ものだが
その内装を
現代から続く未来にすることによって
まったく新しい人間観すら作り出している。
そこにいるのは
頭の古く固い人間
青少年による猟奇的な犯罪の原因を
すべてゲームとネット社会のせいにしたがる
震災発生時に
通常の番組を流していたすばらしきTV東京に
抗議の電話をした600人の信じがたいばかやろうたちには
まるで
宇宙人に観えるであろう義体化された人間たちの
息遣いや悲しみや愛や憎しみがあり
それは
紛れもなく
物語の未来をも指し示している・・と思う。